幸運すぎる俺のもとに死神がやってきた 第1話

あらすじ

あらゆる出来事に幸運がついて回る主人公の高校生、雲野幸生(うんのゆきお)。
とある休日、彼の前にミリア・コープスと名乗る死神が現れる。
彼女はある目的の為に、幸生の体に宿っている『幸運を引き起こす希少な魂』を欲しがっていた。
故に彼女は出会い頭に幸生へと言った――「あなた、私のために死んでください!」と。
当然、幸生はその要求を拒否するが、ミリアはそんな返答はお構いなしに幸生を殺そうとしてくる。
幸生は持ち前の幸運で自分の意思とは関係なくミリアの攻撃を次々と躱していく。
これはそんな、死神がもたらす死を幸運によって回避し続けていく少年の物語。

第1話

俺の名は雲野幸生(うんのゆきお)。普通の高校一年生である。
俺の周りには常に幸運がつきまとう。
今までの俺の幸運を語るには一週間時間があっても語ることが出来ない。

いくつか例を挙げて説明しよう。

運動会の徒競走やリレー。俺と一緒に走っている走者は常に、間違いなく、絶対に転倒する俺は走る競技では一位以外に取ったことがない

商店街かデパートなどで行うくじ引き。常に一等を引き当てられる。 

テストは選択式なら全てを勘で書いたら必ず満点を取ることも出来る。

ここ最近の幸運は、女子更衣室に丸一日侵入していた時もあったが、誰にもばれずに過ごしきったことだ。

そう、つまり俺は「極端に運の良い男」なのだ。

まぁ、運の良いだけであって生まれつき恵まれているわけではない。
顔は平凡で成績も実力で言えば並。運動神経も中の下で特に突出した才能のない。両親は現在海外で転々として暮らしている。俺は普通のマンションに一人暮らしだ。
ちなみに、両親が海外にいる理由は仕事だからではない。両親は仕事をしていない。ただ遊んでいるだけだ。
俺がまだ小さかった頃、母が幾度も幾度も「ゆきちゃん、適当に数字を六つ言って」ととても優しく爽やかな笑顔で聞いてくる時期があった。無邪気だった俺は何の違和感も持たずにただひたすら六つの数字を言い続けた。

……それが、宝くじの番号に利用されていたのを最近知った。

この事実を知った時は軽くトラウマになりかけた。純粋な頃の俺を利用するなんて、なんて親だと。
両親が海外に行くときも「どうせなら、マンションまるまるゆきちゃんに買ってあげようか」と言われたが、俺は「普通に一室にしてください」と頑なに拒否した。
最近まで俺はこの体質に頼らないように生きていきたいと思っていた。しかし、この幸運は俺の意思とは無関係に発動するし、俺の唯一誇れることだ。だから、今は受け入れていこうと考えている。
俺の名前は両親が「幸せに生きてくれますように」という意味で名付けてくれた幸生という名前なのだ。この能力は、その名に恥じないものとも言えるだろう。
 
そしてそんな俺は今、一人の少女とのある出会いを果たしていた。
 
「あなた、私のために死んでください!」
 
……とまぁ、現在俺はこの少女と出会った直後に発せられたこの台詞に酷く困惑して固まっている。

落ち着け、何故一人暮らしである俺が使用するトイレの中に女の子がいる? 俺はいつも通りごく普通にトイレの扉を開けたはずだ。一体何が起こった。このトイレはいつの間にか少女製造器になっていたのか。そんなファンタスティックでエクセレントなトイレだったのかこのマンションのトイレは!
いや、そんなはずないだろう。
いきなり死んでください宣言も意味が分からないし、とにかく色々唐突すぎて思考が全く機能しない。どうしたものか。
ひとまず状況を整理することにしよう。
そこで俺が取った対応は――

「あ、失礼しました」

 と、そう言ってそっと扉を閉めた。

「な、なんで扉閉めるんですか⁉」

 ドンドンと彼女はトイレの中で扉を叩きながら叫んでいる。俺は全力で扉を抑えている。

「開けてください! なんで閉じ込めるんですか! お願いですから開けて私に殺されてください!」
「会っていきなり殺害宣言する女の子が自宅のトイレの中にいる非常識な事態に全く理解が追いついてないんだよ! 少し考える時間を設けてほしい!」
「分かりました! だったら五分差し上げます! それが終わったらさっさと殺されてくださいね!」

あ、時間くれるのね。
まぁ、けど物騒な言葉を連呼しているし、とりあえず扉は抑えたまま状況を整理することにしよう。彼女が何故トイレの中にいるのかはこの際どうでもいい。いや、割と無視できない疑問ではあるが、とりあえず置いておこう。そのこと以外に考えなければならないことがある。

まず俺は、何故殺さなければならないのだろうか、何か俺無意識に悪いこと
でもしたんだろうか?

