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灯りの下で ~ サウナの夜を見ていた僕 ~

僕はサウナテントの天井から、静かに照らしている。
煙、羽音、ため息、そして“ととのい”の瞬間。
誰も気づかないけれど、確かに見ていた一夜の記録。



僕は、ランタン。
このテントの天井に、ただ静かにぶら下がっている。
昼間は誰もいない。

けれど夜になると、
湯気をまとった人たちがぽつぽつと現れて、
椅子に腰をおろし、深く息を吐く。
その瞬間の表情が、僕はとても好きだ。

今夜もまた、一人のサウナーがやってきた。
タオルを肩にかけ、火照った頬に夜風を受けながら、
ふらりと腰をおろす。
僕はその姿を、やわらかな光で包む。

テントの片隅には、蚊取り線香がいた。
とぐろを巻いた身体の端に、小さな炎を灯し、
白い煙をくゆらせている。
「ここは俺が守る」——そんな気配を漂わせながら。

そして、僕には見えている。
煙の外側。
影の中から、音もなく忍び寄る、小さな敵たちの姿を。
「突撃準備よ」
「了解。今夜は3人で一気にいくわよ」
虫たちの囁きが、風にのって届いてくる。

蚊取り線香は、火のめぐりを速めるように煙を濃くし、
円を描くように広げていく。
けれど風が方向を変え、煙が薄まった。
その隙を狙って、一匹がサウナーの肩をめがけて飛び込む——

……次の瞬間、白い煙がふわりと包み込んだ。
「ぐふっ…」
虫の小さな声が聞こえた気がして、
黒い影は空中でふらつき、そのまま落ちていった。

危なかった。
あとほんの少しでも、遅ければ。

サウナーはそれに気づかない。
目を閉じ、静かに深く呼吸をしている。
「——ああ、ととのった」

その横で、蚊取り線香の火は小さくなっていく。
燃え尽きる間際まで、彼は煙を途切れさせなかった。
すごいな。
僕には、真似できないことだ。

やがてサウナーは立ち上がり、
タオルを整えて、湯気のほうへと戻っていく。
蚊取り線香は、小さな灰の渦となって、すべてを終えた。

僕は、今日もそこにいる。
静かに、ただ灯りを投げながら。
次の誰かの“ととのい”を、そっと見守るために、



楽しんでいただけたらうれしいです。
ご覧いただき、ありがとうございました。

🔗 シリーズ|サウナの片隅で − 三部作 −
🌀 第1話|煙の結界 ~ 蚊取り線香の物語 ~
小さな火に命を灯し、煙の輪で“ととのい”を守る夜。
記事を読む
🕯 第2話|灯りの下で ~ ランタンの視点 ~
何も言わず、すべてを照らし、すべてを覚えている灯り。
▶ この記事になります。
🪑 第3話|静けさを受け止めて ~ ととのい椅子の夜 ~
誰かの重さをそのまま受け止める、静けさの番人。
記事を読む


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#サウナの片隅で #夏の1コマ #ランタンの記憶 #煙と光と虫たちと



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