LATIN MAFIA、SUMMER SONIC 2026直前予習──今年のライブから予想するセットリスト。「ラテンだから」で見逃すにはもったいない、R&B、インディー、エレクトロニック、ダンスまで横断する3兄弟が8月15日BEACH STAGE、19:00に登場
サマソニ予習──直近セットから何を聴いておく?
LATIN MAFIAのサマソニ予習は少し難しい。
サマソニ前には6月27日のMichelada Fest Chicagoにも出演しているが、現時点では信頼できる完全なセットリストを確認できなかった。
なので直近の記録である2026年1月18日マイアミ公演(65分、13曲)では、「Siento que merezco más」「Continuo Atardecer」「Julietota」といった代表曲に加え、AKRIILAとの「Mal comunicada」、Rauw Alejandroとの「2:12 AM」、Yandelとの「Cómo Es Que Se Hace」など、他アーティストとのコラボ曲を共演相手なしでも普通に演奏していた。
これがサマソニ予習を考えるうえでのベースになる。
注目すべきは後半の構成だ。「Me estoy cayendo」→「pero me estoy acabando」→「Qué vamos a hacer?」と、アルバム『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA』の楽曲を連続して展開している。
ヒット曲を並べるのではなく、アルバムの世界観をまとまった流れで見せる作りになっている。だからサマソニに向けて最優先で聴いておきたいのは、やはりこのアルバム「Siento que merezco más」を筆頭に、「Me estoy cayendo」「pero me estoy acabando」「Qué vamos a hacer?」あたりは押さえておきたい。そこに定番の「Continuo Atardecer」「Julietota」を加えれば、ライブの中心部分はかなりカバーできる。
あとは1月から現在までの約7か月で増えたレパートリーだ。Álvaro Díazと「MALASNOTICIAS.」、
そして直前に完成したFred again..との共同プロジェクト『9 months and 50 hours』
この新作群がどこまでセットに反映されるかは未知数。1月の時点で過去のコラボ曲を複数披露していたことを考えると、サマソニでは過去コラボをそのまま残すというより、2026年の新しいコラボ曲へ一部を入れ替えてくる可能性がある。
特にFred again..作品はリリース直後というタイミングを考えれば、2〜3曲程度が新たに加わってもおかしくない。ただしライブでの披露実績がまだないため、これは予想の域を出ない。
余裕があれば、この2026年組——「MALASNOTICIAS.」「Cómo Es Que Se Hace」、そして『9 months and 50 hours』から数曲を追加で予習しておくのが効率的だ。
要するに今回は、「最新シングルを追えばOK」ではなく、『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA』を軸に、2026年のコラボを上乗せするのが正解に近そうだ。
1月のセットでアルバム曲がライブの骨格を担っていたことを踏まえれば、Fred again..との新作が出たからといって旧アルバム曲が一気に消えるとは考えにくい。むしろアルバム曲を土台として残しつつ、過去コラボ枠を最新コラボへ更新するという予想が、今のところ一番しっくりくる。
「ラテンだから」で見逃すのはもったいない
今回のSUMMER SONICで個人的にぜひ注目してほしいのがLATIN MAFIAだ。
今年はライブ本数自体そこまで多くない一方、ラテン圏ではすでに高い評価を獲得し、Rauw Alejandro、Yandel、Álvaro Díaz、AKRIILA、そして直近ではFred again..と、ジャンルを越えたコラボレーションを次々と実現している。そんな彼らを今のタイミングで日本で観られる機会はかなり貴重だと思う。
そして「ラテン・ミュージックだから普段は聴かない」と素通りしてしまうのは、LATIN MAFIAに関しては本当にもったいない。レゲトンやラテン・ポップだけではなく、R&B、インディー/オルタナティブ、エレクトロニック、ダンス・ミュージックまで様々な要素が混ざっていて、普段ラテンを聴かない人にも十分リーチできる音楽だ。
