アメリカは「超学歴社会」なのか? -世界トップの同僚から学んだこと-
なんとなくアメリカに来るまではこんなイメージがあった。
アメリカは「超学歴社会」で、学歴に基づく階級社会が形成されている。
そういう想像をしていたのはきっとメディアから得た情報によるところも大きいだろう。たとえば古い記事ではあるけれど、まさにそのまんまな内容の記事もあった。
イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのように大学を中退してとんでもない成功を収める人がいる一方で、そういった天才はあくまで例外だということもそれとなく知っている。普通に社会で成功しているアメリカ人は大体「すごい大学」を卒業してエリート街道を歩んできたのだろう。そんな雑感を日本にいる人は共有しているんじゃないだろうか。そして間違いなくぼくもそうだった。
だから3年前にぼくがビッグテックの米国本社で働くとなった時も「きっと同僚はアメリカの一流大学を卒業したエリートばっかりなんだろうな」と思っていた。
アメリカのトップ校というとどんな大学だろう?
いわゆるアイビー・リーグが真っ先に頭に浮かぶ 。ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学というアメリカ東部にある8つの難関大学だ。それに加えて有名どころだとスタンフォード大学とかMIT (マサチューセッツ工科大学) とかだろうか。あんまり詳しくないけれどアメリカの著名な成功者は大体こういう有名大学を卒業(もしくは中退)しているというイメージがある。
ただ、いざアメリカの職場で働き始めるとそれまでのバックグラウンドなどはなにも関係ないことが分かった。どんな学歴だろうが、職歴だろうがどうでもいい。成果を出していれば性別も国籍もこれまでの経歴も何も関係ないという実力社会がそこには築かれていた。
スタンフォード大学やハーバード大学卒は意外といない?
そうは言っても一緒に働く時間が長くなっていくと自然と同僚とも雑談をする機会が増えてくる。その中にはこれまでのバックグラウンドに関する話もある。
ぼくらはセール機能を開発するチームで働いている。ぼくらが開発・管理しているプロダクトは世界中でとんでもない売上を出すマシンなので、それを支える人材も超一流ばかりだ。少なくとも実力だけ見れば「世界一流の人材」が切磋琢磨していると言える。
ただそんな同僚の経歴の話を聞いているとちょっと意外なことに気づいた。それはいわゆるエリート大学を卒業している人は思ったよりも少ないということだ。
ざっとぼくがこれまで一緒に働いてきた一流のPM (プロダクト・マネージャー) やエンジニアの卒業大学を並べてみる。Linkedinで調べればすぐ分かるので検索してみた。こんな感じ。
・アイダホ大学 (University of Idaho)
・セントラル・ワシントン大学 (Central Washington University)
・ワシントン大学 (University of Washington)
・オレゴン大学 (University of Oregon)
・マイアミ大学 (Miami University)
・イェール大学 (Yale University)
・イリノイ州立大学 (Illinois State University)
・アリゾナ州立大学 (Arizona State University)
名門大学と呼ばれるアイビーリーグの大学を卒業したのはぼくのマネージャーのモニカだけだった(イェール大学)。それ以外は地元の大学を出ている人が多かった。
たとえばシアトルの近くにあるワシントン大学やオレゴン大学は納得だ。「近い大学に行きやすい」のはなんとなく理解できる。それ以外はみんな生まれ育った故郷の近くの大学を卒業しているケースが多かった。意外とスタンフォード大学とかハーバード大学とかの名門校を卒業している人は少なかった。
この「地元で済ませてしまう」という考え方は意外なようで実はアメリカ人に結構共通している気もする。以前「サンフランシスコに行ったことのないアメリカ人がたくさんいる」と書いたけれどまさにそんな話で、必要がなければ地元で用を済ますという考えがあるように思う。わざわざニューヨークやロサンゼルスのような都市に出て暮らす人はアメリカ人の中でも意外とマイノリティーなんじゃないだろうか。
ちなみにその昔「Googleのリクルーターは有名大学卒業者よりも州立大学をトップの成績で卒業した人を高く評価して採用するケースがある」という話を聞いたことがある。本当かどうかは分からないけれど、これはちょっと分かる気がする。ネームバリューを気にする人よりも、自分の足場で堅実に成果を出す人の方が仕事では信頼ができるという考えも理解できるからだ。
もちろんこれはぼくが働いてきた人というとても小さいサンプルだ。だからこれを持って「こういう傾向です」と断定することはできないことは理解している。例えばこれはテクノロジー業界だからというような話も成り立つ。ただ「されど1サンプル」ということでご理解いただきたい。
最初から大企業に入るのはムズイ?
