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「バリー・シール/アメリカをはめた男」あらすじ解説

2017年の映画です。原題は「American Made」です。これは邦題がマズいですね。アメリカが製造した、なにを?中南米の紛争と麻薬産業を、という意味が原題にはこめられています。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B078GZHL1S/ref=atv_dp_share_cu_r

あらすじ


アメリカの航空会社で働くバリー・シール。

ある日CIAからスカウトされて偵察業務を請け負うようになります。

低空飛行して中南米を撮影です。

パナマのノリエガとも知り合います。

コロンビアの麻薬カルテルの依頼で、アメリカへの麻薬の運び屋もやります。

CIAは黙認です。麻薬取締局(DEA)に逮捕されそうになりますが、CIAに助けてもらいます。

その後ニカラグアに武器を運んだり、ニカラグアの反政府勢力を増強するために兵士をアメリカに連れて来て訓練とかします。要は便利屋です。最後は麻薬取締局とFBIと州警察とATFに逮捕されます。でも州司法長官のところに州知事ビル・クリントンから電話が来て、無罪放免されます。なかなか味わい深いですね。

結局すったもんだで最後はコロンビア麻薬カルテルに暗殺されます。

(あらすじ終わり)

バリー・シールは実在した人物です。

映画主演のトム・クルーズとは少々違い過ぎる気もしますが、

そこはお客に見せるものですから斟酌いただきたい。

彼が麻薬を輸入していたのは事実です。そこにCIAがどこまで関わっていたのかは、明らかにされていません。だからこの映画の内容、ほぼ嘘という可能性もあります。ただし、麻薬取締局はこの件にはCIAが関わっていた、と主張しているようです。
映画としてのスジは、かなり雑です。

割と無責任に作られています。でも今日の状況を感触的に把握するには適しています。CIA職員がなにやってよいのか分からず、単に自分の出世の為だけに動いている感じが大変よく描かれています。

麻薬とマネー

なんでアメリカはこんなに薬漬けになったのでしょう。
過去に大国が薬漬けになったのは、アヘン戦争以降の清国ですね。

イギリスは清朝から茶を大量に輸入していましたが、イギリスから清朝に輸出できるものはありませんでした。となると当時の決済通貨である銀が、イギリスからどんどん減ってゆきます。
清王朝の前の明王朝から、中国人はむやみやたらと銀を溜め込みまして、世界の銀の30%くらいを保持していたと言われています。清王朝でもだいたいそれくらいの比率です。だからインドでアヘンを栽培させて、それを中国に輸入した。それしか自分たちがやってゆく手段がなかった。それでようやく中国から銀を引き出せた。

もちろん国民がアヘン漬けになるのはどの国の政治家だって避けたいですから、中国政府は貿易を禁止する。しかしそれでは株式会社イギリスは倒産するしかありませんから、戦争やって無理やり窓口こじ開ける。当時中国にはCIAは存在していませんから、軍隊が対応するわけですが、敗ける。
かくて中国人民はアヘン漬けになってしまって、ようやくその影響から離脱できるのは文革以降です。有名人では琳彪がアヘン中毒でしたね。そのへんまでは中国はアヘン漬け国家だった。文革の意義については色々言われますが、人間が麻薬を止める時離脱症状が出るように、社会でもそれが出た、中国社会の阿片からの離脱症状が文化大革命だと、私は思っています。

では現在の通貨体制はどうなっているかというと、2025年現在絶賛崩壊中ですが、まだとりあえずはドル基軸、マイケル・ハドソンの言う「アメリカ国債本位制」です。

https://yomitoki2.blogspot.com/2024/08/super-imperialism-economic-strategy-of.html

だいたい19世紀の中国と今日のアメリカがパラレルと理解すればよろしいかと思います。

中国は「文化大革命」という激しい離脱症状を発生させて、アヘン中国から脱出しました。今のトランプの経済政策を「文化大革命」だと悪口言っている人が居ますが、それは一周回って正しい表現です。これでなんとかフェンタニルから脱出したいところですね。無論犠牲は大きいですが、しかし
アヘン戦争1840年
文化大革命1966年
中国が126年かかっているところを、ウクライナ戦争敗北直後に文化大革命を起こすトランプのスピード感覚は、褒められて良いと思います。

プラスとマイナス

第二次世界大戦後はドルが基軸通貨でした。基軸通貨というのは厄介ですね。通貨発行で世界中の物をなんでも買えるかわりに、買ったらマイナスのもの、この場合には麻薬まで買ってしまう。その状況を改善できないまま合成麻薬の時代に突入してしまった。状況は一層悪化して、フィラデルフィア市ケンジントン通りが出現した。

それを世界は見ていたのですね。Youtubeで見れますから。ケンジントンのゾンビの姿が拡散して、結果アメリカは甘く見られ始めたのです。その世界の人々のアメリカへの侮蔑を、ロシア政府は正確に把握出来ていた。だからウクライナ戦争で勝てた。予算がかかってもケンジントン通りの人々を施設に強制収容していれば、まだしも勝ち目はあったと思います。

でも(清王朝がそうであったように)アメリカは思い上がって改善を怠った。こういう内政の下手さが覇権を終わらせるのです。巨大な帝国は内部管理が一番難しいのですね。

昔、日本に後藤新平というすぐれた政治家が居まして、植民地だった台湾に赴任して、阿片中毒対策をしました。非常に上手でした。

1、阿片を専売制にする(つまり代理店登録すれば合法的に阿片を売れる)
2、買う人も登録が必要にする(つまり中毒者も登録さえすれば合法的に阿片を買える)
3、販売量を徐々に減らす

一挙に解決ではなく、段階的に処理していった。トランプ政権に教えてあげたいのですが、担当する優れた政治家と真面目な官僚組織が必要ですから、アメリカでは難しいかもしれません。しかし軍事同盟つづける気なら、日本サイドからアメリカに提言すべき案件ではあります。

あと日本本土については、太宰治の「人間失格」が大きかったですね。

深層では日本と天皇を擁護し原爆投下を非難する内容なのですが、表層的には太宰の自伝でして、描かれている麻薬中毒の様と太宰というキャラを想像した読者は、
「あーこりゃいかん、みじめすぎる、とにかく麻薬だけはやめておこう」となったわけで、大層麻薬抑止効果があったと思っています。

漱石がこんな作品書いたとしたら、知力に自信がある人間は「俺は知的だから漱石のように麻薬をしなければならない」と考えて中毒になる人がむしろ増えたでしょう。芥川が書いたら、美意識が強い人が「俺は麻薬をしなくちゃいかん」と考えて中毒が増えたでしょう。三島が書いたら、愛国心が強い人が「俺は麻薬をしなくちゃいかん」と考えて・・・・

太宰さんはそこのところが偉大ですね。なんちゅうかナチュラルに麻薬への嫌悪感を増大させてくださる。マイナス方向の人格の高さが、麻薬という社会への最大規模のマイナスを抑止する。
私が子どものころ、ACの広告で「覚醒剤やめますか、人間やめますか」というのがありました。

今考えたらこれも「人間失格」の後継作品ですね。あわせて日本政府が通貨発行を怠ってデフレを長引かせて、国民は経済的にはえらい目にあったのですが、おかげで現在フェンタニルも(少し入ってきているようですが)さほど流行していない。不幸中の幸いというやつかもしれません、ということを色々考えさせてくれる映画です。


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