日本ではまだ広く知られている存在とは言いにくいが、だからこそ今観ておきたい。数年後に「あのときサマソニで観ておいてよかった」と思えるアーティストの一組になる可能性もある。
ちなみに僕が行くのはサマソニ大阪なので、LATIN MAFIAを観られないのが本当に残念。東京に行く人には、ぜひ8月15日のBEACH STAGEで体験してほしい。
さらに予習するなら──Rolling Stone Japan掲載インタビュー
8月6日にはRolling Stone Japanに「LATIN MAFIAインタビュー ラテンポップ新世代を象徴する3兄弟、頂点のその先へ」が掲載された。デビューアルバム『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA』の成功を経た3兄弟の現在地や、その先に何を見ているのかを掘り下げた内容で、サマソニ前に彼らの人柄や音楽に対する考え方まで知っておきたい人にはおすすめの一本。楽曲だけでは見えてこないLATIN MAFIAの背景を知ってから8月15日のBEACH STAGEを見ると、ライブの印象もまた変わってきそうだ。
Fred again.. × LATIN MAFIA
『9 months & 50 hours』
2026/08/01
約9か月に及ぶ共同制作と、メキシコシティで50時間にわたって世界へ公開されたミックステープ制作ライブ配信。そのすべてを一つの作品として閉じ込めたのが、『9 months & 50 hours』だ。
タイトルの「50 hours」は、メキシコシティで行われた公開制作の最終セッションを示すものだろう。一方の「9 months」は、長年にわたる交流のうち、このミックステープを具体的な一作品として組み立てていった期間を指していると考えられる。ただし、両者はそれ以前から約2年間、断続的に楽曲のアイデアを作り続けていた。
このプロジェクトは、Fred again..とLATIN MAFIAが数年にわたり断続的に続けてきた共同制作から生まれた。Fredは「彼らは今、世界で僕が一番好きな音楽を作っている」と語り、「作った曲が自然と一つの世界になったから、一つのプロジェクトとして発表したかった」と説明。一方のLATIN MAFIAも、「同じ空間で制作していると昔から友達だったように感じる」と振り返り、互いの価値観や音楽性が自然に重なったことを明かしている。これはフィーチャリングではなく、まさに共同制作だからこそ生まれた作品と言える。
その象徴となったのが、巨大な布のインスタレーションの下で制作途中の楽曲をワンテイクで演奏した約35分の映像作品『under the fabric』だ。
サウンドはレゲトンを軸にした作品ではなく、アンビエント、UKガラージ、フォークトロニカ、インディーR&B、オルタナティブ・ポップが溶け合う静かで親密な世界。Fred again..、Bon Iver、James Blake、そしてBrian Enoは参加もしている、らを思わせる質感と、LATIN MAFIAの繊細なメロディーが自然に混ざり合い、彼らの作品の中でも最も穏やかで実験的な一枚に仕上がっている。
序盤を飾る「Hey Hey」は制作配信でも何度も流れたアルバムの入口となる楽曲。「Alvafro」はLATIN MAFIAらしいボーカルとUK的なビートが印象的で、「Bonita」は最もポップでライブ映えしそうな一曲。そしてチェリスト/シンガーのMabe Frattiが参加した「Mabe」は幻想的なチェロの響きが作品全体に深い余韻を与えている。さらにTrack 9ではFour Tetも参加し、Fred again..らしいエレクトロニックな世界観をより強く押し広げている。
リリース直後ながら海外ではすでに、「同じ部屋で彼らの制作を見ているようだ」「これはアルバムではなく体験だ」「ライブ配信を見たあとでは曲の聴こえ方が変わる」といった反応が多く、制作配信を含めて作品として評価する声が目立っている。
under the fabric 「新曲」ではなく、「制作している時間そのもの」を作品として公開する。
Fred again..とメキシコの3兄弟ユニット、LATIN MAFIAが公開した約35分の映像作品『under the fabric (Mexico City, 11th December 2025)』は、まさにそんな新しい音楽の届け方を提示した一本だ。
「under the fabric」とは?
