第19話 | 七五三 | 長かった1日
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七五三。
行事ごとに疎い自分でも、
この名前だけは、嫁のメモに残っとった。
ちゃんとしたことは、あまり覚えとらん。
でも、
「写真だけは撮っとかんと」
それだけは、頭の片隅にあった。
先に、お参りの予定を入れた。
その前に、二人の髪を切った。
神社には、思ったより着物の人はおらんかった。
二人とも、特に興味がある様子もない。
手を合わせて、
軽く頭を下げて、
帰りに、お面を買った。
それで、もう終わった感じがしとった。
写真撮影は、別の日。
和装と、ドレス。
和装に着替えた瞬間から、
ピノはうるさかった。
痒い。
重い。
歩きにくい。
一方で、
パピコは、驚くほど静かじゃった。
普段は活発なのに、
背筋を伸ばして、
ちゃんと「それっぽく」立っとる。
同じ服。
同じ場所。
でも、出てくる反応は、まるで違う。
撮影は、長引いた。
集中力の切れたピノに時間がかかり、
パピコは、ほぼ一発で決めてくれる。
泣かしたら、長引く。
甘えさせたら、切り替えが効かん。
どっちが正解か、
その場では、わからんかった。
「七五三って、
こんなに消耗する行事じゃったか」
正直、そんなことを思いながら、
ただ時間が過ぎるのを待っとった。
撮影が終わったとき、
正直、ぐったりしとった。
写真は、ちゃんと残った。
見返せば、きっと
「いい写真」なんじゃろう。
でも、
あの日を思い出すとき、
一番浮かぶのは、
待ち時間の長さと、
衣装の違和感と、
場の空気を崩さんようにした、あの感じ。
七五三は、ちゃんとやった。
でも、思っとったのとは、少し違った。
それから、しばらくして。
出来上がった写真を、受け取った。
正直、
ええもんにしてもろうとった。
二人とも、ちゃんと写っとる。
あの日のバタバタも、
不機嫌な時間も、
写真の中には残っとらん。
それを見たとき、
ああ、
あの疲れも、無駄じゃなかったな、と思えた。
記念写真って、
その日の空気までは、残らん。
あとから振り返るために、
都合よく整えてくれるもんなんかもしれん。
-------とっちゃRECO-------
行事は、
「その瞬間」を過ごす側と、
「あとで見る側」で、
価値が入れ替わることがある。
当日は、しんどくても、
あとから見返すことで、
意味がついてくる。
それでも、
その場にいた大人が疲れ切っとる、
という事実まで、
消えるわけじゃない。
が、出来上がった写真で、
全てが吹っ飛ぶ。
アルバムは、
いまだに開いて子供たちと見ることがある。
苦労はするけど、
撮って正解じゃった。
-------とっちゃRECO-------
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