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第53話|免許|本気で無くした

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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日
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日曜。

前の日、
書類を書く為に免許を使った。

飲みに出る前に、
車に戻したつもりでおった。

朝、
無いことに気づく。

車はもちろん、
カード等置いてある場所も見る。
無い。

家の中も見た。
机の上、棚の中、ポケット。
無い。

飲んだせいか、
記憶が曖昧で、
どこに置いたのか思い出せん。

娘に聞く。

「とっちゃの免許、見てない?」

「見てない」

少し間があって、

「ちょっと、みんなで探してくれ」

強めに頼む。

探す。

出てこん。

昼過ぎ、
一回諦めかける。

警察に連絡して、
上司にも連絡を入れる。

明日は休んで、
再交付か。

そう思っとった。

パピコが聞いてくる。

「お母さんがオーダーメイドしてくれた、
 黒い皮のケースのやつよな?」

「そう、それ。
 免許は最悪再発行できるけど、
 ケースの方が大事なんよ」

ピノが、
止まる。

「これ?」

それはおもちゃ箱から、
出てきた。

「おまえ、ふざけんなよ!」

ピノが固まる。

「いや、ごめん、良かったわ。
 なんでおもちゃ箱なん?」

少しだけ声を落として聞くと、

「床に落ちとったけぇ、
 片付けた」

と返ってくる。

なんも間違っとらん。


スマホを手に取る。

「すいません。
 ありました。」

----とっちゃレコ----

見つかったあと、
少し声を荒げたのは、
あの一日分の焦りが
残っとったからじゃろうと思う。

無くしたと判断した時点で、
もう"無い前提"で動き出しとる。

連絡もして、
段取りも決めて、
頭の中では次に進んどる。

そこに、
急に「ある」が入ってくると、
うまく戻れん。

そのままの流れで、
声も強くなった。

子供の方は、
ただ片付けただけで、
何も間違っとらん。

それでも、
こっちの状態に引っ張られる。

あの頃は、
一呼吸置くのが、
まだ難しかった。

----とっちゃレコ----

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