この映像は、2025年12月11日、Fred again..のUSB002ツアー・メキシコシティ最終公演前夜に撮影された。会場には誰もいない。
巨大な布(fabric)のインスタレーションの下に機材を並べ、その週ずっと制作していた新曲のアイデアを、一発録り(one take)で演奏している。
完成曲ではなく、スタジオライブ、ドキュメンタリー制作日記、この3つが混ざり合ったような作品になっている。
映像空間を手掛けたのは、オランダのビジュアルアーティストBoris Acket。巨大な布がゆっくりと呼吸するように揺れる幻想的な空間が、Fred again..とLATIN MAFIAの繊細なサウンドをより際立たせている。
今回印象的だったのは、Fred again..がLATIN MAFIAを単なる「ラテンのゲストアーティスト」として迎えていないことだ。
「今、世界で最も好きな音楽を作っているアーティストの一組」とまで言い切り、約2年間にわたって共同制作を続けてきたという事実は、それだけ深い信頼を寄せている証拠だろう。
音楽的にも、Fred again..のアンビエントやUKガラージ、エレクトロニックな質感と、LATIN MAFIAのR&B、ラテンポップ、オルタナティブな感性は驚くほど自然に溶け合っている。
そして何より興味深いのは、「作品」だけでなく「作品が生まれる瞬間」まで公開してしまうという発想だ。制作中の空気、偶然生まれたフレーズ、試行錯誤までも含めて一つの作品として届ける。この姿勢は、音楽の完成形だけでなく、そのプロセスにも価値があることを示している。
「under the fabric」は終着点ではなく始まり。ここから完成するミックステープがどんな作品になるのか、そしてこの共同プロジェクトがFred again..とLATIN MAFIA双方のキャリアにどんな新しい景色をもたらすのか、今後も目が離せない。
そしてプロジェクトは現在進行形へ
「under the fabric」の最後には、2026年7月28日という日付がさりげなく映し出されていた。
その翌日、Fred again..とLATIN MAFIAはメキシコシティのスタジオに集まり、ミックステープ制作のライブ配信を開始。
「完成するまで配信を止めない」という形で、制作の過程そのものを世界へ公開している。
つまり今回の映像は、完成作品ではなく、これから始まるプロジェクトの序章だったのだ。
『9 months & 50 hours』は「コラボアルバム」という言葉だけでは表現しきれない。完成した音楽だけでなく、その背景にある共同生活や試行錯誤、制作配信までを一つの作品として提示した、新しい形の音楽ドキュメントだ。Fred again..の「日常を音楽にする」という美学と、LATIN MAFIAの親密で感情的なソングライティングが重なったからこそ実現した作品であり、収録曲だけでなく「どうやって生まれたのか」を知ってから聴くことで、その魅力はさらに深く伝わってくる。そして、この作品を携えて8月15日のSUMMER SONIC東京・BEACH STAGEでどんなライブを見せてくれるのか、今から楽しみでならない。
Latin Mafia、狂騒の先に見つけた「不完全さ」の美学
今回ご紹介するのは、メキシコが生んだ新世代の3人兄弟ユニット、Latin Mafia(ラティン・マフィア)が、スペイン語圏の権威ある音楽誌 『ROLLING STONE en Español』 の表紙を飾った際(2026年5月公開)の独占ロングインタビューです。
AI日本語訳/要約
【Latin Mafia:成功の本質は音楽を生き、感じることにある】
熱狂的なデビュー、大規模なツアー、そしてスペイン語圏の音楽シーンの頂点への急浮上。そんな激動の時期を経て、ミルトン、エミリオ、マイクの3兄弟は今、立ち止まり、「自分たちにとって何が重要か」を再考する休息の時間を過ごしています。
1. 兄弟の絆と「フィルターのない」制作現場
彼らの強みの源泉は、幼少期から3段ベッドで寝食を共にしてきた圧倒的な近さにあります。
• 日常の延長にある成功: 初の12,000人規模のライブを終えた後も、彼らは実家に帰り、両親の家で眠りました。彼らにとって、スターであることと日常の自分たちの間に境界線はありません。
• 絶対的な信頼: 兄弟だからこそ、音楽制作において「それはダサい」「やり直しだ」と、遠慮やフィルターを一切排除した本音の議論(メキシコのスラングで “al chile”)ができることが、プロジェクトの成功の鍵となっています。
2. 「自分を優れた存在にする」という哲学
彼らは自分たちが最初から完璧な才能を持っていたとは考えていません。
• 習得のプロセス: ミルトンは、タイラー・ザ・クリエイターの言葉を引用し、「自分は特定の何かに長けているわけではないが、『自分を優れた状態にする(習得する)』ことにかけては天才的だ」と語ります。
• 失敗への耐性: マイクのプロデュース能力やエミリオの審美眼を信頼しつつ、「100万回失敗してもいい、できるようになるまでやるだけだ」という執念と反復を重視しています。
