【5】骨のお守りは誰のために

「顔色が悪いぞ? 今日は帰ったらどうだ?」
 研究室に入ってきたコウを見るなり友達が声をかけた。
「だよな」
 コウは大きく肩を落とした。
 今朝起きると息が切れていた。全身汗だくで刺された感覚が身体中に残っていた。傷はない。なのに神経が痛みを覚えている。眠った気がしなかった。しかし、研究は待ってはくれない。とりあえず大学院に来たものの、身体は重く悪寒がしている。
「そうだ。これ、成分分析頼めるか?」
「なんだこれ?」
 友達に白い塊を渡した。
「さあ。わからないから頼む」
 首を傾げながらも友達は快く引き受けてくれた。
「骨だな」
 二時間ほどで戻ってきた。
「骨? なんの?」
 両手の平を上に向けて肩をすくめる友達も不思議がっている。
「形からすると人の手の指って感じだな」
 口にした本人はまさかと言わんばかりに怪疑いの目をコウに向ける。
「いやいやいや俺じゃない」
 首を何度も横に振る。殺人をしたとでも思われただろうか。
「手作りのお守りに入ってたんだ」
「高校の時のマネージャーが作ってくれたっていう、ずっと竹刀袋につけてる年季の入った、あのお守りか?」
 コウは頷いた。
 それでも友達の表情は曇ったままだ。
「人でも動物でも骨をお守りに入れるのは悪趣味だな」
「確かに」
 コウも表情を曇らせた。脳裏にはユウの顔が浮かんでいる。
 もしユウの骨だとしたら。ナナが納骨の時に持ち帰っていたとしたら。それをお守りに入れたとしたら。
どうしてお守りに入れる必要があったのか。
 どんな理由であっても気味が悪い。
 だんだんと気分が悪くなってきた。眩暈がする。
コウは友達に言われた通り早々に帰宅した。

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