「ちょ、扉は閉めたままなんですか⁉ 開けてください!」

扉を叩きながら叫ぶ彼女の言葉を全力で無視して俺は思考を続ける。
悪いことといっても最近でやった事と言えば女子更衣室に入ったことくらいだ。まさかこれは学校の女子の襲撃か? いやけど、あれは結局バレてないはずだしな。しかも女子更衣室の入ったくらいで極めて幸運な俺がこんな不幸なことになるはずもない。

だが、待てよ。これは果たして不幸とは言えるのだろうか。

自分の家の中に突如女の子が出現する展開、健全な高校生男子なら誰もが夢見る事ではないか!
そうか、これはつまり俺に新たに訪れた幸運なのだ。くっ、なんということだ。また望まずして幸運が舞い降りてしまった。俺も罪深い男だ。
しかし、仮にそうだとしても何故俺は殺さなければならないのだろうか。
やっぱり女子更衣室が原因か? いやけどあんな可愛らしい顔つきをした子、うちの学校にはいなかった気がするな。
そもそも女子更衣室の一件もあれは友人たちとの勝負に負けた罰ゲームの一貫だ。それなのに俺が殺されるなんて理不尽な話だろう。

「あーけーてーくーだーさーいー! もう十分は経ちましたよ⁉ なんで何も言わないんですか⁉」

先ほどから何度もトイレの中から叫ぶ声が聞こえてくるが、それはさておき次なる疑問。
一瞬しか見ていなかったから正確には分からなかったが、彼女服もおかしかったような気がする。漆黒のドレスを身にまとっていて、背中にはなんか紫色の羽のようなものが着いていた気がする。今時流行のコスプレという奴か? 仮にそうだとしても何故コスプレ少女がトイレの中に?
だめだ。考えがまとまらない。確定要素が少ない分、結論に至ることが出来ない。
しかし、時間をもらって少しは気持ちを落ち着かせる事が出来た。これなら、パニックにならずに会話が出来そうだ。
……ん? 時間? そういえば、今何分経った?
俺はズボンのポケットから携帯を取り出し、確認をした。
……やばいもう三十分もたってる。
いつの間にか声が聞こえなくなったけどどうしたんだ?
俺は恐る恐るトイレの扉を開ける。

「あ」
「え?」

俺と彼女は互いに顔を合わせて声を発する。
彼女はトイレの便器に腰掛けていた。しかもチョロチョロと音が聞こえている。
まさに彼女はお花を摘んでいる途中だった。
……これは、やばい!

「……い、いや、なんというかこれは不幸な事故と言いますか……」
 
いや待てよ、もしかして俺にとっては幸運な事故なのか?
そんなことを考えていると、徐々に彼女の目尻に涙が浮かんでくる。

「あっいやちょっと待ってくれ!」
「……き――」

俺は全力で言い訳を考えるが、彼女は大きく息をすった。

「――きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 マンションが崩壊するのではないかと錯覚するほどの彼女の悲鳴が部屋中に響き渡った。
 