3. TikTokからの脱却とアーティストへの進化
彼らはTikTokで注目を集めましたが、単なる「コンテンツクリエイター」で終わるつもりはありませんでした。
• 戦略的な移行: 適切なタイミングでTikTok特有のコンテンツスタイルから距離を置き、純粋な「ミュージシャン」としてのアイデンティティを確立しました。
• 「1001曲目」を出す: 数多くのデモを作り、自分たちが納得できる「1001番目の曲」だけを世に出すというストイックな姿勢が、バイラルな流行を真の音楽的評価へと変えました。
4. デビュー作『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍAS』の真意
ヒット曲「Julietota」のような分かりやすい成功法則を繰り返すのではなく、彼らは「感じる(sentir)」ことを核にした実験的なアルバムを選びました。
• 繊細さと感受性: 彼らは自分たちを非常に感受性が強い人間だと定義し、その過剰なまでの感情の揺れをサウンドに投影しました。
• 深みのあるリスニング: 表面的なキャッチーさよりも、没入感や大気感(アトモスフェリック)を重視したこのアルバムは、ファンにとっての「隠れ家」のような存在となりました。
5. 2026年の現在:メンタルヘルスと「不快」の中にある進化
2025年の狂騒を経て、2026年の彼らはメンタルヘルスの不調という困難に直面していることを率直に明かしています。
• 成功の中の孤独: 世界中を旅し、憧れのアーティストと友人になってもなお、深い悲しみや不安に襲われるという「成功の矛盾」に苦しんでいます。ミルトンは現在、複数のセラピストや精神科医の助けを借りながら、「不安と鬱をあらゆる角度から爆撃している」とユーモアを交えて語ります。
• 不快感こそが道: 彼らは「心地よさへの唯一の道は、不快な場所を通ることだ」と信じています。今のこの苦しい時期こそが、次の創作のための重要な糧になると捉えています。
6. 亡き祖母への想いとライブでの「裸の感情」
アルバムの最後には、デビュー公演の数日前に他界した祖母の声が収録されています。
• Palacio de los Deportesでの涙: 2万人を前にしたコンサートで、ファンが祖母の名前を書いたポスターを掲げた際、彼らはステージ上で声を上げて泣き崩れ、歌うことすらできなくなりました。それは、公衆の面前で自分たちの最も脆弱な部分をさらけ出した、彼らにとって最も悲しく、かつ忘れられない瞬間でした。
7. 完璧よりも「特別」であること
彼らは技術的な完璧さを求めていません。
• 不完全さの美学: 「不完全であることこそが最も人間らしく、リアルで、人々とつながるものだ」とマイクは言います。
• ルールを壊す: アルバロ・ディアスやフレッド・アゲイン(Fred again..)らとの交流を通じ、彼らは「正解」のない音楽制作を楽しんでいます。「正しく行うためには、まず間違ったやり方でやらなければならない」というのが彼らのモットーです。
8. 未来への展望
• Fred again..とのプロジェクト: 非常に親密な関係を築いており、共同プロジェクトが進行中であることを認めました。
• ドキュメンタリーとフォトブック: デビューアルバムの1周年を記念した、ファンが自分で写真を貼って完成させるカスタマイズ型のフォトブックや、ドキュメンタリーの制作も進んでいます。
結論:人間としての尊厳を守る
Latin Mafiaが何よりも守りたいのは、「普通であること(日常性)」です。
有名になっても、メキシコシティで公共自転車(Ecobici)に乗り、映画館の列に並び、家族や友人と過ごす。その「人間としての営み」こそが、彼らの音楽に血を通わせる唯一の要素だからです。「名声や金に負けず、表現したいという純粋な芸術的欲求を失わないこと」。それが彼らの定義する、現在進行形の「成功」の姿です。
2026年のLATIN MAFIA
現時点ではまだ大きなアルバムの動きこそ見えていないものの、すでに2作のコラボシングルで存在感を示している。
Álvaro Díazとの「MALASNOTICIAS.」は、忘れられない相手を引きずり続ける失恋ソング。タイトルの“悪い知らせ”とは、相手がもう自分を想っていないという現実のこと。ミニマルなビートと切ない歌声が重なり、LATIN MAFIAらしい“感情の痛み”が静かに滲む一曲になっている。
一方、Yandelとの「Como Es Que Se Hace」は、かなりレゲトン寄りのクラブ・チューン。ヤンデルらしいセクシャルで反復的なフックがありつつ、LATIN MAFIA特有のぼやけた声の質感や余白が加わることで、単なる王道レゲトンではなく、ネオ・レゲトン的な感触に仕上がっている。
「MALASNOTICIAS.」が“終わった恋”を描く曲なら、「Como Es Que Se Hace」は“始まる前の駆け引き”を描く曲。2026年のLATIN MAFIAは、コラボを通じて恋愛の前後にある感情の揺れを更新している。
Latin Mafia、ラテン・グラミー2025で2部門ノミネート!

