見出し画像

プロ人材の伴走で納期遅れを克服! 生産現場の自信を取り戻した「社長の右腕」プロジェクト/三田電気工業株式会社

フリーランス・パラレルワーカーが参画することで、チーム一丸で大きな成果を上げたプロジェクトにスポットを当て、フリーランスと組織の理想的な関係構築のあり方や共創意義を賞賛する「フリーランスパートナーシップアワード 2024」。本記事は、1次審査を通過したファイナリスト 5 組のうち、三田電気工業株式会社の事例をご紹介します。

神戸市に本拠を構えるプラスチックメーカー、三田電気工業は、新型コロナの影響による売上減少とマネジメント人材の不足に悩んでいましたが、大手鉄鋼メーカーでものづくりの現場に携わってきたフリーランス人材を「右腕」として迎えることを決断。会議の効率化や納期達成率の大幅な向上といった成果につながりました。

今回は、三田電気工業の中村哲哉社長、フリーランス人材として同社で活躍中の奥野利明さん、三田電気工業とフリーランス人材のマッチング支援を行った、兵庫県プロフェッショナル人材戦略拠点(公益財団法人ひょうご産業活性化センター ひょうご専門人材相談センター)の亀井芳郎さんにお話をうかがいました。

文末に投票フォームもありますので、ストーリーに共感いただけた場合は応援の投票をお願いします。

仕事に追われ、社長と社員の分断は広がる一方…… "右腕"の必要性に気づく

――最初に、三田電気工業の事業内容や会社概要について教えてください。

中村:当社は樹脂の精密切削加工を得意とするプラスチック部品メーカーです。当社の部品は、電車や食品関係、医療関係など幅広い分野で使用され、半導体製造装置や電機、建設機械などの製造大手に納入しています。従業員数は32名で、10年前に工場を移転し、敷地を倍に拡張して設備を充実させました。私は学生アルバイトとして入社して以来、当社一筋で勤務し、7年前に創業社長から経営を引き継いでいます。

新工場移転は平成27年。軌道に乗るかと思われたところで、コロナショックに見舞われる。

――どのような企業課題が、フリーランスとの出会いを求めるきっかけとなったのでしょう。

中村:一番の問題は、マネジメントが機能せず、製造現場が混乱していたことです。これまで私たちは、「段取り替え(製造する部品に合わせて、加工機等の設定を変える作業)を少なくすれば、生産性が上がる」と考え、先の納期を見越して部品を多めにつくっていました。

とはいえ、人手が足りない中で受注分を超えた生産を続けているので、いつしか納期遅れが常態化。改善を図ろうとも何から手を付けてよいのかわからず現場は混乱し、リーダーたちと毎週会議をしても堂々巡りで、社員のモチベーションも低下していきました。

どうにかしたくて、経営コンサルタントの指導のもと「トヨタ生産方式」を取り入れたり、社員とセミナーを受講したりしましたが、変化は一時的なものでした。そもそも自分ひとりが旗を振っても、誰もついてきてくれません。経営者としてのレベルが低いのか、そもそも人望がないのか……と落ち込んでいたときに、メインバンクから兵庫県プロフェッショナル人材戦略拠点の「右腕人材プロジェクト」を紹介され、亀井さんと出会いました。

亀井さんは、「中小企業には中小企業の生産性の上げ方がある。右腕的な存在に現場に入ってもらい、じっくり改革を進めてみては」と話してくださり、ハッとしました。

自分で言うのはなんですが、私は長年、先代社長の右腕として働いてきました。ところが代替わりをした今、私の右腕的な存在がいないことが、問題を大きくした原因ではないかと腹落ちしたんです。しかし、急に会社が大きくなって、リーダーたちも自分の仕事で精一杯。今から「右腕」を育てる余裕がなかったので、取り急ぎ外部からプロフェッショナルをお招きしたいと思いました。

プロのヒアリング力で、社員たちのベクトルが揃い始めた

――パートナーである奥野さんとは、どのようなプロセスで協働に至りましたか?

