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RAG(検索拡張生成)とは?仕組みと社内AIへの活かし方をわかりやすく解説

ChatGPTに社内規程を毎回コピペして貼り付ける。あるいは、聞いてみたらまったく実在しない条文を自信満々に返された。

第5回で見たとおり、AIは事実かどうかではなく「もっともらしいか」で答えを選びます。では、どうすればいいのか。

答えはシンプルです。思い出させるのをやめて、読ませてから答えさせる。 これが**RAG(検索拡張生成)**です。

第5回で「シリーズ後半で扱います」と予告し、第7回のDifyでも触れたテーマ。ようやく本編です。




この記事を読むと、次の3つがわかります

  1. RAGとは何か — なぜハルシネーション対策になるのか

  2. どういう仕組みで動くのか — 流れは4ステップだけ

  3. 社内で使うときに決めること — 実は技術より資料整備が8割

この記事は、AIツールを仕事で使う非エンジニア向けです。 構築手順ではなく、社内で検討するときに何を判断すればいいかが分かることをゴールにしています。


結論:RAGは「答える前に、資料を読ませる」仕組み

  • RAGとは、AIが回答を作る前に、信頼できる資料を検索して参照させる仕組み

  • モデルを学習し直さずに、社内の情報をAIに扱わせられる

  • 回答の質は、AIの賢さより参照する資料の質と新しさで決まる

※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)を含みます。
この分野をまとめて学ぶなら、非エンジニア向けの一冊が近道です。


RAGとは?「熱心すぎる新入社員」の比喩

AWSの公式解説に、うまい比喩があります。

LLMは、最新の出来事を知ろうとしないまま、あらゆる質問に自信満々で答える「熱心すぎる新入社員」のようなもの。 やる気はある。話し方も立派。でも、知らないことまで堂々と答えてしまう。

同社はRAGを、応答を生成する前に、学習データ以外の信頼できる知識ベースを参照させるプロセスと定義しています。モデルを再トレーニングせずに、特定の分野や組織内部のナレッジベースへ能力を広げられる、と。

つまり、その新入社員に**「答える前にマニュアルを読んでね」と言う**のがRAGです。

Google Cloudも公式ページで、RAGを従来の情報検索システムの長所と生成LLMの機能を組み合わせたAIフレームワークと説明しています。表現は違いますが、指しているものは同じです。


RAGの仕組み|流れは4ステップ

では、どう動いているのか。

①資料を準備する。 社内マニュアルやFAQを、検索できる形に変換して保管します。AWSの説明では、埋め込み言語モデルという技術でデータを数値表現に変換し、ベクトルデータベースに格納するとされています。

②質問で検索する。 質問も数値表現に変換され、近いものが探されます。AWS公式の例が分かりやすい。従業員が「年次休暇はどのくらいあるのか?」と聞くと、年次休暇のポリシー文書と、その人自身の休暇記録が取り出される、というものです。

③質問に添える。 見つけた資料を、質問と一緒にAIへ渡します。人が毎回コピペしていた作業を、システムが自動でやってくれている状態です。

④読んで答える。 AIは渡された資料をもとに回答します。だから出典を示せる。AWSも、出力に引用や参照を含められる点を利点に挙げています。


なぜハルシネーション対策になるのか

ここが第5回とのつながりです。

第5回で見たとおり、AIが誤るのは記憶から引っぱり出そうとするときでした。「思い出させた瞬間から危険ゾーン」と書きましたが、RAGはその前提を変えます。思い出させず、目の前に置いた資料を読ませる。

AWSもLLMの既知の課題として、答えがないのに虚偽の情報を提示する、古い情報や一般的な情報を返す、権限のないソースから回答を作る、といった点を挙げ、RAGはこれらへの一つのアプローチだとしています。

ただしゼロにはなりません。 検索が的外れなら、的外れな資料を読んで答えます。資料が古ければ、古い答えが返る。RAGは「嘘をつかなくなる魔法」ではなく、根拠を手元の資料に限定する仕組みです。出典が示されるぶん人が確認しやすくなる——ここが本質的な価値です。


RAGとファインチューニングの違い

社内情報をAIに扱わせる方法は、大きく3つあります。

毎回コピペするのは無料ですが、資料が増えると現実的ではありません。第2回で見たとおり、貼り付けた分だけトークンを消費します。

ファインチューニングはモデル自体を学習し直す方法で、費用も手間も大きい。AWSも、組織固有の情報のために再トレーニングするのは計算コストと財務コストが高くなるとし、RAGのほうが費用対効果が高いとしています。

