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AIが「書く」仕事に革命を起こしている件

今回は資料を「AIで書く」という新しい取り組みをしてみようと思うんだ!

きっとみんなの生産性が上がるから!

2024年のはじめのこと。PM(プロダクト・マネージャー)を束ねるお偉いさんのひとりだったショウガさん (もちろん仮名…いつも野菜の名前を使ってます) はそう豪語した。ジェルで整えたシルバーの髪とブルーのジャケットがきらりと光る。年齢は40代前半ぐらいだろうか。ハリウッドの俳優にいてもおかしくないほど見てくれは申し分なく格好良い。ミドル・エイジのアメリカ人男性。

ショウガさんは四半期に一度みんなでまとめている資料について「作り方を一新したい」と提案した。この資料には我々のプロダクト(セールに関する機能)に関する売上や直近の機能追加などについてたくさんの文章を書き込まないといけない。もちろん英語で。

提案された新しいやり方は「AIをフル活用すること」。

これまではぼくら一人ひとりが一から英語で文章を書き、それをマネージャー陣が何度も何度も(少なくとも5, 6回)書き直すというのが常だった。これはとんでもなく骨の折れる作業なのだ。

AIをフル活用するとはどういうことか。これはつまりぼくらは「指示を出すこと」にフォーカスして「書く」という作業はぜんぶ社内用のAIにやってもらうということを意味した。AIに一から文章を書いてもらうことはもちろん「ここはもっとこういう風に書いて!」と指示を出すことでどんどん加筆・修正していく。 

上手くいくのかな⋯?

同僚のキャベツさん(仮名)が隣で不安そうにそう漏らしたのを今でもよく覚えている。PMのみんなはAIを初めて活用することに半信半疑の表情を浮かべていた。

とはいえ「生産性を上げよう!」というスローガンにはみんな大賛成だった。「よっしゃ、やってやろうじゃないか!」と最終的にはみんな納得してトライしてみることになった。ショウガさんはにんまりとスマイルを浮かべていた。


その結果どうなったか?


AIなんかもう使いたくない!!!



間もなくPMは怒り狂ってショウガさんの元へと駆けつけた。なんならぼくもそのひとりだった。

AIの回答はとんでもなくひどい品質だった。まず明らかに趣旨を理解してなくて、とんちんかんな内容に書き換えてしまう。社内の特定のシステム・ツールについて説明したいのに下手に内容を"一般化"してしまい「ふわっとした」文章にしてしまったりもする。これではなんのことについて話しているか不明確だ。

AIを使って期待したのは次の2点だった。
・書くことを自動化して作業時間が減る
・文章のクオリティが上がる

でもAIを実際に使った結果は以下の通りだった。
・(あまりにアウトプットの品質がわるいので)書き直しが増えて作業時間が増えた
・文章のクオリティは下がった

これじゃ間に合わない!ということで途中からAIは置き去りになり、結局のところ「いつも通りのやり方」に戻った。

それからなんとかして資料は完成をして事なきを得た。

「ふぅー」と息をついたところであることに気付いた。

ショウガさんの姿はもうオフィスにいなかった。このAIの件がどう関係していたかは分からない。けれどAIを上手く活用しないぼくらに落胆したか、もしくはAIの性能自体にがっかりしたか。そのどちらか(もしくは両方)に当てはまったのでは?とぼくは見ている。

いずれにしろはっきりしたことがある。"その時点では"社内のAIツールはぜんぜん使い物にならなかった、ということだ。それが2024年初頭のステータスだった。

CEOの一言ですべてが変わる

完全にゲームが変わったのは今年6月のこと。

ぼくらは日中あくせくとオフィスで仕事をしていた。するとその電撃ニュースは社内を駆け巡った。

ぼくらが働く米ビッグテックの一角。そのCEOが社員向けにメモを発表した。長文で書かれたメモだったが、読み進めていくと最後の方にこんなことが書かれていた。

「AIの影響で社員の数が減るかもしれない」
・「生産性を上げるためにAIをどんどん活用しようね

これを読んだ社員が「マジやべぇー!!!」と心の中で絶叫したのは想像に難くない(笑)。「AIでいずれ人を減らす必要が来るかもしれない」と社長自らが口にするのはショッキングだった。実際にぼくのデスク周りでもこのメモについてみんなが「読んだ?」と言い合っていた。

