資産運用で築く「豊かな将来」 〜FP技能士が贈る未来へのヒント2〜 12/20
12/20 どんな商品があるの? 〜5つのカテゴリ〜
前回までのあらすじ
目標が明確になったところで、資金の割り振り方と運用の基本概念に進む。資金の分類、リスクとリターン、分散投資について学んだ香緒里と麻緒は、いよいよ金融商品について学び始めた。
「まず最初に、この表を見てみよう」

「あれ? 意外と種類少ないですね?」
「うん、今回は初心者向けだからね。実際には、海外株式や不動産投資、FXに暗号通貨、金、さらには貯蓄型保険などたくさんの金融商品があるんだけど、リスクが高くなるものはあえて省いている。資産運用を数年続けて、慣れてきたら調べてみて欲しい」
元永が見せるパソコンの画面に、2人は頷いていた。
「本当に、リスクとリターンって正比例するんですね……」
麻緒は画面を見ながら、素直な気持ちを口にした。
「そうだね。さて、この5種類を整理しようか」
預貯金:金融機関に預けて利子を得る
債券:国・自治体・企業などに資金を貸し付けて利子を得る
外貨預金:日本円以外の外貨で行う預金
投資信託:運用会社を通じて様々な投資対象に分散して投資を行う
株式投資:企業が発行する株式を購入して、配当や売却益を得る
1.預貯金
「預貯金って資産運用に入るんですね」
麻緒が画面を見つめながら、素朴な疑問を口にした。
「そうなんだよ。安定性という意味では、非常に堅実な資産運用に入る。なにせ、入金した金額が減ることがない。これを『元本保証』と言う。年率0.5パーセント未満だけど利子が入る。おまけに、金融機関が破綻しても元金1,000万円と利子が保証される。結論、ほぼ絶対減らないと言っていい」
「なるほど……リスクが低いぶん、リターンも低いということですね。分かりやすい」
「香緒里ちゃんの言うとおり。僕たちはお金を預けているだけのつもりだけど、知らないうちに資産運用を行っている。そういうことなんだよ」
2.債券
「あまり聞き慣れないけど……『債券』ってなんですか?」
麻緒が言うと、元永は頷いてから、続けた。
「国・自治体・企業が、資金が必要な時に発行するものを『債券』と呼ぶ。メリットは2つあって、返済期日(満期償還日)まで所有し続ければ、購入金額と同じ金額で買い取ってくれる。限定的ではあるけど、これも『元本保証』になる。また、保有期間は利息を受け取れる。持っていて償還日を待つだけ、というところが初心者でも取り組みやすい運用だと言っていいだろうね」
「取り組みやすいので、リターンも控えめ……ということですね?」
「香緒里ちゃんの言う通り。債券は、発行元が破綻しない限りは価値が崩れない。元金保証 + 利子という点では、預貯金よりは少しリスクが上がって、リターンも上がるイメージ。注意点としては、満期償還日前でも売却することができるんだけど、その際は元金が保証されない。損失が出る場合もあるから、その点は注意しておいてね」
「へぇ……」
麻緒が納得したように頷いて、メモに書き込み始めた。
参考:債券とは?(岡三証券)
3.外貨預金
「次は、『外貨預金』。これは預貯金を海外の口座で行うということだね。メリットとしては、日本より金利が高い国があり、多くの利子を受け取れる可能性がある。デメリットとしては、為替相場の影響を受けるので、タイミングが悪いと目減りする場合がある」
「なるほど……じゃあ円高の時に預けて、円安の時に引き出せば、利益が出せるんだ?」
「うん、麻緒さんの言う通りだよ。ただ、預貯金や債券と違って、『元本割れ』が発生することには注意が必要だ。為替相場の影響を受けるから、買った時に1万円だったものが、ずっと1万円とは限らない、ってこと」
麻緒は眉をしかめながら、メモを書き続けていた。
「外貨預金と一口に言っても、色々な種類がある。興味があれば、調べてみて欲しい」
参考:わかると差が出る「外貨預金の特徴」(三井住友銀行マネービバ)
4.投資信託
「あ、これ知ってます。『投資信託』ってなんかテレビで見たたことあります」
「ほんとだ。私もなんかで見た」
香緒里と麻緒が言うのに、元永は微笑む。
「そうだね。最近は資産運用の情報が結構出ているから、よく話題になる金融商品だね。簡単に言うと、『資金を集めて、専門家が投資や運用を行ってくれる』ものだ」
「え、じゃあ、投資信託だけで資産運用は大丈夫じゃないですか」
麻緒がぽかんとした顔で、素直な意見を言う。確かに、プロが運用してくれるなら、安心感が高い。
