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第2話|誰の為よ?|一人で全部抱えとった頃のこと

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第1話|抱っこと決意|シングルファザーとなった最初の日
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自分ひとりで、全部やっちゃる。
そう決めて始まった、新しい生活じゃった。

実際は、
傷ついとる心に嘘をついて、
「子どもの為じゃけぇ」
そう言い聞かせながら、必死になっとっただけなんよな。

今、振り返ると、
このまま続けとったら、
きっと、どこかで壊れとったと思う。

まず直面したのは、相続の手続き。

妻名義の通帳が9冊あった。
用途ごとに細かく分けてあって、
その几帳面さに感心したし、
心の底から、ありがたいとも思った。

でも同時に、
「なんでこんなに作ったんよ……
 わしにゃ、管理できん」
そんな正直な気持ちも湧いてきた。

せめて3つにまとめようと、銀行へ行った。

どの銀行でも、
「相続手続きが必要です」
と、淡々と言われる。

そのたびに、
胸の奥が、ずしっと重くなった。

戸籍や証明書を揃えて、窓口を回り、
家に帰って、また書類を探す。
この繰り返し。

当時は、ChatGPTなんて無かったけぇ、
必要な書類も、手続きの流れも、
全部、自分で聞いて、調べて、動くしかなかった。

バタバタの毎日で、
今ある手記を読み返さんかったら、
ほとんど記憶も、曖昧なままだったと思う。

今でも、
あの頃がいちばん、しんどかった気がしとる。

そこに加えて、子どもたちのこと。

ピノは2歳で、
保育園を探さんといけん。

パピコは、
年中から通っとった幼稚園を、
できれば卒園させてやりたかった。

年長の12月。
あと少しで、
仲のええ友達と一緒に卒園できる時期じゃった。

ここで環境を変えるのは、
どうしても、避けたかった。

どう回したらええんか、
分からん状態が続いた。

そんな時、
たまたま、友人が様子を見に来てくれた。

「どうなん?」と聞かれて、
強がって、
「まあ、何とかやっとるよ」
と答えたけど、
たぶん、全部バレとった。

現状を一通り話したあと、
友人が、あきれた口調で言った。

「預けろや。
 朝は、うちに連れてきてええし、
 帰りは、迎えに行っとくけぇ。」

一瞬、言葉が出んかった。

こっちは、
毎日どう回すかで、頭がいっぱいなのに、
友人は、当たり前みたいに言う。

続けて、こう言われた。

「誰にも頼りたくない気持ちは分かるけど、
 それって、誰の為よ?
 おまえが壊れたら、
 家族ごと壊れるど。」

この一言で、
張っとった気持ちが、全部抜けた。

強がりが見透かされとる恥ずかしさ。
何も言わんでも察してくれた、ありがたさ。
自分が、限界じゃったことへの気づき。

いろんな感情が、一気に押し寄せて、
また、泣いて感謝した。

「1人で全部」から、
「頼れるところは頼る」へ。

そう切り替えてから、
少しだけ、余裕ができた。

保育園探しでも、
今の状況を、そのまま伝えると、
担当の方が、驚くほど親身になってくれて、
家と会社の動線にある園を、紹介してくれた。

園長さんも、
「頑張ってくださいね」
と声をかけてくれて、
それだけで、心が軽くなった。

保険の手続きの時も、
必要以上に、気を配ってもらった気がする。

ほんまに、
いろんな人に、助けてもろうた。

生きていくためには、
人に甘えても、ええんじゃと、
この頃、ようやく思えるようになった。

とはいえ、
意地は、まだ残っとった。

けど、あの日から、少しずつ、
頼ることへの罪悪感は、減っていった。

そして、友人の言葉は、
今も、自分の判断の軸になっとる。

「それって、誰の為よ?」

迷うたびに、
その問いかけが、
わしを、元の場所へ戻してくれとります。

-------とっちゃRECO-------

相続で、
実際に準備せんといけんかったのは、
ざっくり言うと、
こんな感じ。

・戸籍謄本
・除籍謄本
・原戸籍謄本
・銀行ごとの相続届
・印鑑、印鑑証明

これらの書類を揃えて、
記入して、
銀行に提出して、
ようやく、
通帳やカードの返却にこぎつけられた。

書き出すと、
簡単そうに見える。
でも実際は、
「どこにあるん?」から始まる。

1日で終わる作業じゃなかった。

-------とっちゃRECO-------

▼揺れてた頃を読む
第35話|余裕のない日々|誤差にした違和感
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▼次の話
第3話 | タミフルとハンバーグ | 初めての看病での様子

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