選択の街【セレクトリア】1話〜あなたは何を選ぶ?
“選択疲れ”が病のように広がる世界。
迷い込んだ者は抜け出せない
「選択の街(セレクトリア)」 が舞台。
そこで出会うのは、“適当選びの魔法”を使う少年と不思議な鳥。
「選択の街(セレクトリア)」
どこもかしこも看板・案内・選択肢だらけ。
現実世界で選択疲れになっている主人公 レナは異世界・選択の街に迷い込んできた。
【第一話】
『迷いの街と適当選びの魔法』
あの日、私は「もう何も選びたくない」と本気で思っていた。
歩道橋の上で立ち止まる。
目の前に広がるのは、分かれ道。右も左もまっすぐも、案内板だらけ。
「おすすめはこちら!」
「今週人気急上昇!」
「過去の自分が選ばなかった道!」
「後悔ゼロの選択はこちら!」
——うるさい。
どこを向いても、どこに進んでも、「これが正解だ」と誰かが言ってくる。
私の心の中も、同じくらいうるさかった。
(間違えたくない)
(後悔したくない)
(でも、このままでも嫌だ)
そのときだった。
“コロン……”
不思議な音が、どこからともなく響いた。
「なに?」
耳を澄ませると、また——
“コロン……”
静かな音。
それだけが、この街で唯一“選べ”とは言ってこない心地よい音だった。
振り返ると、そこに少年が立っていた。
白いシャツに黒いズボン。
片手にサイコロ。肩には、黒い鳥。
少年はこちらを見つめ、少しだけ笑った。
「お前も、“選び疲れ”か?」
少年はサイコロを手のひらで転がしながら言った。
「うん…何を選んでも間違いに思えて、進めなくなるんだ」
私は小さくため息をつく。
「そういう時はな、選ばなくてもいいんだぜ」
彼はにっこり笑いながら言う。
「え?選ばないと何も変わらないよ?」
私の声には、どこか諦めが混じっていた。
「進まなくてもいい。たまには、適当に選んでみるのも悪くない」
少年は肩の鳥に話しかけた。
「コロン」
鳥が小さく鳴く。
「これが“適当選びの魔法”さ」
彼はサイコロを私に差し出した。
「これを振って、出た目で選ぶんだ」
サイコロ………そんなので?
私は戸惑いながらも、手を伸ばす。
カランカラン——
手の中のサイコロの音が心地よく響いた。
「…どうしよう」
私の視線は、まだ手の中のサイコロを見つめている。
震える指が、わずかに揺れている。
胸の奥で、ざわざわした不安と期待がせめぎ合う。
「この街の選択肢は多すぎて、ほとんどの人が動けなくなる。でもな、適当に選んでみると、案外その一歩が新しい道を作るんだ。」
少年の声は確信に満ちているのに、
どこか優しくて、私の固くなった心の壁を
そっと押してくれた。
頭の中では、選択の重圧がグルグル渦巻いている。
でも、ふと感じた。
「間違えたらどうしよう」という恐れよりも、少しだけ“試してみたい”気持ちが芽生えていた。
「でも、間違えたらどうするの?」
私の声は震えていた。自分でも驚くほど弱々しい響きだった。
少年は首をかしげ、少し考えるように目を細めた。
そして、静かな微笑みを浮かべる。
「間違いなんて、最初からないんだよ。
どれも道のひとつ。どれを歩んでも、最後には自分の物語になる。」
言葉が、重く、深く、胸に落ちてきた。
目の前の道はまだ霧がかっているようにぼんやりしているけれど、どこか明るさも感じる。
私の唇がわずかにほころび、思わず小さく笑った。
「じゃあ、もう少しだけ、この“魔法”で歩いてみようかな。」
少年は静かにうなずいた。
その目は、どこか遠くを見つめているようで、でも確かに私を見ていた。
「それでいい。歩くうちに、きっと自分の色が見えてくる。」
“コロン……”
鳥が静かに鳴き、風に乗って街のざわめきが遠のいた。
私はゆっくりと一歩を踏み出した。
霧の向こうに続く道は、まだぼんやりとしていて先が見えない。
でも——さっきより少しだけ、空気が軽くなった気がする。
「自分で選んだんじゃないけど……なんだか、選べた気がする。」
ほんのわずかでも進めたことが、今は嬉しかった。
“コロン……”
静かな音が、もう一度背中を押してくれる。
私は歩き出す。
迷いながらも、これが私の“最初の一歩”だった。
【次回予告】
適当に選んだその一歩の先で、
今度は「動けない誰か」と出会う。
選択肢ばかり増えていくこの時代。
やりたいこと、好きなもの、正解探し。
多すぎて、動けなくなること、あるよね。
だけど——
止まったままのその場所にも、大切な“理由”があるのかもしれない。
「迷いの街と適当選びの魔法」
第二話:『動けない少女と、ひとつの選択』
迷うのは、間違ってるからじゃない。
自分の本音を、まだ聞けてないだけ——。
【テーマ】
▶ 選択肢が多すぎて動けなくなる“選択疲れ”
▶ 「どれでもいい」が怖い
▶ でも実は“どれでもいい”の中に自由がある
ここまで読んでいただきありがとうございました⭐︎また次回作もお楽しみに😁✨
本音の隠れ家より
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