「うん、麻緒さんが言う通り、それがメリットのひとつ。僕たち運用の素人がどれだけ頑張っても、プロにはまず勝てない。だからプロにお任せしちゃおう、というのは自然な発想だよね。かつ、色々な金融商品に分散して投資してくれる。けれど、逆を言えば個人で制御できる余地が小さく、注意点がいくつかある」
「あ、そうか。なにに投資するかとか、自分では決められないもんね」
元永は麻緒の言葉に頷いてから、スライドのページをめくる。
「そう。まずは『なにに投資しているか』を確認する必要がある」
「例えば、AIブームの時にAIに投資する投資信託を保有していたら、大きな利益が得られたという話ですよね?」
香緒里がそう言うのに元永は微笑んで、続けた。
「香緒里ちゃんの言う通り。いまから購入しようと考えている投資信託が、自分の望んでいる投資先かどうかを検討する必要がある。ざっくりと分けると、投資信託は2つの方向性があって、特定の指数に連動するように運用する『インデックスファンド』と、それを上回る利益を狙う『アクティブファンド』。まずはそれで分けてみよう」
「指数に連動する……って、どういう意味ですか?」
麻緒が首を傾げながら言うと、元永は微笑みながら答える。
「ニュースとかで聞いたことあるかもしれないけど、『日経平均株価』とか『ニューヨークダウ』とか、聞いたことないかな?」
「えっ、ある! なんかニュースでやってた!」
麻緒が驚いて腰を浮かせると、元永は笑っている。
「そうそう。『日経平均株価』というのは、日本経済新聞社が東京証券取引所プライム市場に上場した銘柄から選定した、225銘柄から構成される平均株価なんだよね。極端な話なんだけど、その225銘柄の全ての株式に同じ金額を投資していたら、日経平均株価と同じ数字になるはず。でも、そんなこと個人じゃできないよね」
「なるほど! じゃあ、そういう指数に連動することを目的に投資するのが、『インデックスファンド』なんだ」
「そうそう。麻緒さんの言う通り。インデックスファンドじゃないものは『アクティブファンド』と思ってもらえたらいまは大丈夫。『アクティブファンド』は初心者には薦めにくい商品もあるから、ここでは省略するね」
参考:インデックスファンドとアクティブファンドの違いは?初心者はどちらが始めやすい?(三菱UFJ銀行)
「次に注意した方が良いのが、『手数料』。資産を運用してもらうのだから、そのお礼を支払う必要がある。購入時、保有期間、解約時。全てに手数料がかかることがあるので注意して欲しい。『ノーロード』と呼ばれる購入手数料がかからない商品も増えているから、参考にしてもらえるといいと思う」
「そうか、配当が大きくても手数料が高ければ、プラスにならないですもんね」
「麻緒さんの言う通り。投資信託では定期的に受け取れるお金のことを『分配金』と呼ぶんだけど、分配金を出さずに再投資して投資信託そのものの値段である『基準価格』を上げ続けるものもある。どちらにせよ、手数料より大きく成長する投資信託を選びたいところだよね」
参考:投資信託の手数料とは?種類や手数料が安い投資信託の見分け方を解説(三井住友銀行マネービバ)
麻緒が大きく頷いて、メモを書き進めた。
「あと最後に、『分配金』についても補足しておこう。投資信託の分配金は2種類ある。運用で利益が出た分を受け取れるのが『普通分配金』、元本を切り崩すのが『元本払戻金』。前者は利益を受け取るもの。後者は基準価格を下げて元本を切り崩すもの。どっちがもらって嬉しいかな?」
「え……そりゃ、利益を受け取る方が嬉しいじゃないですか!」
麻緒が驚きながら腰を浮かして言うのに、元永と香緒里が笑っている。
「そうだよね。まとめると、『配当はないけど基準価格を上げ続けているファンド』か、『定期的に安定した普通分配金をくれるファンド』を選ぶようにしたいよね」
参考:投資信託の分配金とは?仕組み・受け取り方・注意点を基礎から解説
5.株式投資
「さて、最後に株式投資について触れよう。資産運用や投資と言われると、『株式投資』を思い浮かべる人は多いんじゃないかな」
「はい……来たな、って感じてます……」
元永の言葉に、香緒里はプレッシャーを感じているのを表情に出して、なんとも言えない顔をしていた。
「香緒里ちゃんの言う通り、ここからは結構重い話になる。それなりのリスクを背負ってそれに見合うリターンを得るという話になるから、それは覚悟しておいて欲しい」
