【6】骨のお守りは誰のために
繰り返し見る悪夢に疲弊していた。友達だけでなく通行人の誰もが二度見するほど顔色が悪い。日に日に目の下のクマも濃くなっていく。食欲はほとんどない。なんとか口にしているパンも味気ない。実験も失敗が多くなり集中力がなくなっている。苛々することも増えてきた。寝たくても寝られない。またユウに刺される夢を見るだけだから。夜が、眠ることが怖い。
事情を話していない友達も教授も帰って休むように何度も言ってきた。心配してくれているのはわかっている。
今日も朝から大学院へ顔を出していたコウだったが、一時間もしないうちに研究室を追い出された。仕方のないことだ。
「コウくん」
俯き加減で歩いていたコウは名前を呼ばれて顔を上げた。
「ナナ……」
校門の前で待っていたのは長身の女性だった。背筋を伸ばして唇に薄く笑みを乗せている。
「久しぶり。元気にしてた?」
活発だった高校時代とは違い、落ち着いた声音に大人の女性の余裕が見える。
「見ての通りだ。ナナは? 元気にしてた?」
口にしてコウはそんなはずないよなと思った。
「なんとか。今はエステのお店を経営してるんだ」
「すごいな、経営者だなんて」
「小さなお店よ」
微笑んだナナの瞳は優しい中に昏い影が揺らいでいた。
「立ち話もなんだし、場所変えようか」
「ええ」
行き交う人々がひそひそと話している。その視線の先はナナだ。スタイルのいい彼女は目立つ。
ナナも周囲の視線に気づいている。気にしている様子はない。さも当然のことだと言わんばかりに胸を張っている。
対照的にコウは俯いて視線を避けるように歩いた。
