【7】骨のお守りは誰のために

 大学院から十分ほどのところにあるカフェに入る。
「ガクのこと、どうして教えてくれたんだ? 葬儀にいなかったよな?」
 席につくなりコウは口を開いた。
 ナナはアイスコーヒーをひと口飲む。
冬が近づいているとはいえ、昼間は少し汗ばむくらいだ。
「高校の剣道部の先生が教えてくれたの」
 ナナはグラスをぐっと握りしめた。
「ガクくんの親御さんから連絡があったみたいなの。二人にも連絡してほしいって言われたわ。先生も私とは連絡を取りやすかったみたい」
 ガクは時々高校の剣道部に顔を出していたらしい。ナナも専門学生時代に相談があると高校に顔を出していたという。その時、剣道部の先生と話をすることもあったみたいだ。エステ店の経営を始める時も高校の先生の知り合いに口利きをしてもらったんだとか。
「さすがに剣道部の先生から頼まれると断れなかったの。それに、色々あったけどまた話したいなって思ったのよ」
「そっか」
 参列者の中に高校の剣道部の先生もいた。コウは軽く挨拶をしたのを覚えている。背筋を伸ばして赤い目で真っ直ぐとガクの遺影を見ていたのは印象的だった。
「葬儀にいなかったのはなんでだ?」
「行ったわ。でもお店から連絡があって、トラブルでどうしても……」
 ナナは瞼を震わせる。
「そうだったのか」
 コウは夢の中のユウの表情とナナの表情が重なりぞっとした。
「ケンくんも来たでしょう? 連絡してたのよ」
「ああ」
 悲し気な笑顔を見せるナナにコウは少し後ろにのけぞった。彼女は悲しんでなどいない。瞳は昏く闇を抱えている。
 コウはコーヒーと一緒にナナへの嫌悪感を飲みこんだ。

←【6】 【8】→


いいなと思ったら応援しよう!