ノミネート部門は以下の通りです:
• Best Alternative Music Album(最優秀オルタナティブ音楽アルバム)
アルバム 『Todos los Días, todo el Día』
• Best Alternative Song(最優秀オルタナティブソング)
楽曲 「Siento que Merezco Más」
Latin Mafia はノミネートされた2部門とも残念ながら受賞には至りませんでした。
Best Alternative Music Album・Best Alternative Song はともに、アルゼンチンのデュオ CA7RIEL & Paco Amoroso が受賞。今年最多タイの5冠を獲得した同デュオに惜しくも及びませんでした。
2年連続でラテン・グラミーのノミネーションを勝ち取ったという事実は、Latin Mafia がすでにラテン音楽シーンの重要な存在であることを証明しています。
次のアルバム、そして来年の授賞式での巻き返しに期待したいところです。
世界を席巻するメキシコ発の新世代
Latin Mafia は、ジャンルを越境するサウンドと感情豊かな歌詞で世界的に注目を集めてきました。
昨年(2024年)は Best New Artist(新人賞)にノミネートされるも惜しくも受賞を逃しましたが、今年はさらに飛躍し、主要2部門での候補入りを実現。
Rolling Stone が「2024年ベスト・ラテンアルバム50」で第3位に選出したデビュー作『Todos los Días, todo el Día』、そして Premio Lo Nuestro 2025でも受賞歴を持つ「Siento que Merezco Más」。この二つがラテン音楽シーンにおける確固たる存在感を示しています。
ちなみに同じ Best Alternative Music Album 部門では、スペインのプロデューサー/SSWで「ベッドルーム・ポップ」の代表格 Rusowsky の最新作『Daisy』もノミネートされています。
メンバー構成とプロフィール
LATIN MAFIA(ラテン・マフィア)は、
メキシコ出身の3人組インディー・ポップバンドです。メンバーは双子の弟でボーカルを務めるミルトン(Milton)
とエミリオ(Emilio)、
そして兄でプロデューサーのマイク(Mike)・デ・ラ・ロサ
の三兄弟から構成されています  。
もともとLATIN MAFIAという名前は、マイクが以前所属していたラテントラップ・グループから取られており、コロナ禍でメキシコシティの自宅に籠って弟たちと音楽制作を始める際にこの名前を引き継いだといいます  。
彼らはパンデミック下でTikTokに制作過程の動画を投稿し始め、少しずつファン層を築きました 。
そして2021年にはじめてSpotifyに自作曲をアップロードし、レーベル欄には“Home Made”(ホームメイド)と記入するほどインディペンデントな姿勢で活動を開始しました 。
その後メキシコ国内で人気が爆発し、2022年5月にはメキシコシティのオリンピック・ヴェロドローム(収容人数約11,000人)での単独公演チケットを数分で完売させるなど大きな話題を呼びました 。
2024年4月にはアメリカの大型音楽フェスコーチェラ(Coachella)で初の米国公演を果たし、同年7月にプエルトリコの大手レーベルRimas Entertainment(リマス・エンターテインメント)と契約します 。
そして満を持して2024年10月にデビュー・アルバム『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA(トドス・ロス・ディアス・トド・エル・ディア、日本語訳:「毎日一日中」)』をリリース。
2025年には初の本格的な全米ツアーに乗り出しました 。
音楽性・ジャンルと影響
LATIN MAFIAの音楽は一言では括れない多彩さが特徴です。
基本的にはラテン・ポップやレゲトン、ラテン・トラップを軸にしながら、R&Bやハウス、ヒップホップ、エレクトロニカなど様々なジャンルを直感的にブレンドした “ジャンルを超えた” サウンドで世界的に注目を集めています 。特に彼らは曲ごとに全く異なるスタイルに挑戦しており、「一つとして同じ曲はない」と評されています 。
例えば、ミルトンとエミリオのソウルフルな歌声を活かしR&B色を押し出した曲もあれば、爆発的なレゲトン展開の後にしっとりと終わる曲もあります 。
実際、ゆったりとしたR&B調の「Continuo Atardecer」、激しいレゲトン展開から終盤にR&B的コーラスが響く「Julietota」、アフロビートのエッセンスを取り入れた官能的な「Flores」、壮大なシンフォニック・ポップに昇華した「Patadas De Ahogado (フンベとの共作)」など、曲ごとに全く異なる要素を巧みに融合しています 。
