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教えてください、烏丸先生 #27 カラスと車

教えてください、烏丸先生 #27
最終章・第2話 カラスと車


牛山うしやまさん」

また一台、遠くで車が通り過ぎた。

「ど・こ・に、行ってたの」

鶴田つるた先生の声が、もう一度来た。さっきより近い。

「聞いてる?」

足の裏が地面を探す。

烏丸からすま先生を探してたんでしょ」

私は答えられなかった。

「なんで」

鶴田先生が一歩近づいた。一歩下がって距離をとる。
街灯の光が、鶴田先生の顔の半分を照らしている。

「なんで、烏丸先生を探すんだ」

静かな声だった。怒鳴るより、静かな声のほうが怖かった。

「俺がこんなに」

言いかけて、言葉が途切れた。
鶴田先生がまた一歩近づいてくる。

「鶴田先生」

一歩下がる前に、声が出た。

「なぜ、鶴田先生がここにいるんですか」

それに。

「烏丸先生のこと、何か知ってるんですか」

鶴田先生の表情が、一瞬止まった。

「それは――」
「知ってるんですね」

言葉を被せると、間があいた。遠くで横断歩道の音が聞こえる。

「いなくなった男のことを考えても仕方ないだろ」
「答えに、なっていません」

鶴田先生の目の奥が変わった。

「牛山さんは、烏丸先生に洗脳されてるんだよ」
「なにを言って――」
「だから俺、牛山さんが洗脳から解けるように頑張ったんだ」
「頑張った、って」


「カラスだって、死んでただろ」


まさか。

家の前の黒い影がフラッシュバックする。


偶然でも事故でもなかった。
鶴田先生が、あそこに置いたのだ。

たぶん、カラスを殺して。

「そんな」

背中をつたう汗が、風で冷たくなっていく。
膝に力が入らない。

「それに、あいつがいなくなったのは――」


ふいに、エンジン音が耳をかすめた。
低く、くぐもった音。聞き覚えがあった。

振り返ると、黒いセダンが駅前広場の端に止まっていた。

ドアが開く。

ワイシャツの一番上のボタンはあいたままの、いつもの姿だった。

鶴田先生を一度だけ見て、それから私を見た。
鶴田先生のほうではなく、私のほうへ向かってくる。


「牛山さん」


職員室で何度も聞いた、低い声だった。



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