強い組織を作る三原則と桃太郎理論 〜オールブラックスとピクサーに学ぶ組織づくり〜
こんにちは。
ourly株式会社のCOO、株式会社ビットエーのCHROを務めている高橋です。
先日、オープン勉強会で「強い組織を作るには」というテーマでお話しました。参加者の皆さんからとても反響をいただいたので、内容をnoteにまとめます。
人事や組織開発に関わる方であれば、「どうすれば組織を強くできるか」「どうすれば良い人材を集められるか」という問いは日常的なテーマだと思います。ただ、組織開発と採用戦略は分断されがちです。今日はこの2つを繋げる視点でお伝えします。
強いチームに共通する「3つの条件」
まず、強いチームには必ず3つの共通点があります。
共通の目標があること
ボスが自己開示できること
心理的安全性が高いこと
この3つは、ニュージーランドのラグビー代表「オールブラックス」(勝率86%)、ピクサー(成功率ほぼ100%なのではないでしょうか…)、アメリカ特殊部隊「チーム6」にも共通して見られる要素です。
一つずつ解説していきます。
原則①:共通目標の設定とセンスメイキング理論
情報の量と質が圧倒的に不足している
多くの組織で、情報の量と質が不足しています。
社長は「社員に伝えられている」と思っています。しかし現場の社員に聞くと「社長が何を考えているか分からない」という声が返ってくる。会社によっては「社長の名前すら知らない」というケースもあります。
なぜこのギャップが生まれるのか。答えは「中間管理職を経由する際の解釈・翻訳の断絶」です。
経営陣が100%の情報を持っていても、理解度30%の管理職を経由すれば現場には20〜10%しか届かない。一方、理解度70%の管理職でも、伝える相手や関係性によって純度は大きく変わります。ミドルマネージャーが目標や目的を言語化して下ろせるかどうかが、組織の力に直結しています。

「センスメイキング理論」とは何か
早稲田ビジネススクールの入山章栄先生が紹介している「センスメイキング理論」は、一言でいうと「腹落ちの理論」です。トップが示す未来・戦略に、組織全体がどれだけ納得感を持って行動できるか。
センスメイキングは、以下の3つのステップで構成されます。
環境の感知:今、自分たちはどういう状況にあるのか
解釈:それはピンチなのか、チャンスなのか
行動:だから、こう動こう
たとえばAIの台頭という現象に対して、「ホワイトカラーが淘汰される」という解釈をするのか、「自社にとってチャンスだ」という解釈をするのかで、社員の行動は180度変わります。この「環境→解釈→行動」を一貫したストーリーで、エネルギーを持って伝えられるかどうかが経営者に問われています。
「行動管理」より「認知マネジメント」が効く
日本の多くの企業はKPIマネジメント、つまり行動管理・感情管理が中心です。しかし研究によると、社員の「認知」をマネジメントするほうが、組織のパフォーマンスは高まりやすいとされています。
ただの事実(インフォメーション)を伝えるのではなく、「それが自分たちにとって何を意味するか」「なぜそれをやるのか」という意味付けのコミュニケーションが重要です。

ソニー・平井一夫氏の事例:「KANDO(感動)」という一言
センスメイキング理論の代表的な事例がソニーの再生です。
平井一夫氏は、エレクトロニクス・金融・エンターテインメントと多岐にわたる事業を抱えるソニーに対し、「すべての事業はKANDO(感動)をお届けするためにある」と定義しました。
そして世界中の拠点を回り、外国人社員にも「KANDO(感動)」という日本語の意味から丁寧に伝え続けた。その結果、ソニーはV字回復を果たし、今やコンテンツ・IPの会社として株式市場から評価されています。
アルプス山脈の遭難と「セルフ・フルフィリング理論」
センスメイキングにおいて特に重要なのは、情報の「正確性ではなく納得性」です。
ハンガリー軍の偵察部隊がアルプスで遭難した際、隊員の一人が見つけた地図を頼りに下山を決断し、全員が生還しました。しかしその地図は、まったく別の山のものでした。
「信じて行動する」こと——これをセルフ・フルフィリング理論と言います。大まかな方向性と意思を持ち、それを信じて突き進むことで、客観的には起こり得ないことを実現する力が人にはあるということです。
原則②:ボスの「自己開示」——弱さを見せられるリーダーが組織を強くする
昭和型から令和型へ
昭和の時代は「目指すべき場所」が明確でした。三種の神器を揃えれば売れる時代。トップダウンで手順を指示すれば機能した。しかし今は、目指すべき場所を自分たちで定義しなければならない時代です。
「これをやりたい。でも、やり方は俺にも分からない」——そう言えるリーダーが組織を強くします。

