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幕府が仕掛けた「闇のマネロン規制」とは?江戸の不良債権あぶり出し作戦 #108

「法的な聖域」を得た米切手。しかし、その裏で大名と悪徳商人たちは、さらなる裏技を編み出していました。

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幕府は空米を禁止しましたが、「規制前に発行された、借金のカタとしての名目上の切手(調達切手)」については、過去の経過措置として大目に見ていました。これに目をつけた彼らは、新しい空米切手を「これは規制前の古い調達切手ですよ」と偽り、闇ルートで転売・現金化するマネーロンダリング(資金洗浄)を始めたのです。



偽装された「闇の手形」を狙い撃て

明和4年(1767年)、事態の深刻さに気づいた幕府は、ついにこの「闇の延命措置」に対して網を絞ります。まずは、違反者たちへの見せしめ(御仕置)を実行したことを告げ、市場を威嚇しました。

【引用①:明和4年九月
停止被
仰出候以後は切手主より外江は決而
売買致間鋪候處、心得違致売買
候もの有之不可届ニ付此度御仕置
被仰付候
(禁止令が出た後は、その切手の最初の持ち主以外に転売してはならないルールであるのに、勘違いして売買した不届き者がいたため、このたび厳罰に処した)


『御触書集成』[46],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2550015/1/20 (参照 2026-07-18)


『御触書集成』[46],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2550015/1/21 (参照 2026-07-18)


『御触書集成』[46],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2550015/1/22 (参照 2026-07-18)



不良債権の「市場隔離」コマンド

さらに幕府は、過去のグレーな切手を完全に市場から隔離するため、第三者への転売を徹底的に封じる包囲網を敷きます。もし闇ルートで買った怪しい手形を蔵屋敷に持ち込めば、直ちに逮捕するという強烈な警告でした。

【引用②:明和4年九月】
外江決る賣買不致所持
いたし(中略)
萬一
切手主々無之もの所持いたし、其
切手蔵屋鋪江賣戻候ハば急度可
相咎候
(過去のグレーな切手を持つ者は)他へは一切転売せずに持っていなさい。万が一、元の持ち主でもない者がそれを所持し、蔵屋敷に売り戻し(現金化)に来た場合は、厳重に処罰する)


『御触書集成』[46],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2550015/1/22 (参照 2026-07-18)

過去の不良債権を市場から徹底的に弾き出し、これ以上の延命を許さない――。幕府のこの冷徹な締め付けは、一見正論に見えました。しかし、あまりにも急速に闇の流動性を奪ったことで、限界まで追い詰められた市場の歪みは、最悪の形で爆発することになります。

(第4回へ続く:ついにパニック発生。幕府が放った最終奥義「政府保証」の衝撃)


これまでの記事のまとめです



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