江戸の銀行に“新税”をかけたら大混乱になった話③― 払えない制度が生んだ行き詰まり - 天明二年(1782) - #58
江戸の両替商に、新たな負担が課された。
幕府は、取引の規模に応じて「役銀」を納めさせようとした。
一見すると、合理的な制度に見える。
しかし実際には、
・申告は信用されず
・話し合いはまとまらず
・やがて商売そのものが揺らぎはじめる
史料に残るのは、混乱という言葉ではなく、
小さな「不具合」の積み重ねだった。
このシリーズでは、
江戸の金融市場に何が起きていたのかを、
当時の記録をもとに読み解いていく。
第3回は――
制度そのものが抱えていた、払えない構造を見ていく。
前回の記事はこちら
江戸の両替屋に対して課された「役銀」。
幕府は
👉 金座へ納める負担金
として制度を整えようとした。
しかし——
話し合いは行われたものの、結論は出なかった。
■ 問題の核心に入る
史料には、交渉が行き詰まった理由がはっきり書かれている。
兎角申談之趣行届不申

どう話し合っても、まとまらない
なぜか。
その理由が次の一文に凝縮されている。
■ 「そんな理屈は通らない」
両替之増歩 御免被成下役銀差出候儀ニ候間右
増歩ハ両替屋共銘々多分差出候旨申道理無之
ざっくり言うとこうです。
👉 「増歩(手数料)に制約がある中で、さらに役銀を課すのは道理が立たない」

■ 決定的な一文
可相済様無之処難儀之趣申之
👉 「処理できる見込みがなく、難しい」

■ さらに深刻な問題
ここで終わりではありません。
制度が進まない中で、次の段階に入ります。
■ 「申告」という仕組み
両替高為書出候
👉 取扱高を申告させる方式

しかし——
■ 信用できない申告
虚実之儀難計候
👉 「本当かどうか判断できない」

■ なぜそんなことが起きるのか
さらに踏み込んだ記述があります。
畢竟役銀差出間敷為御内端ニ書出候事
👉 「役銀を減らすために内々に少なく書いている」

■ ここで見える構造
整理するとこうです👇
払えない
だから申告させる
しかし信用できない
実際に過少申告が起きる
👉 制度が現実に適合していない
■ 「不正」なのか?
ここが重要です。
一見すると
👉 不正・ごまかし
しかし実態は
👉 制度が成立していないために起きる行動
■ 幕府の見方
一方で幕府側は
虚実之儀難計候
👉 「信用できない」
👉 不正の疑いとして認識
👉 構造的対立

■ この回のポイント
協議は失敗
制度は成立しない
申告は信用できない
過少申告が発生
👉 制度と現実の断絶
■ 次回予告
この状態が続くとどうなるか?
👉
両替屋は防御的になる
流通が滞る
👉 市場そのものが揺らぎ始める
次回
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