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【漫画原作】背徳のモーパイ 第一話

【あらすじ】
「盲牌(モーパイ)」とは通常、親指の腹でマージャン牌の図柄の凹凸をなぞり、その感触だけで何の牌か識別することである。
この物語の主人公である花隈主水(はなくま もんど)は、ある日、その芸当をなぜか指ではなく〝背中〟でできるようになってしまった――。



セミの鳴く真夏日。ボロアパートの一室。
三人の青年が立ちあがり、

A「また勝っちまって悪ぃなァ、モンド」

と言い残すと、玄関をでていく。
一人取り残されたのは、花隈主水(はなくま もんど)という名の青年。
麻雀卓を持ちあげて、

モンド「くそったれ、また負けた――ッ! うわっ」

モンドは卓の重みにふらついて、仰向けに倒れる。少し涙を浮かべて、

モンド「うっ……なんでやねん……なんもウマくいかん……」

上半身裸のモンドの背中の下に、牌が散らばっている。

モンド M(痛ッ……これはさっきのおれの手牌か……🀊🀋🀚🀜🀞🀟🀟🀠🀠🀠🀡🀡🀅🀅……こっから🀋を切ったばっかりに、下家のマンズ一色を助けてもうて……)

モンドはハッとして起きあがる。背中を手でさすってみる。

モンド M(……? なんや、いまの感覚は――?)

七瀬(ななせ)「うわっ、また麻雀してたの? グチャグチャじゃん」

と女の子がモンドの部屋にあがってくる。
モンドは急いで体を起こし、

モンド「七瀬か! よぉ来てくれたなァ!」

とデレデレする。肌を露出した服装の七瀬を、モンドは舐めるように見ながら、

モンド M(ホンマ、いつ見てもエエ女や……麻雀で勝ち組になって、こんな娘がおれの彼女になってくれたら、人生文句なしなんやが……)

七瀬「なによ、その顔。ていうか服ぐらい着なさいよね」

といいながら、鞄からノートを取りだし、

七瀬「これ、ゼミのノート。このままだったら卒業できないよ」

モンド「いっつもすまんなァ……おおきに!」

七瀬「あのね、これで最後だから。次からはちゃんと授業にでること! それに麻雀、いつも負けてるんでしょ」

モンド「……ほっとけ」

と不貞腐れて寝転がり、床にうつ伏せになる。七瀬はため息をつき、

七瀬「ホント男って、こんなゲームばっかりして、なにが面白いんだか」

と床に散乱した牌を一つ拾って、眺める。
すると、指から牌がつるんと滑った。それがモンドの背中の上に落ちる。

七瀬「あっ、ごめんね!」

モンド「な、七瀬……もしかして、その牌って、🀀ちゃうか?」

七瀬「トン?(牌をつまみあげて)……トウ? ヒガシって書いてるけど」

モンドはガバッと起きあがる。
散らばった牌を一ヶ所にかき集める。さらに牌をすべて表向きにしていく。

七瀬「……一人で麻雀はじめる気? なにいっても無駄みたいね」

と呆れ顔で帰ろうとする。ちらっとモンドのほうを振りかえる。
モンドは立ちあがり、牌のかたまりに向かって仰向けにダイブしていた。

七瀬「(驚いて)きゃあっ!」

着地と同時にモンドの背中に、百三十六枚の麻雀牌がくっつく。
モンドの脳内に、麻雀牌の渦巻く宇宙がひろがる。

モンド「ふ、ふはッ! ふははは! わ、わかってまう……自分が怖ぇ……」

七瀬「な、なにが?」

モンド「おれは、背中でモーパイできるようになったで――ッ!」

七瀬「……?? モーパイ?」

モンドは牌の上をゴロゴロと転がったり、牌を体のあらゆる場所に宛がってみる。

モンド「背中だけしか、わからんようやな……。指でやる普通のモーパイも苦手やのに、背中やったら、なんでもわかってまう……」

七瀬が少し引き気味で、ひとり言をいっているモンドの様子を眺めている。

モンド「うーん。せやけど、こんなことできても、勝つにはまったく役に立たへんぞ……」

そのとき、モンドの脳裏に電流が走る。突然、押入れのなかを漁りだす。

モンド「(何かを発見して)あった……!!」

七瀬「あ、あのさ、モンド。あたし、もう帰るね」

モンド「待たんかい! ええ作戦を思いついたんや! 七瀬にも手伝ってもらわなあかん! このあと男と約束があったとしても、帰さへんで!」

七瀬「……フン。そんな人がいたら、こんなとこに来ないわよ。で、何を手伝うの――」

ナレーション
『ちなみに盲牌(モーパイ)とは、通常、親指の腹で牌の図柄の凹凸をなぞり、その感触だけで何の牌か識別することである。彼、花隈主水は、その芸当をなぜか背中でできるようになってしまったのだ――』


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