※※※
 
「……ひっく。ひっく」

現在俺は鼻をすすりながら未だにしくしく泣いている物騒少女……もといコスプレ少女とリビングのテーブルを一つ挟んで座っている。

しかし、彼女は体育座りで膝に顔を埋めている。

さて、どうしたものか。これでは会話が出来ん。俺だけのせいでは全くない気がするが、レッツ放尿中の彼女の姿を見たことは事実だし、ここはひとまず土下座かな。

「すみませんでした!」
「……ずず」

俺は床に五体投地体制で謝るが、彼女は鼻をすすって軽く顔を上げるだけで何もコメントしない。
彼女は顔をむすっとさせている。
あらー、まだ怒っていらっしゃる。

「……あのーいい加減機嫌をなおしていただけないでしょうか?」
「……」

彼女は何も言わずぷいっと顔を横にし、鼻と目を赤くしながら頬を膨らませる。なんだその仕草、可愛いな。
しかし本当に俺は謝る必要性があるのだろうか? そもそもこの子が先に人の家のトイレに不法侵入したのに俺だけに非があるのか? もう警察でも呼ぶべきか? 
けどこの状況を警察になんて説明したものか。「少女の放尿を目撃してしまいました」とでも言うのか? いやそれは俺がアウトだ。
まぁ、この子にはまだ聞きたいことが山ほどあるし警察はまだ呼ぶべきではないかな。
とにかく、このままそっぽを向かれたままじゃ話が全く進まないし、まずはこの開きに開いた心の距離を縮めることが重要だ。
きわめて幸運であるところの俺は一人の少女の閉ざされた心を開くことくらい造作もない。今から俺の本気を見せてやる。
そう思いつつ俺は木製の皿を用意し、キッチンの下にある引き戸の中からお菓子を取り出し、更に黙々と移していき、テーブルへと運ぶ。

「ほら、これでも食べな」
「……」

俺はその皿を彼女の目の前に置く
どうだみたか、これぞ名付けて『お菓子作戦』だ! 
女性は甘いものが好きだと聞く。子供ならなおさらだ。ならば皿いっぱいにあるチョコ、クッキー、ビスケットの群を見逃すことができるはずもない。一部の隙もない完璧な作戦だ。
彼女はテーブルの上にあるお菓子を横目でちらりと見る。どうやら食べたいみたいだ。ほら食べろよ。食べてしまえよ。
だがニヤニヤしている俺の顔を見てすぐに目をそらす。

「……はぁ、仕方ない」

俺はため息をつき、彼女の隣に座る。彼女は体をびくっとさせるが、すぐに俺を睨み付ける。

「ほら、食えよ」

皿の中にあるチョコを手に取り、彼女の口元に近づける。

「……」

しかし、彼女は食べようとしてくれない。

「何も入ってないから、食えって」

俺はチョコで彼女の頬を何回もつつく。これ、やってて面白いな。
そして、やっと彼女は観念したのか、徐々に口を開け始めた。
……なんかこの子を見ていると少しいたずらしたくなってくるな。
そう考えた俺は、彼女が口を閉じると同時に手に持っていたチョコを瞬時に自分の口へと運んだ。

「~~ッ」

彼女は顔をもう一度赤くして再び瞳に涙が溜まり始める。
しまった。しくじった。

「……なんでさっきからそんな酷いことするんですか」

今度はさっきとは変わって静かに涙を流す。
また泣かせてしまった。
この子、年齢は俺と対して変わらないように見えるのに、どうもメンタルがポンコツらしい。
だが、一応言っておくが最初は故意じゃないからな?

「はぁ……。悪かったよ。もう何もしないからお菓子食べろよ」
「……ぐす」

頬に涙をつたわせながら彼女はお菓子を取り口へと運び、もぐもぐ租借する。なんだか小動物に餌を与えている気分だ。
というか、背中に着いている謎の羽がパタパタ動いているのだが、それは飾りじゃないのか? 最近のコスプレはここまで進んでいるのか。
そのような疑問を感じつつ俺は彼女を見て微笑し、ため息を一つ短く吐く。

「さて……」

これで本題にはいることが出来た。しかし、何から質問したものか、彼女の格好やら、どうやって部屋の中に入ったのか、何故トイレの中にいるのか、色々と聞きたいことはあるんだが、とりあえず端的に質問を投げかけてみた。