このメモは会社全体に響いた。少なくともぼくらの開発チームは「AIに仕事を奪われないためにも、AIをフル活用して生産性を爆上げしないといけない」と強く認識するきっかけになった。

AIが「書く」ことに起こした革命

そうしてぼくらは重い腰をあげた。去年の苦い思い出があり「AIが本当に業務効率の改善に役に立つか?」については不安しかなかった。とはいえ社長からハッパをかけられたこともあってもう一度トライしようということになった。試験的に社内で用意されたAIのツールを使ってみることにした。

ぼくらの仕事は書く、書く、書く。セールに関する機能を企画・開発する仕事は「書く」というプロセスから始まる。

PM(プロダクト・マネージャー)には「どんな機能を開発してお客さんのどんな問題を解決したいか?」について考えを巡らせて資料にまとめることが求められる。その資料をエンジニアやお偉いさんとレビューをして方針を決めていくのだ。

どんどん書くことで思考を深め、その企画書をみんなで何度も議論をして、書き直して、またレビューをする。これを繰り返す。これによりチームとして最高の意思決定をし「本当にやるべきこと」に全集中する。そんなこんなについては以下の記事に書いた。

で、ちょうど「来年どんなプロダクトを作るか?」についてPM全員が企画書にまとめるというプロジェクトがあった。じゃあ「いい機会だ」ということでAIを使って来季のプランを資料に書き上げることになった。

ぼくらはバージョンアップされた社内のAIツールを使うことにした。いわゆるChat GPTのような生成AI機能だ。やることは至ってシンプルで以下の通り。

  • 1)盛り込むべき内容を箇条書きにしてまとめる

  • 2)AIに「こんな感じで文章を書いて」と指示を出す

  • 3)出来上がった文章を読んで適宜修正する

これが衝撃のクオリティーなのだ。盛り込みたいポイントを箇条書きでAIに渡して文章を作成してもらう。するとほぼ完璧な文章がほんの数秒で出来上がる。社内の優れた文章をたくさん学習したのだろう。AIが作った文章は簡潔で要旨が明確なものに仕上がって出てくる。

なんだこのクオリティーの高さ!!!

PM一同このAIの劇的な成長に感動していた。でもぼくがことさらびっくりしたのは英語がネイティブのアメリカ人もAIを毎日使うようになったということだ。彼らから見てもクリアで分かりやすい英語の文章に仕上がっているらしい。これはたかだか1年前にはありえなかったことだ。

かくしてぼくら7人のPM全員がそれぞれ6枚に渡る企画資料を1週間で書き切った。通常なら1カ月は少なくともかかるところが劇的に時間は短縮された。

もちろんAIが意味を取り違えた部分は書き直すことになるし、最終的なアウトプットはぼくらそれぞれが責任を持って確認・修正しないといけない。だから全部が自動化されるというわけではない。ただそれでも「書く」というぼくらにとって最も大事な作業が劇的に効率化され、英語の非ネイティブとネイティブの差をほぼなくしたという事実は革命的だ

ぼくはその昔以下の記事で「アメリカで働く上でどの程度の英語力が必要か?」ということについてまとめた。その結論として、「書く」と「読む」はネイティブと匹敵するレベルが必要なんじゃないかと説いた。この点について言えばAIは「英語で書く」という悩みの種をほぼ解消してしまった。これは本当にすごいことだよなと思う。ぼくはアメリカに来るまで何年にも渡って「英語で書く」訓練をしてきたわけだけど、もはやこれから先の未来では同じような勉強が必要かはちょっと分からない。

「AIの自動化」でなにが変わる?

