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競争心が高いと「鬱」になりやすい?!【心理学的考察】

組織開発×スキル成長 DO-OD -OD(組織開発)をDOせよ」というイベントでスタンフォード式「ワークウェルビーイング」が紹介されていました。

結論、「食事・運動・睡眠」という生活づくりが重要という内容(これはこれで納得ですが、目新しくはないですね)でした。組織としても社員一人一人の生活習慣が整うように支援しましょう、ということです。

”闘争心”と”うつ”

個人的に気になったのは、医学博士の志村哲祥氏が「闘争心がモチベーションだと鬱になりやすい」と発言した点について(以下、引用)。

人間はいつ襲われるかわからない、戦わなければいけない時には、体の中から興奮性物質がいっぱい出ます。ただ、この興奮性物質は神経を壊します。短期ならいいんですよ。
今から5分間ぐらい集中しなきゃならない時に、わーっとやるのはいいんですけど、その状態が続くと鬱を起こすのでおすすめしません。

志村哲祥氏のコメントより

ここでいう興奮性物質とはおそらくアドレナリンなどの神経伝達物質のことでしょう。一時的に集中力や身体の活性化の向上ががありますが、一方で、動機や心拍数の増加、心臓への負担、そして心筋梗塞や不整脈のリスクが高まる、とも言われています。精神的には、脳の扁桃体が活性化されることで不安やイライラを引き起こしたりします。

ここでは、精神医学、脳科学の観点ではなく、心理学的になぜ「闘争心がモチベーションだと鬱になりやすい」のか、を考えたいと思います。ちなみに、以下では闘争心を競争心に変えています(普段の生活で闘争心高い状態は少ないですよね、現代ではどちらかというと競争心のほうが表出されやすい)



競争心が高いと「鬱」になりやすい?!

大前提として、先の医学博士も同様の意見ですが、競争心そのものが直接的にうつ病を引き起こすわけではないです。最終的には複合的な要因でなりえるといえます。

ただし、特定のタイプの競争心や、競争心と関連する心理的特性が、うつ病のリスクを高めるとも指摘されています(太田, 2001)。以下、学術論文も参照しながら、考察していきます。

● 過剰な競争心と「自尊心の低さ」

心理学の研究では、健全な競争心(自己成長や目標達成を楽しむ)と、「何が何でも勝たなければならない」「他者を打ち負かすこと自体が目的」といった過剰な競争心(Hypercompetitiveness)が区別されることがあります*1(最下部リンクあり、以下同様)

複数の研究で、この過剰な競争心は、不安、ストレス、敵意、神経症傾向の高さ、自尊心の低さといったネガティブな心理的特性と関連していることが示されています。これらの特性は、うつ病のリスクファクターとして知られています。過剰な競争心を持つ人は、対人関係での摩擦も多くなりがちで、その背景には自信のなさがあり、それらの結果として社会的孤立感がうつ病につながる可能性に至るということです。

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● 不健全な完璧主義による「自己否定感」

高い競争心は、しばしば不健全な完璧主義(失敗への過度な恐れ、他者評価への過敏さ、自己批判の強さなど)と密接に関連しています。競争に勝つことで完璧さを証明しようとする傾向があるためです。

完璧主義、特に不健全な完璧主義が、うつ病の有力なリスクファクターであることは、多くの研究によって裏付けられています*2。不健全とは、著しく高い基準や水準を自身や他者に課してしまうことであります。それを追求する完璧主義しても、それが達成できないと強いストレスや自己否定感を感じるため、抑うつ状態に陥りやすくなるということです。

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●社会的比較による「精神的負担」

競争心が強い人は、他者と自分を比較する「社会的比較」を頻繁に行う傾向があります。社会的比較とは、特に、自分よりも優れていると感じる相手(他者)との比較をすることで(上方比較)、劣等感、嫉妬、無力感を引き起こしやすく、これが抑うつ気分と関連することが知られています*3。

競争的な環境では、常に他者のパフォーマンスが気になるため、上方比較、例えば、自分よりも成績がいい、所得水準や学歴が高いなどによる比較によって精神的な負担が大きくなりがちとなり、結果、抑うつ状態に至るリスクが高まります。

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● 条件付きの「脆弱な自己価値」

自分の価値が「競争に勝つこと」や「他者より優れていること」に条件づけられている場合、精神的な脆弱性が高まります*4。競争場面での失敗や敗北が、自己価値そのものの否定につながりやすく、抑うつ状態を引き起こすトリガーとなり得ます。

多くの心理学の研究では、自己価値が特定の外部領域(学業成績、他者の承認、そして競争など)に過度に依存している場合、その領域で失敗すると精神的健康が悪化しやすいことが示されています。例えば、仕事だけに自分の価値を規定し、定年後に自己価値そのものに迷いや悩みがでてしまうケースもあります。

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まとめ:健全な競争心とは?

「競争心が高い」こと、特にそれが過剰であったり、不健全な完璧主義や社会的比較、条件付きの自己価値と結びついていたりする場合には、ストレス、不安、自尊心の低下などを介して、鬱状態に至る可能性があることを示唆しているといえます。

ただし、競争心の「質」や「程度」、そして個人の心理的特性との相互作用によって、そのリスクが高まるというのが学術的背景から推察できます。自己成長や協力といった側面を持つ健全な競争心と、他者を打ち負かすことのみを目的とするような過剰な競争心とを区別して考えることが重要かもしれません。すなわち、健全な競争心とは何か?、どれほどのストレス度合いが適切か?が次の問いになるでしょう(次回に続く?)

参考論文

*1:競争心に関する検討 : 多面的な競争心の測定および行動の意図との関連
*2:青年期における競争心と完全主義に関する研究
*3:うつ病の発症におけるストレスの役割
*4:自尊感情が主観的幸福感へ及ぼす影響の検討—自己価値の随伴性からの整理


最後までお読みいただきありがとうございました😊


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