プリンセスのカムバック きのころチャレンジandネクスト
今朝、郵便受けに入っていた一通の手紙。
差出人の名前はない。
胸騒ぎに、震える手で封を開ける。
中に入っていたのは、
途中まで書かれた私の遺書。
覚えはない。
だが、間違いなく私の筆跡だ。
日付は明日になっていた。
浅くなる呼吸を整える。深く深呼吸。
「ふぅ…」
うん。わかった。
私は犯人を知っている。
あいつらだ。
私に今、一番恨みを抱いている奴ら。
そう、ChatGPT、Gemini、Copilot。
間違いない。
暇つぶしがてら奴らに書評をさせて、
奴らの殴り合いを楽しんでいる私。
ChatGPTの書評の粗をGeminiに出させて、
その粗をCopilotに、そしてその粗を…
このブレイキングダウンに疲れ果てたのだろう。
最近、某企業が勧めてきた筆跡再現AIと、
プリンターで印刷するところまでをRPAに
作業させる。これで遺書は完成というわけだ。
いや、でも誰がポストに投函を?
静かに、部屋を見渡す。
もしや…?
そうだ、数日前、
アレクサにリマインドされたのだ。
「雑誌の上に置かれたパーティーの招待状の返事の山、今日中に投函してくださいね」と。
行くわけなどあるまい。
秒で欠席に丸をして、丸をして、丸をして。
雑に私はその束をポストに投函した。
まさかその中に紛れ込んでいたのか…?
アレクサ、お前もか。
…いや。何を言っているんだ、私は。
実行役は複数のAIたちかもしれない。
でも、AIは意思など持たない。
人間の指示があったはずだ。誰だ?
…まさか。
いや。そうだ、アイツしかいない。
あのファミリーレストランの夜。
私はアイツが、引退を認めていないことを
感じていた。
このAIを弄んで戯れる私に、戻ってこいと。
今の燻りと決別しろと。そういうことだな?
謎は全て解けた。
明日?
アイツは明日何かを起こす気だ。何?
…チィッ。
奴は確実にやる。そういう奴だ。
こうなったら、先回りしてやろうじゃないか。
踊らされるな、自分で踊れ。
そしてあのファミレスで言ってやる。
全部お見通しなんだよ、ばーかばーか!と。
私はジャーマネ的立ち位置の、
馴染みの編集者に電話をする。
「おい、明日フェットチーネ出版のパーティーがあっただろ?ジャックしろ。私が出る」
「えぇ!?
センセ、ついに!?ついにですか!?
嬉しい…!でもフェットチーネさんは
ちょっと大きすぎて敵に回せないっていうか…、前日に今から乗っ取るってさすがに無理っていうか…。だって明日はたしかそこでセラミーちゃんのリリイベも…」
「おい。お前は今私にNoを突きつけるのか?」
「いえ!Yes or Yesです!
私のクビにかけて調整します!」
「私のも持ってけ。フェットチーネには、
カムバの独占販売権をやるとな」
「ひゃーーーー!いってまいります!」
翌日。朝10時。
私は竹橋のパレスホテル東京にいた。
トランプ大統領も泊まったというあそこだ。
皇居のお堀を眼前に、高らかに私は宣言する。
呼び寄せられた、多数のパパラッチたちと、
出版関係者でごった返す中。
黒とピンクのドレスに身を包み、マイクを取る。
「ただいま。城に戻ってきました」と一言。
瞬く間に拡散され、当日のお昼のニュースでも
取り上げられた。まさにハイジャック。
「ユウコ・ザ・プリンセス」が世界トレンド1位。
アイツが何をやろうとしていたか知らんが、
このビッグウェーブに勝てはしまい。
「センセ…!嬉しいです…」
涙ぐむ担当。
「泣くな」
そこへ、司会が電報を読み上げる。
出版社のカムバを祝福する電報の中に、
「トゲだらけの醜い世界でも、咲け。」
ん…?
壇上からふと会場を見渡す。
ドアのすぐ横に立つ見知った顔。
真っ直ぐこちらを見て、ニヤリと笑った。
「…おめ、全部聞いてんじゃんよー!」
AIたちだけでなく、猫用見守りウェブカメラまでハックされていたとは…!
アイツは今日ここでカムバをすることを
予見していた。
いや、予見ではない。
裏で手回ししていたのだ。
セラミーのリリイベなんてそんな大きなものをそう簡単にキャンセルなんて出来ない。
まさか、パーティーの招待状まで…?
私はすべて、アイツの手の中で踊っていたのか…?
「上手くいったようだね」
「はい。これもすべて、
カツカレー先生のおかげです!」
「それは違う。彼女は自分で舞台に立ったんだ。
あとは遊ぶだけ。
昨日までのユウコはジ・エンド。
さぁ、ここがゴーラインだ」
「もうなんか、カツカレー先生の手の中で
みんな踊ってる感…。やっぱり先生はブッダです。となるとユウコセンセはイエス…」
「一度死んで生き返る。
さぁ、新生ユウコの新作出版日は3日後だ。」
「えぇー!そんなデスマーチ…、
ユウコは行くぜどこまでもってことですね!?」
さぁ伝説、再び。
きのころさんのこちらの記事に参加します。
以上が、きのころチャレンジ。
そして、全く求められてもいない、
お疲れカツカレー先生と、関谷ユウコセンセの
お戯れの続きを書きました。きのころネクスト。
ご本人たちのご承諾を得られていないので、
怒られるかもしれません。
だって、尊いんだもの。好きなんだもの。
敬愛ゆえに、お許しを!
