ヒューマンドラマ×グルメ小説|タバスコが辛くなくて困る(5)|山芋キムチと鶏ハツ
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【あらすじ】
ライターの東海林町子は40歳独身女。花より団子の食道楽。
大学からの友人、芙由美とまどかと3人で、独身を脱却するぞと宣誓するが、実は一人がまあまあ楽しかったりする。
立ち飲み屋で楽しむビールと焼き茄子、激安スーパーで買った鶏ハツでスパークリングワイン——
最高過ぎて、結局今日も一人飲み——?
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山芋キムチと鶏ハツ
週末の夕方。窓から見える空は青いが、差し込む光は僅かに柔らかくなり、部屋を仄かに黄色く染めた。締め切り前で出来なかった家事を済ませ、浴室の掃除ついでにお風呂まで済ませてしまったら、町子がすることといえば、一つしかない。
町子はキッチンに立ち、スパークリングワイン片手に、昨日買った山芋を大きめの角切りにすると、ジッパー袋に市販のキムチの素を注いだ。チューブのみじん切りのニンニクを少し足し、軽く揉んで冷蔵庫に放り込む。あとは30分から1時間も浸せば、即席の山芋キムチが出来上がる。
待っている間にもう一品。玉ねぎをスライスして塩揉みし、そのまましばらく置いて、軽く油をひいたフライパンで焼いた鶏ハツと、水分を絞ったオニオンスライスと合わせる。某輸入食料品店で人気の、レモン風味のそうめんつゆをドバドバと投入すれば、これまた即席の鶏ハツのマリネが完成だ。
キッチンに立ったまま、テレビでYouTubeを見て、買っておいたサーモンの刺身を食べる。一緒に口にするのがスパークリングワインというのも、家飲みだからこその自由さ。この好きなものをごちゃ混ぜにした感じが楽しい。
脂の乗ったサーモンの甘味と、レモンの風味の効いた鶏ハツのマリネ。ねっとりとしたサーモンの肉感と、鶏ハツのコリコリとした食感の違いもまた一興。
オニオンスライスの他に、もうちょっと野菜が欲しいなと思っているところで、漬かり方はだいぶ浅いが、冷蔵庫から山芋キムチを取り出す。お気に入りの器に盛れば立派に一品だ。キムチ専門店で買う山芋キムチには味の複雑さという点で敵わないが、このサクサクとした食感は、やはり山芋ならでは。ニンニクが効いたキムチと、口の中をさっぱりさせるマリネとスパークリングワインの組み合わせで、箸の進みはエンドレス。
好きなものばかりの欲張りメニューを食す時間。なんて優雅なんだろうと思いながら、町子は暮れていく窓の外を見た。
そういえば、焼肉屋の店主、大和からLINEが来ていた気がする、と思い、町子はベッドの上に放りっぱなしのスマホを手に取る。大和からのLINEの文面には、《夏祭りに一緒に行きませんか》とあった。
夏祭りなんていつぶりだろう——
どうせなら芙由美とまどかも誘ったほうが賑やかで楽しい気がして、大和には芙由美とまどかを誘っていいかと返答する。大和からはすぐに連絡が返ってきた。
《賑やかでいいですね。みんなで行きましょう!》とのこと。
早速、芙由美とまどかを祭りに誘う。返事を待ちながら、せっかく久しぶりに夏祭りに行くのだから、浴衣でも買おうかと通販サイトを開いた。最近は安くて可愛い浴衣が沢山ある。町子はすぐに、白地にブルーの紫陽花柄の浴衣にピンときて、それを購入した。先日購入したシー陶器の金継ぎピアスにも合いそうだと思う。浴衣はちょうど夏のセールで安くなっていて、町子は物凄く満足して、サイトを閉じた。
引き続き、即席ばかりの酒のつまみとスパークリングワインの献立を楽しむ。そのうちに、芙由美とまどかから連絡があり、4人で夏祭りに出かける計画が出来上がった。
そういえば、大和はどうして私を夏祭りに誘ったんだろう——
町子の今更過ぎるそんな疑問は、スパークリングワインの泡と共に消えていく。
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