「お前って……なんなの?」
「……!」

彼女は何か思い出したような顔をして、急に目を腕でごしごしして涙を拭いて勢いよく立ち上がる。

「よくぞ聞いてくれました!」

……いきなり元気になったぞこいつ。
先ほどまで泣いてたのが嘘と思えるかのように彼女は誇らしげに胸に手を当て、大きく息を吸う。

「私は死神です!」
「……は?」

……このポンコツ女、何を言っているんだ?
いや、言葉だけでの意味は分かっている。今この子死神って言ったんだ。俺の耳が腐っていなければ、確かにそう言った。

死神ってあれだよな? 魂を刈ったり、とあるノートを人間界に落としたり、卍○したりするあの死神のことかな?
なるほど。それなら納得――

「って納得できるかあ!」
「うわぁ⁉ いきなり大きな声出さないでくださいよ! びっくりするじゃないですか!」

俺の反応は至極当然である。
もうこの不思議ちゃんとの会話は疲れた。いやたいして会話はしてないけれども。もう聞くだけ無駄に思えてきた。
俺の中にある危機察知の第六感的な何かがここは関わっていけないと強く反応している。もうここは現代の法律に則って、やっぱり我が国の正義に助力を願おう。
俺は携帯を取り出し、「1」と「0」だけで構成されている、なんと三回入力するだけで電話が掛るお手軽な電話番号に電話を掛ける。

「……あ、もしもし警察ですか。家内に不法侵入された挙げ句に殺害宣言をする自称死神を名乗る残念なコスプレ少女がいるのですが」
「ちょっと待ってくださいよぉ!! 話を詳しく聞いてないのになんでさっきからそんな酷いことするんですかぁ!」
「うわ! いきなりひっつくな!」

彼女は重りのように、さながら駄々をこねて欲しいものを強請ろうとする子供のように、俺の腹にしがみつき、泣きじゃくる。

「お願いですから話を聞いて下さい!」
「あぁもぉ! 分かった、分かったから! もうとりあえず離れて泣き止んでくれ! すみません俺の勘違いでしたぁ!」

俺は電話先に精一杯に謝罪を投げかけて電話を切った。
 
「……で、死神を名乗る物騒で残念な不思議ちゃん。君は何故ここにいるのかな?」
「……その前にその呼び方やめてくれませんか?」

やっとまともに話が出来そうな気がして俺は安堵する。

「それじゃあまず、君の名前は?」
「……ミリア・コープスです」

彼女に出会ってから約一時間以上立って、漸く彼女の名前を知ることが出来た。なんだか途轍もなく長かった気がする。
ていうか、名前怖すぎでしょ。コープスって、死体って意味じゃないか。

「コープスってなんか嫌な名前だな」
「何を言いますか! 私たち死神世界には古くから伝統があってとても名高いコープスの家系ですよ! 偉大なんですよ!」

なるほどそういう設定ってことか。

「オーケーオーケー理解した」
「……本当に信じてますか?」
「シンジテルヨー」

ミリアとやらの質問に俺は顔をそらし棒読みで答える。
近いうちにイベントでもあるんだろ? アニメかなんかの。だからそういう格好してるんだろ? そうなんだろ?

「こっちを見て下さい!」

ミリアは俺の頬を両手で挟み混み無理矢理目を合わせるように強制する。
ちょ、力強い。首痛い首痛い。

「……その目。やっぱり信じていませんね?」
「うぃ、うぃや。しんひてるしんひてる」
「やっぱり信じてませんね!」
「……うぃいから手をどけろ!」

俺はミリアの手を叩き怒鳴る。
もうキレた。いい加減キレたぞ。そろそろ俺は怒っても良いはずだ。

「いい加減にしろお前! いきなりトイレにいるは死んで下さいって言うわ、挙げ句の果てには死神って言うわ、信じられないのは当たり前だろ!」
「で、でもでも。私は本当に死神だしあなたの命が必要なのは本当だし……。トイレにいたのはランダムだったから仕方ないことだし……」

彼女はおろおろしながら再び泣きそうな顔になる。
だめだ。半分以上何を言っているのか分からない。
しかしこの子、本当に豆腐メンタルだな。

「じゃあ、まずはお前が死神であることを証明してくれよ」
「……そうすれば信じてくれるんですか?」
「ああ、約束する」
「……もう酷いこともしないですか?」
「絶対しない」

そもそも酷いことなんてしていない。

「分かりました! ならば私が死神である事をご覧に入れましょう!」

また急に元気になった。さっきからこの子は情緒不安定なのか?

「さて、まずは私のことをじっと見つめてて下さい!」
「見てれば良いのか?」
「はい! 見てて下さい!」

そう言われて俺はミリアの言うとおりにし、彼女の体を見つめる。
一体何を始める気なんだ?

