資産運用で築く「豊かな将来」 〜FP技能士が贈る未来へのヒント2〜 2/20
2/20 資産運用って?
――現在。
麻緒は出版社で編集者として働いていた。学生時代から好きだった文学作品に触れられるどころか全身にまみれて、忙しい毎日を過ごしていた。
「あ、先生から原稿来てないな……催促しないと」
スマートフォンを掴んですぐにコール。だが出ない。
「あの人、〆切間近になると、スマホの電源切っちゃうんだよなぁ……」
麻緒は独りごちて、自分のデスクに座り直した。毎日毎日慌ただしくて、息をつく暇もない。そんな毎日だった。
「麻緒先輩、ちょっと企画見て欲しいんですけど……いいですか?」
隣の席の後輩、押本が声をかけてきた。白い襟付きシャツにスリムジーンズ、眼鏡をかけて一本に束ねた黒髪で、地味な印象を受ける。だが文学への情熱が強く、編集部では着実に成果を積み上げていた。
「うん、いいよ。どれ?」
「資産運用のムックを企画してるんですけど、ちょっと見て欲しくて……」
「うえぇ」
麻緒は絞り出すような声を出してから、それを受け取って、目を通す。
「お金がない、おまけに男もいない。そんな私にこれを読ませるかねぇ」
麻緒の自虐的な冗談に、押本は失笑する。
(……資産運用はなぜ必要か、人生100年時代の到来……)
『資産運用』。聞いたことはあるけど、何それ、美味しいの? 私にはまったく馴染みがない言葉だった。
「……ごめん、あまり力になれそうにない。私の専門外だ」
「ありがとうございます。でも、知らない人にも資産運用の大切さが伝わる内容にしたいから、企画を考え直してみます。本当にありがとうございました」
麻緒が差し出す書類を受け取ってから、押本は丁寧に頭を下げて、自分のデスクに戻っていく。麻緒はその背中を見送った。
(……資産運用かぁ)
麻緒は少し考え込んでしまう。今年で31歳になるが、貯金らしい貯金はない。自分が受け取れる年金の額なんて、もちろん分からない。
参考:30代の貯金額の平均・中央値は?必要なお金と資産形成の方法(三菱UFJ信託銀行)
(そういえば、老後の問題とか、年金とか……どうなるんだ?)
……給料が特別高いわけではなく、かといってなにか浪費しているわけでもない。
ただ、お酒にはお金がかかっている。
(……いや、浪費してるじゃん)
そんなことを考えていると、麻緒はなんだか落ち込んでしまった。デスクに上半身を乗せて倒れ込むと、大きなため息を吐く。
「……うん、気分転換に飲みに行こう」
まったくなんの解決にもなっていないと麻緒は思いながらも、スマートフォンでメッセージアプリを立ち上げる。そこに香緒里の名前を見つけると、『今日時間ある? 飲みに行こうよ』とメッセージを投げた。
『麻緒先輩、いいですよ! 私もそんな気分で。新しい職場の話聞いて欲しいですし、先輩もなにかあったんですね?』
こういう察しの良いところが、嬉しい時がある。
それから麻緒は仕事の区切りが良いタイミングを見て、会社を飛び出した。
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また次の作品でお会いできることを楽しみにしております。
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