中村:まず「生産性向上を目指したい」という私の希望を亀井さんに聴いていただき、「右腕」候補の方2名と、当社の現場社員が一緒に会社について考えるワークショップ「課題抽出プロジェクト」を実施してもらいました。その後、候補のおふたりから課題解決に向けた提案書をいただき、奥野さんに当社の支援をお願いすることにしました。

奥野さんは、地元の大手企業 神戸製鋼所のご出身で、技術開発、品質管理、生産管理などに取り組まれてきた技術士です。ものづくりの現場にも精通されていると知り、ぜひご支援いただきたいと思いました。最初は3カ月間の契約で、週に一度、出社して9時からの営業会議に参加していただいた後、私との1on1の時間をつくってもらい、質問をしたり、相談に乗ってもらったりしました。

「課題抽出プロジェクト」のようす。席を立ち説明する奥野利明さん。写真右隣に亀井芳郎さん。写真一番右が中村哲哉社長。

――ここで、「右腕」となられた奥野さんのご経歴と現在のご活動についてお話しいただけますか?

奥野:3年前に会社を退職し、「奥野技術士事務所」の屋号で、金属素材と品質管理を専門とする技術コンサルタントを開業しました。神戸製鋼所在籍時から、製造業の中小企業支援をしたいと考えていて、基本的な経営学の勉強をしていました。そして退職してすぐ、ひょうご産業活性化センターの中小企業の支援プログラム(大企業連携副業兼業マッチング)に参画する機会に恵まれ、これまで数社の経営課題解決を支援しています。

現在は個人事業主として活動しながら、以前よりおつき合いのあったコンサルティング会社の方と共同で、主に航空宇宙業界の品質コンサルを手がける株式会社クオリテムというスタートアップを立ち上げ、CTOとしても活動しています。

――奥野さんが解決したいと思われた、三田電気工業の課題とは。

奥野:生産性を向上するためには、コミュニケーションの改善が第一の課題だと感じました。中村社長は非常に意欲的で、社員のみなさんも問題意識を持っています。しかし、社長と社員の間に認識のずれがあり、ベクトルが揃っていない印象を持ちました。

中村:これまでの会議では、焦りからか自分が一方的に話していましたが、奥野さんは相手の意見に耳を傾け、「どうしたら良くなると思う?」「そう考えたのはなぜ?」と問いかけます。そのうえでの的確なアドバイスが、リーダーたちに響いている感じがします。

自分の相談相手になってくださるのはもちろん、時間をとって社員全員と面談し、小さな困りごとを拾い上げ、私ひとりでは掴めなかった課題を抽出することもできました。まさに右腕、番頭さんのような役割を担っていただき、感謝しています。

奥野:中村社長とリーダーたちは、何十年も一緒に働き、家族以上に長い時間を過ごしています。だから「兄貴(中村社長)が言うたとて」と、反発されるのは仕方がないことです。ある意味、週一度だけ出社する外部の人間だから引き出せる話もあるのだと、こちらも気づかされました。

展示会に出品したときの記念写真。

会議時間は6分の1に! 目の前の仕事に集中する生産方法で納期遅れも大幅減少

――では、生産性向上のために取り組まれたことを具体的に教えてください。

奥野:まず、営業会議の仕方を見直しました。会議に参加するリーダーはプレイングマネージャーなので、内心、「会議はさっと終わらせて、早く現場に戻りたい。作業したい」と考えていることが分かりました。そこで、「今週納期と納期遅れの顧客リスト」を作成し、「今週はこれを終わらせる」というゴールを見える化しました。全員がそのゴールを共有したうえで議論に集中できるようになったので、会議時間は平均約3時間から約30分にまで減りました。

中村:リストによって今やるべきことが明確になり、リーダーのモチベーションが明らかに上がりました。そもそも、会議に3時間もかかっていた理由をひも解くと、先の納期を見越して部品をつくるので目の前の仕事が溜まっていき、結局優先順位がわからなくなっていたからです。奥野さんが「まずは今、必要なものからつくりましょうよ」と資料を示してくださって、恥ずかしながら目からうろこという感じでした。

また会議時間が減ったことで、機械を動かせる時間が増えたので、リーダーたちの心の余裕も生まれました。

――営業会議の改善に着手する際、意識されたことはありますか?

奥野:会議の際に、利益創出につながる重要課題を数値化して全員に提示すること、そして従業員が自ら数値化を行えるようにすることの2点は意識していました。全員で同じ方向を向き、コンサルタントなしでも自主的に取り組みを継続できる体制をつくりたいという想いがありました。

――「段取り替え」でのロスを避けずに、目の前の受注に集中するという奥野さんのアドバイスは、これまでの部品づくりの手法を大きく変えるものですが、ハレーションはありませんでしたか?