こうした多彩な音楽性は、それぞれ異なる音楽的バックグラウンドを持つ兄弟たちによって生み出されています。インスピレーション源として
エミリオはTyler, The CreatorやSteve Lacy、Omar ApolloといったR&B/ヒップホップ系アーティストの名を挙げ。
ミルトンはRosalíaやRauw Alejandro、Frank Oceanなどラテンの新星やオルタナR&Bの影響を語り。
マイクはFred Again..やFlumeといったエレクトロ系プロデューサーに加え、レゲトンを革新するBad BunnyやFeid、Moraといったアーティストから刺激を受けていると述べています  。
このように多様な音楽嗜好を持つ3人だからこそ、LATIN MAFIAの楽曲にはポップ、トラップ、R&B、レゲトン、ハウスなど複数の要素が内包され、独自のグローバル志向のポップサウンドが生み出されているのです 。
さらに歌詞の面では、自身の不安や葛藤、感情を包み隠さず表現する点も特徴で、メキシコのマチスモ(男らしさ至上主義)的な文化に抗い、感情をさらけ出すメッセージ性を持った曲が多く見受けられます 。「Más Humano」や「No Digas Nada」といった楽曲では、自身の弱さや精神的な問題に向き合い「心の裸をさらけ出してもいいんだ」というメッセージを込めており、メンバー自身も制作中に涙を流す場面が映像で公開されるなど、その真摯さがファンの共感を呼んでいます 。
主な楽曲と作品の特徴
LATIN MAFIAはデビュー以来、多くのシングル曲を発表し注目を集めてきました。以下に代表的な楽曲や作品を挙げ、その特徴をまとめます。
• Más Humano (2021):
記念すべき初公式シングルで、ドリーミーなシンセポップ調の一曲です 。切ないムードの中にエレクトロ要素とラテンのニュアンスが溶け込み、タイトル(「より人間的」)の通り感情をさらけ出すテーマが表現されています。
• Julieta (2021):
伸びやかなメロディが印象的なラテンポップ曲で、TikTokで公開した制作風景動画から火がつきヒットしました 。
終盤30秒で盛り上がるこの曲のエンディング部分を発展させる形で、よりレゲトン色を強めた拡張バージョン「Julietota」も制作され、ファン待望のペリオ(激しいレゲトン・ダンス)対応曲として話題になりました  。
ミルトン曰く、「Julietota」は自分たちの音楽の方向性に変化が訪れることを示す転機の曲となり、「これから起きる変化の序章だ」と位置付けられています 。
• No Digas Nada (2022):
しっとりとしたR&B/エレクトロ色の強いトラックで、直訳すると「何も言わないで」の意味を持つ楽曲です。
メンバー自身のメンタルヘルスに関する想いが込められており、「大丈夫じゃなくても大丈夫なんだ」と弱さを受け入れるメッセージを歌っています 
YouTube上の公式ミュージックビデオは2,500万回以上再生され、ビデオ内では3兄弟が感極まって涙する姿も収められており、そのエモーショナルな表現が大きな反響を呼びました 。
• Patadas de Ahogado (2023):
メキシコの若手シンガーソングライターHumbe(フンベ)を客演に迎えた感傷的なバラード曲です。
スペイン語で「溺れる者の足掻き」の意味を持つこの曲は、美しいメロディと切々とした歌声で2023年のLATIN MAFIAのブレイクの起点となりました 。
Spotifyでの再生回数は2億回を突破し、彼らの楽曲の中で最も再生された曲となっています 。切ない歌詞と壮大なサウンドで「失恋による喪失感と感情の奔流」を表現し、多くの若者の心を掴みました。
• Flores (2023):
タイトルはスペイン語で「花」の意味。軽やかなアフロビートのリズムに乗せて官能的に歌い上げるラブソングで、新境地を開いた一曲です 。
ミュージックビデオやパフォーマンスでは花をモチーフにしたビジュアルも話題となり、彼らのポップセンスとラテン的感性の融合が高く評価されました。
• Hecho para ti (2025):
アメリカ出身のR&Bシンガーであるオマー・アポロ(Omar Apollo)を迎えたコラボシングルです。
タイトルは「君のために作った」の意で、その名の通り恋人への想いを甘く歌った一曲になっています。
メロウなR&Bサウンドにレゲトンのリズムを忍ばせ、オマー・アポロのソウルフルなボーカルと兄弟の繊細なハーモニーが溶け合った、美しくもキャッチーなラブソングとなっています。
リリース後は各音楽プラットフォームのラテン系プレイリストで取り上げられました。
• TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA (2024, アルバム)
彼らのデビューアルバムにしてコンセプト・アルバム。
全11曲31分ほどの作品ですが、アルバム全体がまるで一続きの詩のようにシームレスにつながる構成を取っており、最初から最後まで一つの物語のように聴かせる意欲作です 。
1曲目の「Siento que merezco más(もっと報われてもいいはず)」からラストの「Tengo mucho ruido(ノイズがたくさんある)」まで、曲間の切れ目がほとんどなく流れていくこの作品には、ラテン・ポップ、トラップ、パンク、フラメンコ、ハイパーポップ、さらには伝統的なムシカ・メヒカーナ(メキシコ音楽)まで様々な要素が盛り込まれています 。
各曲でテンポや雰囲気がめまぐるしく変化する「ジェットコースターのような感情の旅路」をコンセプトとしており、「感情を思い切り感じること」が全体を貫くテーマとなっています  。
冒頭曲「Siento que merezco más」では哀愁帯びたピアノやメキシコ市街地のオルガン音サンプルから始まり、中盤には怒りを帯びたパンクのエネルギー、終盤にはエレクトロニックなガレージ調へとめまぐるしく展開し、続く「Nunca he sido honesto」(ピアノ伴奏のトラップビート)や「Vivo si me exiges」(突如唸るシンセが印象的)、「Me estoy cayendo」(穏やかなコーラスハーモニー)といった曲でも予測不能なスイッチアップを見せつけます 。
アルバム全体を通じて、ジャンルの垣根を超えた大胆な試みと、生の感情を剥き出しにしたリリックが高い完成度で融合しており、音楽メディアからも「型破りで野心的なデビュー作」として賞賛を受けました 。
特に「Siento que merezco más」はアルバムのハイライトとして位置付けられ、ベルリンの有名スタジオライブ企画COLORSでのパフォーマンス映像が公開されるや大きな反響を呼びました。
コラボレーション
LATIN MAFIAは他アーティストとのコラボレーションにも積極的で、これまでに以下のような共作を行っています。
• 「Patadas de Ahogado」 (ft. Humbe)
前述の通り、メキシコの人気シンガーソングライターHumbeをフィーチャーしたバラード曲です。失恋による感情の渦を歌ったセンチメンタルな楽曲で、2023年当時無名に近かったLATIN MAFIAが一躍脚光を浴びるきっかけとなりました 。
Humbeの透明感あるボーカルと兄弟のハーモニーが美しく溶け合い、ラテン・グラミー賞新人賞にノミネートされるなど評価された彼らの「感情を大切にする音楽性」を象徴するコラボと言えます。Spotifyで2億回超という彼ら最大のヒット曲でもあり 、メキシコ国内の音楽賞Premio Lo Nuestro 2025では本曲が「ポップ・ラテン・フュージョン賞」を受賞しています 。
• 「Hecho para ti」 (ft. Omar Apollo)
グラミー賞ノミネート経験もある米国のR&Bシンガー、オマー・アポロとの共作です。
LATIN MAFIAにとって初の英語圏アーティストとの本格的コラボレーションであり、スペイン語と英語が織り交ざるエモーショナルなラブソングに仕上がっています。滑らかなR&Bサウンドにレゲトンのリズムと洒脱なギターが融合し、オマー・アポロのソウルフルなボーカルと兄弟の色気ある歌声が際立つ一曲。
• 「Se Fue La Luz」 (ft. Jesse Baez)
グアテマラ出身のR&Bシンガー、ジェシー・バエズとの共作で、タイトルは「停電した(=光が消えた)」の意。軽快でポップなビートに乗せたバウンシーな一曲で、2023年発表当時からファンの間で人気の高いコラボです 。
Emilio(エミリオ)は元々Jesse Baezの大ファンで「以前はグルーピーだったのに、今では親友みたいだ」と冗談交じりに語っており 、憧れのアーティストとの共演によって生まれた本曲は両者の持ち味が活きた都会的なラテンR&Bに仕上がっています。ライブでも盛り上がるナンバーとして定番となっています。
• その他のコラボレーション – 上記以外にも、チリの新鋭アーティストAkriila(アクリラ)の楽曲「mal comunicada」に客演参加し、恋人同士のすれ違う感情を歌うエモーショナルな一曲で存在感を示しました 。
また、彼ら自身も将来的にコラボしたいアーティストとしてBad Bunny(バッド・バニー)やRosalía(ロサリア)、Frank Ocean、Justin Bieber、Post Malone、さらにはプエルトリコの女性ラッパーYoung Miko等の名前を挙げており 、ジャンルや国境を超えたコラボへの意欲を見せています。
