【2】骨のお守りは誰のために
新しい煙草スティックを電子タバコに入れたケンはスイッチを押した。
「ところで、お前今何してんだ?」
「大学院で研究してる。ケンは?」
「はあ⁉ 知らねぇの⁉」
ケンの大きな声にコウの身体はびくりと跳ねた。
「ゲーム業界では有名だぜ。生み出すキャラクターはどれも人気、キャラデザの川上健って言えば悲鳴があがるぜ」
「そうなのか。悪いな、ゲームしないから」
知らないことを詫びつつコウは式場がざわついたことを思い出す。オーラが出ているのは人気者だからか。参列者の中にはガクの大学時代の友人と思われる人たちもいた。彼らはケンのことを知っていたのだろう。
「真面目だからな、お前は。でもゲームはしなくてもニュースぐらい見るだろう」
「ああ、政治とか株とかなら」
大業にため息をついたケンはタバコを灰皿に捨てた。
「エンタメニュースはニュースのうちに入らないってか」
「そうじゃないけど」
アニメのことは時々大学院でも話題になるので見ている。しかしゲームの話題は出ないので興味もなければニュースを見ることもないのだ。
「まもなく出棺となります」
スタッフが喫煙所近くまで参列者の確認に来てくれた。
「最後に棺にお花を入れていただきます」
式場に戻ると参列者がガクと最後のお別れをしていた。ロビーで泣いていた小学生たちは棺から離れようとしない。ガクの同僚の女性教師が頭を優しく撫でて声をかけている。
小学生の涙に誰もが涙を流し始めた。ガクがどれだけ慕われていたかを物語っている。しかしコウの脳裏に浮かぶのは高校時代のことだ。ガクは当時悪ガキだった。
悲しめない自分は薄情だろうかと思いながらそっと棺に花を入れる。ガクの顔を見たコウは心臓が跳ねた。
手作りのお守りだ。
同じものを持っている。
ナナが夏の最後の大会前にレギュラーメンバーに作ってくれたものだった。
