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ヒューマンドラマ小説|サンクチュアリが見えたら(2)|サンクチュアリへようこそ

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 田舎の古民家シェアハウス『サンクチュアリ』。
 住人は老若男女6人と猫が一匹。

 住人の一人、雨宮あめみや茉莉花まりかは40代シングルマザー。小学生の男の子が一人いる。茉莉花は、ある日サンクチュアリへの帰宅途中で男性と揉めていた50代の元モデルの女性、夏見なつみゆかりをサンクチュアリに誘う。

 茉莉花もまた、そうしてサンクチュアリに迎えられた一人だった——

 茉莉花をサンクチュアリに誘った野路菊のじぎくさくらは、過去に不倫経験のある70代女性。その他、神野じんの宗四郎そうしろうは30代の同性愛者の男性、木南きなみはるかはお金のない現役大学生。

 仕事、恋愛、家族——

 これは、それぞれがそれぞれに、生き方に悩みながらも、少しずつその答えを見つけていく物語。

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サンクチュアリへようこそ


「もし、良かったらですけど、うちに来ませんか?」
「え?」
「ああ。あの、うちと言っても、正確にはシェアハウスなんですけど。ちょうどもう一人、入居者募集中みたいで。あ、でも、そんな急には無理ですよね。仕事もあるし」
「いえ、まあ仕事はほとんどフリーランスみたいなものだし、何とでもなるんだけど」
「本当ですか? それなら、是非。今、入居者が男性2人と高齢の女性が一人で、同じくらいの年代の女性の話し相手が欲しいなって思ってたんです」
「私でいいの?」
「はい。ここで会ったのも、きっと何かの縁ですし。とりあえず、これからシェアハウスの見学に来ませんか?」

 茉莉花は、そう言って花のように微笑んだ。40歳にしてはツヤのある、茉莉花の黒い髪が風にふわりと揺れる。

「お言葉に甘えてしまっていいのかしら」
「遠慮なく甘えてください。大家さんと、入居者のみんなに連絡しますね」

 茉莉花はそう言って、さっさと関係各所に連絡をした。今からすぐに見学が出来る手筈が整う。

「さて、と」と茉莉花が言った。

「とりあえず、バスに乗りますね。早速行きましょう」
「ありがとう。宜しくお願いします」

 妙な出会いから始まった2人の歩み。
 今、その足はバス停へ向けられていた。



 
 錆びたバス停の看板。色褪せたベンチ——
 
 茉莉花と紫はバスを降り、田舎道を歩いた。

 なだらかに隆起する低い丘の上、広葉樹の雑木林を抜ける。

『古民家シェアハウス サンクチュアリ』

 その看板は、坂を少しだけ上ったところにあった。

 青空は抜けるように高く広く、だけれど手を伸ばせば届きそうな錯覚を覚えそうに色濃かった。香りそうな爽やかな風が肌をくすぐり、少し余韻を残して去っていく。足元に広がる名もない緑の草たちまでもが、どこか懐かしく、そして見たことのない鮮やかさで胸に迫ってきた。はたはたと揺れる沢山の洗濯物が、魚の鱗のように夏の日差しをひるがえす。

「素敵なところね」

 フェリーの船着場での騒動も忘れ、紫はしんと静かな気持ちでそこにいた。汗で濡れた髪の気持ち悪さも、吹き飛びそうな景色。

「そうでしょう? 私も最初見た時そう思いました。というか、今も毎日思ってます」

 そう言って、茉莉花はどこか照れくさそうに笑う。
 
「お母さん!」

 茉莉花の姿を見つけて、茉莉花の息子である雨宮あめみやようが声を上げた。小学1年生の葉にとっては、茉莉花が買い物に出ている1時間ほどの時間も、ひときわ長く感じられるのだろう。まるで長く旅して、やっと母を見つけたように駆け寄る。

 葉の「お母さん、おかえり!」の言葉に、「ただいま」と茉莉花が返す。

「あれ?」と葉が言う。

「このお姉さん、お客さん?」

 葉が見ているのは、茉莉花の後ろに立つ紫の姿だ。茶色い巻き毛と大判の花柄のワンピースが風に揺れる。

「そうなの。サンクチュアリの見学に」
「やったあ! 新しい入居者さんだね! サンクチュアリへようこそ!」

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【1195文字(あらすじ、その他除く本文のみ)】

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