中村:自分たちは「段取り替えをしない方が効率化される」と信じ込んでいたので、最初は正直疑問でしたし、喧嘩まではいきませんが、社員も2、3カ月はモヤモヤしながらの作業だったと思います。これが、セミナー講師など関係性の薄い人からのアドバイスであれば「大して変わらん」と元に戻していたかもしれませんが、奥野さんは毎週来社してデータを取り、実際に生産が効率化されて、納期遅れが大幅に減少していくさまを数字で示してくれました。全員が納得して作業できるようになり、奥野さんへの信頼もさらに厚くなりました。

我が社の強みを発掘してくれたパートナーと共に、中長期視点で育つ組織へ

――その他に、奥野さんとの共創によって得られた成果について教えていただけますか?

中村:実は大きな成果だと感じているのは、品質管理を専門とされる奥野さんに「検査員のレベルが高い」という自社の強みを教えていただいたことです。「大手にも負けないレベルですよ」とお墨付きをいただけて、高品質な部品を安定的に提供できていることに自信が持てました。社員の仕事ぶりも客観的に認められ、モチベーションアップにつながったと思います。

部品製造は1ミリに満たないズレも品質を左右する。奥野さんは製造現場に入り、ノギスでサイズを測るなどして現場の仕事力の高さを見抜いた。

――それは素晴らしいですね。では最後に、今後の展開についてはいかがですか?

中村:当初は3カ月の契約でしたが、契約延長をお願いしました。今後は生産管理業務の定着、中期的な事業計画の立案についてご支援いただく予定で、大手企業で培われた人事評価の方法等についても教わりたいと思っています。

また、奥野さんは、航空宇宙業界の品質コンサルティングを手がける会社も立ち上げられています。当社もいつか、宇宙業界に進出……といったこともあるかもしれません。その際には、お力添えをいただけたらうれしいです。

奥野:中村社長からは「この先もパートナーとして支援してほしい」とのお話をいただき、ありがたく思っています。「中小企業の経営支援は、コミュニケーション改善から始め、技術的な改善はその次」という、自分なりの支援ステップの有効性が確認できたことは大きな収穫で、三田電気工業さんに感謝しています。また、私の専門である品質管理の手法は、経営課題の解決に直結することを実感した機会でもありました。今後、さらにスキルを磨いていきたいです。

――今回のマッチング支援をされた亀井さんからご覧になって、企業がフリーランスの「右腕人材」を活用するメリットはどんなところにありそうですか?

亀井:遠すぎず近すぎず、ちょうど良い距離感で改善に取り組んでもらえるところが大きなメリットだと思います。年数回の経営コンサルタントの指導を受けても、現場の社員は「机上の空論」と反発しかねませんし、社員として右腕人材を登用すると、毎日顔を合わせるので結局家族的になってしまい、改革が停滞する可能性が高まります。継続的に現場に入り、社員と一緒に改善策を考えて、結果の検証までできる。信頼をベースに、社員の自律まで促せる。これが、フリーランスの「右腕人材」の強みですね。

――「右腕」として奥野さんを信頼し、役割分担をしながら経営改善に向かわれる中村社長、現場に入り込んで得た客観的なデータで、改革に懐疑的な社員の信頼を得て支援を続けられる奥野さんのタッグは頼もしいですね。本日は、ありがとうございました。

◆ ◆ ◆

この取り組みへの共感や参考になった場合は、「フリーランスパートナーシップアワード2024」ファイナリストへの投票もお願いします。

フリーランスパートナーシップアワードとは
フリーランスパートナーシップアワードは、フリーランス(プロ人材、副業人材など)と企業が良いパートナーシップを築き、チーム一丸となって成果を出したプロジェクトに光を当て、讃えることで、企業がフリーランスをチームに迎え入れることの意義や成果を広く発信するものです。
書類審査による予選を勝ち抜いたファイナリスト5組の中から、Web投票により大賞が選ばれます。また、本選でのプレゼンテーションを踏まえた特別審査員賞も選出されます。

フリーランスが活躍できる土壌の広がりを応援するため、貴方が最も素敵だと感じたプロジェクトに是非ご投票をお願いします!

https://forms.gle/eRKHYPpioEwDngFW9

▽その他のファイナリスト一覧
・紙小津産業株式会社
受発注にかかる時間が1/6に! 社員によるアプリ開発をフリーランスが伴走支援

・杉浦味淋株式会社
1000人超えのファンの力でコロナ禍を乗りきった! "愛されるみりん"のデジタルマーケ戦略

・株式会社ディライトアップ
松山発・新種のパプリカを全国区へ! 自走する6人のプロボノチーム

・トリイ株式会社
兼業人材こそイノベーター! 創業76年の化学品商社がフリーランスを活用しまくる理由



いいなと思ったら応援しよう!