ここで考えたいのは「仕事への影響」と「英語学習への影響」だ。

まず仕事について。やっぱり「深く広く考えられる力」はそれでも求められるという話。結局「そもそもなにがしたいか?」を考えてAIに指示を出すかは人間の仕事だから、自分に考えがないと始まらない。「自分の考えを持っている」という人はますますAIに仕事を渡してアウトプットを作るわけだから強いよなと思う。論理的思考力はいつの時代も中心になる仕事のスキルだと頷かされる。

戦略的思考ができる人はAIを使ってどんどん優れた成果物が出せるわけだ。これは「頭のいい人がばんばん成果を出す時代」をさらに加速させるんじゃないか

そしてこれからの英語学習についても考えを巡らしたい。

「書く」はAIが最も得意なところだし今後さらに質・量ともに進化していくだろう。だからネイティブの人が書けるような英語をぼくらが書ける必要は必ずしもないんじゃないかなと思う。

一方でスピーキング(話す力)とヒアリング(聴く力)で差はつく。ここは仕事の現場ではまだまだAIが貢献できるエリアが少ないなと切に感じている。その証拠にAIで書いた文章自体はネイティブも目を見張るような高いクオリティーなのに、実際に会議が始まると「あちゃーーー」みたいな微妙な英語を話してしまう人を最近よく見る(笑)。こうなると露骨にAIに頼って文章を書いてることが丸わかりなので「この人は英語がちゃんと使える」と認められることは難しくなってしまうかもしれない。AIの実力がまだ限定的なスピーキングとヒアリングはちゃんと勉強して、英語を書く作業はどんどんAIに頼っても良いのではと思う。

ちなみにAIが英語を「聴く」「話す」もやってくれる未来がすぐ来るよ!と主張する方もいるに違いない。でもぼくは少なくとも仕事の現場では英語を「聴く」「話す」をAIにやってもらうハードルは極めて高いと見ている。

ネイティブの英語を瞬時に聞き取って理解し、それをスムーズな英語で発言するということが実際のミーティングでは求められる。こういうタイムリーな自動翻訳を実現する技術はまだない。

たとえばイーロン・マスクが作ったニューラリンクという会社が提供しているような「脳にチップを埋め込んでインターネットやAIと繋ぐ」というサービスを利用すれば変わるかもしれない。英語を瞬時に聞き取って、考えたことをネイティブレベルの英語に変換してあとはしゃべるだけみたいなことも出来るんじゃないか。

ただこういった、いわゆる「ブレイン・インターネット・フェース」の技術が世の中に浸透するまでにはまだまだ時間がかかるだろう。そもそも多くの人が自分の脳にチップを入れたいかは謎だし。

代わりにあるとしたら生成AIのChat GPTを手かがけるOpen AI社が開発しているという「未来のデバイス」が突破口を開くかもしれない。元Appleの伝説的デザイナーでありiPhoneのデザインをしたジョニー・アイブさんが深く関わっているという理由から期待大だ。そんなこんなについては以下の記事に書いた。

きっとその「未来のデバイス」は人間がタイピングして操作するというよりは、話しかけて言葉でコントロールするんじゃないかと思う(そう予測する報道は多く出ている)。おそらくブレスレットやネックレスのようなデバイスになると見ているのだけど果たしてどうなるだろうか。はたまた肩の上にピコっと乗せるデバイスになるなんてパターンもあるかもしれない。

でもだ。

普通に英語を使って仕事をしている人が見たら「うわっ、あの人AI使って英語しゃべってる⋯ダサいな」って思うと思うんだよな。ぼくが毎日参加しているアメリカでのミーティングを想像するとそんな「決して立派だとは言えない」姿が思い浮かぶ。AIを介して話すとなると生身の人間と言葉のやりとりをしている感覚は希薄になるはずだ(それはまるでロボットと話しているような気分になるかもしれない)。そうすると仕事の仲間としてどこまで信頼していいかもちょっと疑わしくなる。

であれば、仕事で英語を使う限りにおいては、英語で「聴く」「話す」は十分に出来たほうがいいんじゃないか?

AIの進化は立派だ。けれどAIが追いつくのに時間がかかりそうな分野はやっぱりある。こういうAIが苦手な「美味しいエリア」を見つけて地味にしっかり勉強していくということが今後のキャリアを占うんじゃないか。そんな話でした。



学生時代に何度も行った吉村家

今日はそんなところですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。

一時帰国で訪れた横浜で。家系ラーメンを食べながら。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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福原たまねぎ きっとおもしろいこと書きますので!

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