同僚のバックグラウンドで言うとさらに興味深い点がある。
それは「ほぼ全員が中途入社」ということだ。一人の例外を除けば、みんな色々な会社を経てから20代後半〜30代で入社していた。
もっとおもしろいなと思ったのはほとんどの優秀なPM・エンジニアが「誰も知らない会社をたくさん経ている」ということだ。大学を卒業後にまず小さな会社で働き始める。それから1~2年ごとにチャンスがあればその都度どんどん転職していくのだ。ちょっとでも高いポジションや待遇がもらえると分かれば容赦なく会社を渡り歩く。30歳までに3~5社ぐらい転職しているのはザラだった。
日本の新卒一括採用と大きく異なることは言うまでもない。ただそれ以上に大事なのは「自分でキャリアを築いている」という点だ。アメリカ人は「たかが仕事」と割り切っているようなクールな姿勢が認められる一方で(以下の記事でたっぷり書きました)、キャリア構築に関しては真剣そのものだし、本当にみんな「成り上がる」ことを夢見て頑張ってるんだなと感心する。
鍵を握る2つのポイント
アメリカでキャリアを構築していく上で2つの大事なポイントがあるように思う。これも優秀な同僚との会話から学んだことだ。
1つ目は「着実に実績を積み、それをアピールすること」だ。
彼らは「その仕事は成果につながるか?」という点をすごく気にしているように見える。その証拠に「このプロジェクトは履歴書の〜番目に載せられるかもな」とボソッとつぶやいている姿を何度か見てきた。あまりに経歴ばかりを重視している人は "Resume Builder" (履歴書にすごい経歴を書くことばかりに執着している人) として揶揄されることもあるけれど、どんな人も「その仕事が後で振り返った時にアピール材料になるか?」を見極めてから取り組んでいるように思う。
逆に言えば「この仕事あんまり実績に繋がらないな」と見極めたらマネージャーに「もっとインパクトの大きいプロジェクトないの?」と交渉したりする。そうやって実際に担当プロジェクトを変えてもらっている現場を幾度となく目撃してきた。
そして実際にそういうプロジェクトで実績を出してから、それをどんどん採用者にアピールしていく。そうやって転職を繰り返していく。アグレッシブ極まりない。
2つ目は「ネットワーク構築力」だ。
「アメリカでは人脈の価値は凄まじいな」と最近つくづく思う。というのも新しいポジションに就いたり、新しい会社・チームに異動したりするときにはみんな「人脈」を使いまくっているのだ。誰も知らない職場に行くよりは「自分を評価している人」もしくは「一緒に働きやすい人」からの誘いで移るケースが圧倒的に多い。この方がリスクも低いし、新しい仕事で評価される確度も高いだろうから納得だ。
優秀な同僚は転職しまくってきたと書いたけれど「人脈は大事だったよ」とみんな口を揃えて言う。日本でも人脈は当然大事だとは思うけれど、きっとここまで自分のキャリアを左右するわけではないはずだ。
ちなみに以前ワシントン大学MBAのメンター(キャリア・アドバイザー)をやることにしたという話を書いたけれども、これもぼくなりの「人脈構築」だ。学生の就職支援をしたいのがもちろん根底にあるけれど、同僚からの影響で「社外のネットワークも広げなきゃな」という考えを持つに至った。なんだか良くも悪くもぼくは段々と「アメリカ人になっている」気がする。気のせいかもだけど。
結局大事なのは「実力」?
アメリカは「超学歴社会」なのか?専門家ではないのでバシッとした答えは言えない。けれども実際にアメリカ人のすごいやつと仕事をしてきた経験から言えるのはやっぱり「学歴は一要素にしか過ぎないのではないか」ということだ。
これを言ってしまうと元も子もない気がするけれど結局は「実力」が大事なのではないか?
ここでいう「実力」には様々なものが含まれている。価値のあるプロジェクトを見極める力、仕事で着実に成果を出せる力、その成果を的確に魅力的にアピールする力、採用を突破する面接力。加えて学歴に代表されるような学力も、そしてチャンスを広げるような人脈を構築できる力も当然「実力」のうちだ。
昔の記事にも書いたけれど「優秀」という言葉はしっくりこない。そうではなく、どんな特技でもコネでもいいから総合的な意味で「実力がある」という人が最後に勝つんじゃないかと思う。
そう、だから「実力社会」なんだよなと思う。もちろんアメリカだけの話ではないだろけれど、より露骨な「勝負の世界」というものがこの国には広がっているように思う。良くも悪くもだ。そんな話でした。

今日はそんなところですね。ここまで読んでくださりありがとうございました。
土曜日の昼下がりに。地元のカフェで。
それではどうも。お疲れたまねぎでした!
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きっとおもしろいこと書きますので!