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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日

葬儀が終わってから、しばらくの間、
ひとりで家におった。

子どもたちは実家に預けたまま。
リビングには祭壇があり、
遺影とお骨が、静かに置かれていた。

2、3日は、
ただ祭壇を眺めて過ごした。

妻を供養しに来てくれる
友人や知人と話している時だけ、
自分がまだ生きとる気が、
少し戻るような、そんな日々じゃった。

何日か休んどったところ、
上司から「もう1か月休め」と言われた。

迷惑をかけとるし申し訳ない、と伝えると、
「お前が何も気にせん形を作るまでは、
 来られても迷惑」
そう言って、笑った。

一瞬で、目頭が熱くなった。

この人は、
自分の性格をよう知っとる。
こうでも言わんと、
無理して出てくると分かっとったんじゃと思う。

その思いやりが、ありがたくて、
泣いて、感謝した。

昔から、涙もろい。

娘たちが家に戻ってきたのは、
葬儀から10日後くらいじゃったと思う。

家の中には、まだ祭壇があって、
妻の写真とお骨が、
その上に置いてあった。

パピコが、それを見て聞いた。
「ここに、お母さんが入っとん?」

「そうよ」と答えると、
「抱っこしてもいい?」と言った。

涙をこらえて、「ええよ」と返した。

パピコもピノも、
お骨を持ち上げることはせず、
そこに置いたまま、
抱きしめるようにして、泣いとった。

この光景には、
ほんまに、泣かされた。

そして同時に、
「絶対、楽しい人生にしてやろう」
そう思った。

パピコは、まだ5歳じゃったが、
もう“おねえちゃんの顔”をしとった。

母親の代わりをしようとしとるのが、
伝わってきた。

ピノは2歳。
それまで、
自分に甘えることはほとんどなかったのに、
この日を境に、
妻にしていたように、甘えてくるようになった。

その姿を見て、
腹を決めた。

しっかりとした躾。
楽しい経験。
おいしい食事。

この3つを、大事にしようと。

人に頼らず、
全部、自分でやり切る。

父ちゃんひとりでも、
ちゃんとやっていけるところを、
見せてやろうと。

──そう思っとった。

あの頃は。


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▼次の話
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