元永の言葉に、2人は息を呑んだ。
「そもそも株ってなんだろうという話なんだけど、簡単に言うと『企業が資金調達などのために発行する』という意味合いがある。例えば資金を投入して事業の拡大をしたいとか、設備投資をしたいとか、そういった目的がある。だから株式を広く公開できる上場を目指して資金を調達して、事業を拡大するんだよ」
「なるほど……株主総会とかやるやつですね?」
「麻緒さん詳しいね。株主総会は話すと長いから軽く流すけど、株式会社という制度では資金を出すのが株主で、株をたくさん持っている人は発言力が強い。その資本を活用して利益を出すのが取締役や社長。そのすり合わせをするのが株式総会と思ってもらえたら、大丈夫だと思う」
元永は言って、コーヒーを一口飲む。
「なるべく簡潔に話すようにするけど、いままで話した内容とそれほど変わらない。元本が保証されなくて、価値が上下して、配当が発生する場合もあるもの。ただ、そのボラティリティは投資信託より激しい」
「あ……先程話にあった、分散投資がされていないから、ですか?」
「香緒里ちゃん正解。多くの投資先に分散していると、平均化されるのでボラティリティは小さくなる。株式の場合は自分で意識して分散しないと、危険な状態になる可能性がある。つまり、『卵は一つのカゴに盛るな』の原則に反することになるね。間違っても1社に全財産を投入することはしない方が良い。だから、自分でルールを作ったりして資産を配分しなければいけない。これって、初心者にはとても難しいことだよね」
「そう考えると大変そうだけど、もうちょっとカジュアルにしたいところですね……」
麻緒が言うのに香緒里も頷く。元永は少し考えるような素振りを見せてから、続けた。
「そうだね。一番分かりやすいのは、『好きな企業を応援する』というスタイルかな。好きなファッションブランドやよく行く飲食店など、いつもサービスを利用している企業の株を持つ。そうすれば、身近に感じられたり、応援しているという実感もあるし、株主優待を得られたりもするから」
「あ、そうか……私が株を買うことで企業は資本を得て、サービスが良くなる。そういう流れに参加する、と言われたら分かりやすいかも」
麻緒が深く頷きながら言う。彼女の中では普段利用するカフェやファッションブランドを思い浮かべていた。
「ちゃんと株式で利益を出すとなると話は変わるんだけど、これから株式投資を始めようという人には、それくらいカジュアルな姿勢でいいと思う。資産運用を始めるにあたって、敷居を高くする意味はない。それより、『まず株式投資というものに触れて、実感してもらう』ことを優先して欲しいと思うんだ」
「それぐらいの気持ちで、いいんですか? やっぱり資産を運用するからには、儲けないとって思っちゃいます」
麻緒が言うのに元永は頷く。
「うん、それはもちろん。損はしちゃいけない。でも、株式投資を知らない状態では利益を出せないよね。だからまず始めよう、ぐらいの気持ちでいいと思う」
元永が微笑んで言うのに、麻緒と香緒里は深く頷いていた。
「さて……ちょっと話が長くなっちゃったかな? みんな、お腹すかない?」
元永の言葉に、麻緒は大きく息を吐いて、香緒里は露骨に嬉しそうな顔をする。
「じゃあ元永先輩、いつもの『出会いの食堂』……ですね?」
香緒里が嬉しそうな顔で言うのに、元永は深く頷いた。
参考:株式投資のはじめ方(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
参考:はじめての株式投資(初心者向け)(SMBC日興証券)
注記
この物語は筆者の想像に基づいたフィクションであり、登場する人物、団体、および物語上の設定はすべて架空のものです。作中に登場する名称は物語を彩るための舞台装置として用いており、現実の出来事や人物とは関係がありません。
免責事項
・資産運用には元本割れなどのリスクが伴います。投資判断はご自身の判断と責任で行ってください。
・本記事は、執筆時点において公開されている情報をもとに構成したものであり、その正確性や有用性について、一切の保証をするものではありません。
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また次の作品でお会いできることを楽しみにしております。
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