「一、二の……三!」
「え!?」

刹那、ミリアは俺の前からその姿を消した。その状況に俺は驚愕する。

「こっちですよー。こっち」

背後から声が聞こえ、後ろを振り向く。そこにミリアが座っている俺を笑顔で見下ろしている。

「では、もう一度!」

そう言ってミリアは再び姿を消す。

「こっちですよー」

今度は前方から声が聞こえたので前を向くと、玄関からミリアがこちらに向かって手を振っている。

……嘘だろ。これは瞬間移動ってやつか?

「どうですか! びっくりしたでしょ⁉」

また瞬時に俺の目の前に姿を現して得意げに発言する。

「……確かに驚いたよ」

手品には見えない。事前に準備していたようにも思えない。本当に瞬間移動してるみたいだ。
さっきこれを使えばトイレから出れたんじゃないか? と疑問に思ったが面倒くさなりそうだから言わないことにした。
だが果たして、これは死神の能力といえるのか?
これでは死神というよりただの超能力者だ。死神って言うのはもっとこう……。例えば、魂を刈ったり、名前を書けばその人が死ぬノートを人間界に落としたり、卍○したりするものではないのか? あ、これさっきと一緒だ。 

「……他にはあるのか?」
「勿論です! 次はこちらです!」

ミリアは左手を自分の胸の前に突き出して手のひらを上へと向ける。
すると彼女のその左手から大きな鎌が現出する。

「どうですか? これが『死神の鎌』です!」

ミリアはその鎌を踊るようにくるくると振り回しながら、手元に出したり消したりを繰り返す。
……確かに、これはすごい。本当に死神に思えてきた。
未知なるものとの出会いに俺は少し心を振るわせていた。

「そ、その背中に着いている羽も本物なのか⁉」
「本物ですよ? 飛べないですけどね。触ってみます?」
「触って良いのか⁉」
「良いですよー」

ミリアは可愛らしく微笑み俺に背を向ける。羽は小刻みに動いている。
……な、なんだか、今からいけないことをしてるみたいに思えてくる。

「本当に触って良いのか⁉」
「大丈夫ですよー。ほら」

ミリアは背中をぐいっと近づけてくる。

「で、では失礼します」

俺は何故か緊張してしまい敬語になってしまう。恐らくメチャクチャ気持ち悪い反応をしているのだなと自分でも思う。
そして俺はミリアの羽をつまんだ。

「ひゃっ」
「うわぁ!」

ミリアは艶めかしい声を出し、羽をびくっとさせる。

「ど、どうしたいきなり!」
「すみませんちょっとだけくすぐったくて……。すぐに慣れるのでどうぞ遠慮せずに触ってて下さい」

「わ、分かった」

 俺はミリアの羽を再度触れ、軽く両手で揉むように羽全体を触っていく。

「んっ……。ん……」

だからそんな声を出すな! こっちが変な気分になってくるだろう。
……しかし、なんとも表現がしづらい不思議な感覚だ。柔らかくはないがかといって堅くはない。見た目と触り心地は例えるならコウモリに近いような気がする。まぁ、コウモリの羽は直接見たことも触ったこともないが。

「……あの、もういいですか?」
「ああ、ゴメン。もう十分だよ」

ミリアは顔を赤らめてこちらを見てくる。俺は彼女の羽から手を離した。

「ふぅ~。で、どうでしたか?」
「ああ、確かに作り物とは思えないほどのリアルさだったよ」
「それはそうですよ! 本物ですから!」

なんかどっと疲れた。とりあえず彼女が人外ではあることは理解した。死神って言うよりかは小悪魔って印象がするが。ていうか今更だが死神ってトイレするの?

「まぁ、多少疑問に感じる点はあるがとりあえず君が死神だって事は認めるよ」
「ありがとうございます!」

ミリアは深々とお辞儀をしたあと、満面の笑みを浮かべる。
なんだ、こうやって見ると普通の女の子と大差ないじゃないか。危険な子にはとてもじゃないが見えないな。
しかし、そんな俺の思いとは相反して彼女はこの後驚くべき事を口にした。
 
「では、死んで下さい!」
 
そう言って彼女は瞬時に死神の鎌を手元へ出現させ、俺の首筋目がけて大ぶりで振り抜いた。 

#創作大賞2024 #漫画原作部門




いいなと思ったら応援しよう!