多くの会社にとって、まず検討すべきはRAGです。 ただし住み分けはあります。ざっくり言えば、知識を足したいならRAG、文体や書式を覚えさせたいならファインチューニング。両方を組み合わせることもあります。


社内RAGを始める前に決める3つのこと

ここが実務でいちばん重要です。

どの資料を参照させるか。 正確で、更新され続けている資料だけを対象にします。古い規程が混ざっていれば、AIは古い規程を根拠に答えます。

誰に何を見せるか。 見落とされがちですが重要です。AWSも、権限レベルに応じて機密情報の取得を制限できる点に触れています。全社員が人事評価の資料を検索できてしまう、といった事故は設計段階で防ぐものです。

誰が更新するか。 資料が古びれば、回答も古びます。AWSも外部データの更新について、非同期での更新や定期的なバッチ処理が必要だとしています。

RAGは「AIの導入」ではなく「社内資料の整備」です。 ここが作業の8割を占めます。散らかった資料を読ませれば、散らかった答えが返ってくる。逆に言えば、資料が整っている会社ほど、RAGの効果はすぐ出ます。


どうやって作るのか

作り方は大きく2通りです。

ひとつは、第7回で紹介した**Dify** のようなプラットフォームを使う方法。公式サイトでもRAGパイプラインの構築・運用が掲げられており、ノーコードで社内資料を読み込ませられます。小さく試すならここからです。

もうひとつは、クラウド各社のサービスを組み合わせる方法。AWSはAmazon BedrockのナレッジベースやAmazon Kendra、Google CloudはVertex AI Searchなどを提供しています。本格導入は情報システム部門の領域ですが、選択肢を知っているだけで社内の議論には十分参加できます。


よくある質問

RAGとは簡単に言うと何ですか? AIが答える前に、信頼できる資料を検索して参照させる仕組みです。日本語では検索拡張生成と呼ばれます。

RAGは何の略ですか? Retrieval-Augmented Generation の略です。検索(Retrieval)で補強(Augmented)した生成(Generation)、という意味になります。

RAGを使えばハルシネーションはなくなりますか? 減らせますが、なくなりません。検索が的外れだったり、資料自体が古かったりすれば、誤った回答になります。

RAGとファインチューニングの違いは何ですか? RAGは資料を読ませる方法、ファインチューニングはモデル自体を学習し直す方法です。知識を足すならRAG、文体を覚えさせるならファインチューニングが向きます。

社内文書をそのまま使えますか? 検索できる形に変換する処理が必要です。また、正確さと更新頻度が回答品質に直結するため、対象の選定が重要になります。

ベクトルデータベースとは何ですか? 文章を数値表現に変換して保存し、意味の近さで検索できるようにした仕組みです。RAGの検索部分で使われます。

ウェブ検索機能とRAGは同じですか? 考え方は似ています。どちらも外部の情報を参照させますが、RAGは参照先を自社の資料などに限定して設計する点が異なります。

RAGは中小企業でも導入できますか? できます。ノーコードのプラットフォームを使えば、小規模な範囲から試せます。ただし資料の整備と更新の体制は必要です。


まとめ

RAGとは、答える前に資料を読ませる仕組み。検索拡張生成の名前のとおり、検索で補強してから生成させます。

AWSの比喩を借りれば、AIは知らないことも自信満々に答える熱心すぎる新入社員。RAGは、その新入社員に「答える前にマニュアルを読んでね」と言うことです。

そして忘れたくないのが、回答の質を決めるのはAIの賢さではなく、読ませる資料だということ。RAGの導入で本当に大変なのは技術ではなく、社内資料の整備です。

もし社内でAI活用の話が出ているなら、まず「どの資料が最新で、誰が更新しているか」を確認してみてください。 そこが整っていれば、AIは驚くほど頼れる存在になります。

次回はいよいよ最終回。**「機械学習・ディープラーニング」**を取り上げます。第4回の入れ子図で名前だけ出てきた、すべての土台です。


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もう一歩進みたいなら:RAG・社内AI構築の実務書 社内で本格的に検討する段階になったら、RAGの設計や運用を扱った一冊があると、情報システム部門との会話がスムーズになります。

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