広島旅・呉編1日目ー旅ノートとリュックと一緒に旅に出たー
プロローグ
私の祖父は、戦時中には呉にいた――らしい。
しかし、そのことを祖父の口から聞いたことは一度もなかった。
戦争のことを一切語らぬまま、優しかった祖父は、私が十二歳の夏に静かに旅立った。
年月が過ぎ、遺品を整理していたときのこと。
日曜大工が得意だった祖父が釘入れにしていた小さな箱を手に取った。
ずっと道具箱だと思っていたそれは、ふたを裏返して重ねてあったため、正体を隠していた。
何気なくふたをひっくり返した瞬間、私は息をのむ。小さなアルマイト製の弁当箱の上には、くっきりと刻まれていた文字が。
――『呉海軍工廠』。
それは、祖父が歩んだ過去への扉だった。
語られなかった日々。沈黙の奥に眠っていた記憶。
私は今、その街へ向かおうとしている。
祖父が青春を過ごし、しかし決して語らなかった街――呉へ。
夕焼けに浮かぶ艦影
呉の街に到着したのは、ちょうど夕暮れ時。駅からはバスに乗り、呉24時間パスを使って移動しました。
アレイからすこじまには潜水艦や護衛艦が並び、間近にその姿を眺められる遊歩道があります。オレンジ色に染まった空の下、黒い艦影が静かに浮かび上がる光景は迫力があり、思わず足を止めました。潮の匂いと波の音が、どこか緊張感を帯びて胸に響いてきます。
遊歩道の端には、ひときわ目を引く大きなクレーンがあります。これは明治34年に魚雷積載用として設置されたもの。戦後もしばらくは現役でしたが、今はその役目を終え、静かに港を見守る存在となっています。
戦時中、軍港として使われていたこのエリアは、今も一部は海上自衛隊の基地に利用されています。一方で、造船所や工廠の施設の一部は民間企業が引き継ぎ、現在も操業しているとのこと。その中には「旧呉海軍工廠造船部造船船渠(大和建造乾ドック)大屋根」――つまり、**「大和のふるさと」**があります。
まさにこの場所で、戦艦大和は秘密裏に造られていたのです。
しかもそのドックは今も造船に使われ続けている。静かに立ち尽くしながら、時を超えた重みを感じずにはいられませんでした。
散策を続けると、観光客がカメラを向ける姿や、地元の方が犬を散歩させている姿も見かけます。日常の中に潜水艦がある光景は、やはり呉ならではのものです。
そしてその風景を見ているうちに、戦艦と共に生きた祖父の面影を、ふと思い重ねて胸が苦しくなってしまいました。


言葉より先に、胸の奥がざわついた。
泊まれる潜水艦
散策を終え、バス停から歩くこと十分ほど。川沿いに建つ赤レンガ風の建物の4階が、本日のお宿「 RED SUBMARINE」です。名前の通り、**“泊まれる潜水艦”**をコンセプトにしたユニークなホテルでした。
重厚な赤い扉を開けると、そこはもう艦内の世界。壁には潜水艦や戦闘機の模型、通路は配管がむき出しで無骨な雰囲気。夜になると館内は赤いライトに照らされ、ソナー音が響く――まさに潜水艦に潜り込んだようでした。。
宿泊したのは個室「おきしお」。必要最低限ながら居心地よく、窓を開けると「甲板」と名付けられた中庭スペースがありました。宿泊者は下の階にある銭湯を無料で利用できるのも嬉しいポイントです。
ドミトリーのベッドには「I-400」といった潜水艦の名前が付けられていて、細部まで世界観を徹底していました。呉の旅にぴったりの、とてもユニークな宿泊体験でした。


呉のグルメといえば!
ホテル探検を終えて、晩ごはんを求めて夜の街へ。呉にはたくさんの名物料理があります。「海軍カレー」や「呉冷麺」など。他にも「広島風お好み焼き」。
向かったのは、ホテルのホームページでも紹介されていた徒歩2分のお好み焼き屋さん、きくちゃんです。
店内は地元の方々でにぎわっていて、 鉄板から立ち上る湯気と香ばしい匂いに包まれていました。お好み焼きを待っている間にも、近所の人が次々とテイクアウトを受け取りに来ており、「あぁ、ここは地元に愛されているお店なんだな」と実感しました。
注文したのは「肉玉そば・たまごトッピング」。熱々の鉄板から立ち上る香ばしい匂いとともに、カリッと焼かれた麺と、とろりとした卵が絡み合って……思わず「これぞ広島!」と心の中で叫んでしまいました。旅先で味わうご当地お好み焼きは、格別でした。

街中の銭湯って、楽しい
ホテルの3階には赤ビルの湯という銭湯も併設されています。せっかくなので1日の締めに立ち寄ることにしました。
ドアを開けると、リノベーション仕立てもあってキレイなロビー。赤ビルの湯と「RED SUBMARINE」のグッズも販売されてました。
更衣室も明るく清潔感があり、ドライヤースペースには女優ミラー完備!
シャワーエリアも広く湯船もキレイで、どこか懐かしい雰囲気が良かったです。サウナがあるのも楽しみが広がります。その日は他のお客さんがいなかったので独り占めできました。
湯上りにホクホクしながらロビーに出てくると、アイスのプレゼントが待っていました。とても充実した銭湯タイムでした。

(公式サイトより)
明日の目的地に思い巡らす
同じビルの中にあるので、湯冷めすることなくホテルへ。
宮島や平和記念館のチケットやレシートなど、紙で残るものは旅ノートにとめていきます。
最近はモバイルチケットが主流で便利になった反面、紙が手元に残らなくて寂しいですね。
荷物の整理をし終えて1人晩酌しながら、明日訪れる大和ミュージアムと海上自衛隊呉史料館 (てつのくじら館)に思いを馳せる。
わくわくと不安を抱えながら、灯りを消しました。

エピローグ
呉の街を歩きながら、祖父が過ごした景色に触れた。
潜水艦の影、にぎわう食堂、銭湯のあたたかな湯気――そこにあるのは、今を生きる人々の日常だった。
だが、その日常の奥には、沈黙のまま眠る記憶がある。
祖父が語らなかった時間。その沈黙は、この街で生み出された巨大な戦艦・大和の運命と重なっているように思えた。
誰もが口を閉ざし、海の底に封じられた記憶。
祖父もまた、その一部を抱えたまま旅立ったのだろう。
私はすべてを知ることはできない。
けれど、呉に立ち、風に吹かれ、同じ空を見上げることで、その影に少し近づけた気がした。
そして――明日、私は大和ミュージアムへ向かう。
祖父の沈黙、大和の沈黙。
その断片を探すために。
あとがき的なご案内
戦後80年、自分なりの追悼と祖父の影を追う旅はまだまだ続いていきます。
これまでの道のりも、よければのぞいてみてください
🚉 広島エリア
旅のメモ(呉編1日目)
※ここからは、私の実際の行程と費用をまとめています(有料部分)
最後に今回の旅ノートを作るときに参考にしたサイトを貼っておきます。
旅の計画や電車の時刻表チェックにどうぞ✍️
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
