資産運用で築く「豊かな将来」 〜FP技能士が贈る未来へのヒント2〜 5/20
5/20 なぜ資産運用が必要なの?1 〜基本的な考え方〜
前回までのあらすじ
忙しい日々を送る31歳の編集者、麻緒。 ある日、後輩の企画書を通して「資産運用」という言葉と向き合ったとき、麻緒は自分が将来に対して何の準備もしていないという事実に直面する。そして後輩の香緒里の紹介で、元永と話すことになった。
しばらくして、カフェ店内に1人の男性が入ってくる。
丸いフレームの眼鏡に黒髪を短く整えて、青色のポロシャツとグレイのスラックスを身に着けている。それから店内をきょろきょろと見回すのに、香緒里は手を上げて、軽く振った。
「香緒里ちゃん、久しぶり。お待たせしてすみません」
彼は2人の向かい側に座ると、手持ちのビジネスバッグを隣に置く。
「いえいえ、気にしないでください。……その、元永先輩に紹介したいのが、在学中から仲良くしていただいている、片桐 麻緒先輩です」
香緒里の紹介に麻緒は頭を下げてから、名刺を取り出す。元永はそれを両手で丁寧に受け取ってから、自分の名刺を差し出して、口を開いた。
「そうか、香緒里ちゃんの先輩なんだ。編集のお仕事してるんだね。あと、年齢が近いから、ちゃん付けで呼ぶのは失礼かな?」
「あー、ちゃん付け以外だったらなんでも」
「うん。じゃあ、麻緒さん、って呼ばせてもらうね」
元永は名刺入れに麻緒の名刺を入れて、鞄に戻す。それから、ノートパソコンを取り出してテーブルの上に置いた。
「それで今日は、資産運用についての相談だったよね?」
元永は確認するように2人の顔を見て、返事を待つ。先に口を開いたのは麻緒だった。
「そうです。私、彼氏いないわお金もないわで」
彼女が笑ってそう言うのに、香緒里は非常に残念な表情をしていた。元永はそれに笑って、
「あはは。彼氏はともかく、お金のことなら話せるから、安心して」
と、いつもの柔らかい笑顔で言った。
「さて、2人は資産運用って聞くと、どんなことを考えるかな?」
元永の言葉に2人は考え込む素振りを見せると、麻緒が口を開いた。
「まったく分かりません」
「私も……色々なところで騒がれてるのは知ってますけど、いまひとつ自分ごとって気がしません」
その意見に元永は何度か頷いて、
「2人の言う通りだと思う。なんとなく『やらなきゃいけない』という世論の温度感はあるけど、具体的な考え方や手段を学ぶ機会って、意外とないんだよね」
と、パソコンの画面を2人に見せた。
「だから、シンプルにいこう。まず、『なぜ、いま資産運用をするのか』という話をするね」
元永がマウスを操作すると、画面のスライドが切り替わる。
「まず、40年前は別に投資なんて別に必要なかったんだよね。金融機関にお金を預けていれば、年利7パーセントの利子がもらえた時期があったんだ。これは計算上、10年ぐらい預けていると2倍になる」
彼の言葉に、麻緒は露骨に驚いた顔で、「なにもしなくても2倍に……?」と呟いていた。
「そう。だから、昔は『貯蓄』だけで良かったんだ。でも1990年代にバブルが崩壊して、日本は超低金利時代に入る。いま、金融機関の普通預金の利子は、高くても0.5パーセントぐらいじゃないかな」
「かなり減ったんですね……」
「そう、香緒里ちゃんの言う通り。……参考までに、簡単にだいたいの計算をする方法に、『72の法則』というのがある。『72 ÷ 年利』で計算すると、複利効果で元本が2倍になる年数がざっくり分かる。仮に72 ÷ 0.5で計算すると、預けた金額が倍になるのに、何年かかると思う?」
動きの止まっている麻緒をよそに、香緒里は恐る恐る口を開く。
「……144年……?」
「香緒里ちゃん、正解。そんな長い年数、僕らは生きられないよね。だから、貯蓄もいいけど資産運用もした方がいいよね、という考え方を持つ。それは、理解してもらえたかな」
元永の言葉に、異論はないとでも言うように2人は頷いた。
「……でも、死ぬ時にお金持っててもしょうがないですよね?」
麻緒が自然に言うのに、元永は少し喜んだ顔をする。
「麻緒さん、良い視点。その通りなんだよ。でも、いまは色々な問題が積み重なっていて『天寿を全うするまでお金に困らない状態』を作る難易度が上がってしまった、という理由がいくつかある」
元永がパソコンの画面を促すと、平均寿命の推移の表が表示された。
「この60年ほどで、平均寿命はおおよそ20歳ほど伸びている。2025年のデータによると、女性は87.13歳で男性が81.09歳。これは、世界で見てもトップだ」
参考:平均寿命の推移(厚生労働省)
参考:日本人の平均寿命 女性は87.13歳で40年連続1位 男性81.09歳(NHK)
「なるほど、長生きするようになったから、そのぶんお金が必要って話ね。でも、年金制度があるから大丈夫じゃないの?」
「麻緒さん着眼点がいいね、その通り。ただ、ここで別の問題が起こる。日本はいま『高齢化社会』まっしぐらだ。老齢年金制度は、若い現役世代が老齢年金生活者を支えるという制度になっている。けれど……」
「あ、そっか。納付する人と受給する人のバランスが崩れる可能性は否定できない、ってことか……」
麻緒は掌を、ぽん、と打ってから、そう言った。それに香緒里は、驚いた顔で頷いている。
「その通り。少子化問題による現役世代の減少と、高齢者の増加。この2つの理由が、老後の不安を訴える原因となっている」
「確か、老齢年金がもらえないという話も聞いたことがあります……」
香緒里が胸の前で手を握りしめながら、不安そうな声で言った。
免責事項
・資産運用には元本割れなどのリスクが伴います。投資判断はご自身の判断と責任で行ってください。
・本記事は、執筆時点において公開されている情報をもとに構成したものであり、その正確性や有用性について、一切の保証をするものではありません。
・本記事の情報に基づいた行動により、閲覧者がいかなる損害を被った場合でも、当方は一切の責任を負いません。
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また次の作品でお会いできることを楽しみにしております。
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