プロフィールの「解像度」が組織を変える
人間関係が希薄になったコロナ以降、社員同士がお互いのことを知らないまま仕事をしているケースが急増しています。かつては社宅・社内イベント・飲み会でナチュラルに共有されていた個人の価値観やバックボーンが、今は一切共有されていない。
私がourlyのご支援を通じてで強くおすすめしているのが、上席者のプロフィール整備です。
ただし「出身地・大学・趣味」程度の情報では意味がありません。コミュニケーションを生むプロフィールに必要なのは情報の解像度・細かさです。
「読書が好き」では会話は生まれません。「ミステリー小説が好き」と書いてあれば、同じ趣味の人が声をかけられる。高校名・大学の学部名まで書くだけで「同じ高校出身」という共通点が見つかり、仕事の相談がしやすくなることがある。こうした「共通点の可視化」は、実は莫大な機会損失を防いでいます。

モチベーショングラフのシェアで「パワハラ」がなくなる?
リーダーの自己開示として特に効果的なのが、モチベーショングラフのシェアです。
人生のモチベーションがいつ上がり、いつ下がったかを共有する——これだけで、上司の価値観や人生観が可視化されます。
ある上場企業では、管理職がモチベーショングラフをチームで共有したところ、「それまでパワハラと言われていた行為がパワハラと言われなくなった」という事例があります。
「この上司はこういう価値観があるから、こういうフィードバックをするんだ」と部下が理解できるようになったからです。
まず管理職が先に自己開示する——「組織の中で権力を持っているほうが先に開く」というスタンスが、組織全体の相互理解を加速させます。
原則③:心理的安全性——「ぬるま湯」との違い
心理的安全性の正しい定義
心理的安全性という言葉はGoogleが広めましたが、「怒られない・優しい職場」とは根本的に違います。正確な定義は以下の通りです。
対人関係においてリスクのある行動をとっても、このチームでは安全であるという心情が共有されている状態。
心理的安全性を阻害する「4つの不安」
無知だと思われる不安(質問・発言をためらう)
無能だと思われる不安(失敗・ミスを隠す)
邪魔をしていると思われる不安(新しい提案を控える)
ネガティブだと思われる不安(反対意見を言えない)
この4つの不安を取り除くための共通認識・行動指針・コアバリューの整備が、心理的安全性の土台です。
「フロー理論」——最適難易度の業務を与えられているか
スポーツの世界では「ゾーンに入る」と表現される状態——挑戦レベルと能力レベルが高次元で噛み合った状態が「フロー」です。
部員全員に「グラウンド20周」を課すのではなく、一人ひとりの能力に合わせた最適な挑戦を設定する。これは今のスポーツ育成で主流になりつつあるトレンドであり、組織マネジメントにも直接応用できます。

採用戦略:「桃太郎理論」——世の中の「優秀な人」を採っていませんか?
学歴よりもカルチャーフィット
採用において、偏差値や大学の知名度を基準にしている企業はまだ多いです。しかし「世の中で優秀とされる人」が、自社で活躍するとは限らない。
採用の目的は「短期で成果を出す人を集めること」ではなく、「長く続けながら、より大きな目標を達成するための仲間を集めること」です。
そのために必要なのが、カルチャーフィット。内発的動機でワクワク働ける人を採用できるかどうかが、組織の長期的な強さを決めます。
「パーパスマップ」を採用に活用する
カルチャーフィットを見極めるために私がおすすめしているのが、組織の「パーパスマップ」を採用選考に使うことです。
会社は何のために存在しているか
どんな夢を掲げているか
お客さんは誰で、どんな価値をどう提供しているか

この一連のストーリーを見せた時に、心から共感できるかどうかを確認する。
ただし、候補者は合わせに来ます。「なぜ転職を考えているか」を聞いても、採用ページに沿った答えが返ってくるだけです。
私が大切にしているのは、「どんな人生にしたいか」「なぜ今それに興味があるか」「過去とどうつながるか」を対話ベースで深く聞くことです。面接の冒頭で「ここがすり合わないとお互い上手くいかないので、お互いを見極める場にしましょう」と伝える。合わせに来させない構造を意図的に作ることが重要です。
まとめ
最後に、改めて「強い組織を作るための3原則と採用戦略」をまとめます。
「どこを目指すか」と「なぜやるか」を解像度高く伝え続ける(センスメイキング)
リーダーが先に弱さを開示する、モチベーショングラフで価値観を共有する
ぬるま湯ではなく、4つの不安をなくし最適難易度の挑戦を与える
学歴より「カルチャーフィット」。パーパスマップへの共感で採用する
組織開発・採用・社内コミュニケーションについて、もっと詳しく話を聞きたい方はぜひご連絡ください!(Xのアカウントはこちら)
また次回、3月19日(木)は「 停滞する組織をV字回復させる3つのフレームワークと実践」をテーマにオープン勉強会を開催します。 ぜひご興味のある方はこちらのページから申し込みをお願いします
