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第13話|卒園式と入学式|ちゃんと出来とるんかと思った日

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幼稚園の卒園式。

保護者のほとんどが、
スマホを構えて、写真や動画を撮っとった。

園から許可が出とる以上、
それ自体は仕方のないことなんじゃろうけど、
どこか、情緒がないというか、
少し興が醒める感じもあって、
自分は、撮る気になれんかった。

周りを見渡すと、
みんな、スマホ越しに前を見とる。

それもええけど、
わしは、その日は、
画面に収めるより、
そのまま、目で見ときたい気分じゃった。

式が進んで、
園児が先生から証書を受け取る。

そのあと、
親が前に出て、
子どもから証書をもらう場面があった。

周りを見ると、
ほとんどが、お母さん。

パピコは、
自分に証書を渡したあと、
少しだけ、動きが止まった。

それから、
泣きながら、
ぎゅっと抱きついてきた。

「いつも、ご飯や
 お母さんの仕事、ありがとう。」

……泣くしかない。

人前じゃったけぇ、
必死で我慢したけど、
結局、目は潤んどったと思う。

周りが母親ばかりであることに、
パピコなりに、
気を使ってくれたんかもしれん。

でも、その言葉で、
「足りとるんか、間違っとらんか」
ずっと分からんままじゃった自分が、
一旦、救われたように思えた。

卒園式が終わって、
春休みに入ると、
入学に向けた準備をし始めた。

次は小学生、というのが、
よほど嬉しかったんじゃろう。
パピコは、やたら張り切っとった。

準備する物は、
思っとったより多くて、
やる前から、少し気が滅入った。

算数セットは、
全部に名前シールを貼る。
シールのデザインは、
パピコの好きな、
はらぺこあおむしで作ってやった。

シールが貼れる物はええけど、
貼れん物は、
全部、名前を書いた。

体操服袋、靴袋、絵本袋も、
はらぺこあおむしで、
全部作った。

体操服に、
アイロンで付ける名前も、
どうしても剥がれそうで、
端を折り込んで、
結局、縫い付けた。

今思えば、
そこまでせんでも
よかったんじゃろうけど、
その時は、
そうせんと落ち着かんかった。

準備は、
子どもらと一緒にやった。

「自分のもんなんじゃけぇ、
 関わりなさい」

そう言って、
出来るところは任せた。

パピコは、
名前を書くのを手伝ったり、
袋を広げて持ったり、
一生懸命やっとった。

ピノは、
途中で手伝ったかと思えば、
歌ったり、踊ったり。
自由そのものじゃった。

でも、それも含めて、
準備の時間じゃったと思う。

作業は、
集中すると早いほうじゃけぇ、
ワイワイしとるうちに、
気がついたら、
全部そろっとった。

それから、約一か月後。
今度は、小学校の入学式。

卒園式とは違って、
楽しみの方が勝っとったみたいで、
ルンルンで登校していった。

友達をたくさん作るんだと、
少し誇らしげに話しとった。

その背中を見ながら、
「大丈夫そうじゃな」と、
思った。

こんなふうに笑っとる子が、
まさか、
あんなに人間関係で悩むことになるとは、
この時は、
思いもしとらんかった。

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