実際、最近ではプエルトリコ出身でラテン界最大のスターであるBad Bunnyとも同じレーベル仲間となり(Rimas所属)、Rauw AlejandroやFred Again..、Peso Plumaといった世界的アーティストたちともコラボ楽曲を制作中であることが報じられており 、今後さらにビッグネームとの共演が実現しそうです。
世界での評価・メディアでの言及
LATIN MAFIAはその革新的な音楽性とインディーズからの急成長によって、世界的にも高い評価を獲得しています。まず、彼らのデビューアルバム『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA』は各国の音楽メディアで絶賛され、Rolling Stone誌の選ぶ「2024年ベスト・ラテンアルバム50」では第3位、Billboard誌の「2024年ベスト・ラテンアルバム」リストにも11位にランクインしました 。
またNPRやFADER、Rolling Stone En Españolなど多くの媒体がこのアルバムを「年間ベストの一つ」として取り上げており 、音楽批評家からも「型にはまらない挑戦的なサウンド」「若者世代のラテンポップを再定義する作品」だと高く評価されています。
商業的な成功も顕著で、Spotifyの月間リスナー数は750万人を超え 、主要シングルの「Patadas de Ahogado」はSpotify再生2億回超、「No Digas Nada」「Julieta」など他の人気曲もYouTubeで数百万再生を記録しています  。
特にインディーズにも関わらずメキシコ国内でアリーナ級のコンサートを次々と成功させた点は注目に値します。
2023年5月の初スタジアム公演(メキシコシティ・オリンピックヴェロドローム)を即完売させたのを皮切りに  、同年以降メキシコ各地で約1万人規模の会場を満員にするツアーを実施し、レーベル無所属・アルバム未発売の状態で異例の成功を収めました。
このインパクトから「アルバムもレーベルもないのに国内トップクラスの人気を誇るバンド」とも評され 、音楽業界関係者からも注目の的となりました 。
国際的な舞台でも存在感を示しており、2024年にはアメリカのCoachellaフェスへの出演で米デビューを飾ったほか 、南米のロラパルーザ・アルゼンチン/チリ、コロンビアのEstéreo Picnic、メキシコのTecate Pa’l Norteなど主要フェスにも名を連ねました 。
ライブでの高いパフォーマンス評価も相まって、Los Angeles TimesやTeen Vogue、PopSugar、GRAMMY公式サイトなど米英の主要メディアがこぞって特集を組み、その急成長ぶりと創造性に注目しています。「ラテン音楽の新たな地平を切り開く兄弟トリオ」「次に世界的ブレイクする可能性を秘めたインディーポップグループ」といった論調で紹介されており  、英語圏でも評価が高まりつつあります。
中でも2024年11月、ラテン・グラミー賞において新人賞(Best New Artist)にノミネートされたことは大きなトピックでした 。
最終的に受賞は逃したものの、「ノミネート自体が一つの夢の実現であり名誉だ」とメンバーは語っており 、無名のインディーからここまで登り詰めたことに対する自信と今後への意欲を示しています。
さらに2025年2月には米マイアミで開催されたPremio Lo Nuestro 2025授賞式で「Siento que merezco más」が「ラテン・フュージョン/ポップ曲賞」を受賞し 、商業的成功だけでなく音楽賞レースでも結果を残しました。
加えて、同年開催のPremios Tu Música Urbanoでは最優秀インディーアーティストや最優秀インディー楽曲(「2:12 AM」)部門にノミネートされるなど 、都市音楽系のアワードでも新風を吹き込む存在として評価されています。総じて、LATIN MAFIAはその音楽的革新性とエモーショナルな訴求力によって世界的に高い評価を得ており、「ラテン音楽の未来を担う新星」として確固たる地位を築き始めていると言えるでしょう。
今後の活動予定
デビューアルバムの成功を受け、LATIN MAFIAは精力的にライブ活動と新たな展開を計画しています。2025年には初の本格的な全米・中南米ツアーとなる「TE ODIO Y TE EXTRAÑO MUCHO Tour」(テ・オディオ・イ・テ・エストラーニョ・ムチョ・ツアー、直訳:「君が憎いし、とても恋しいツアー」)を開催しました。
このツアーは2025年1月16日のサンフランシスコ公演を皮切りに全米各主要都市を巡った後、3月以降はメキシコ国内の各都市(カンクン、グアダラハラ、ティフアナ、メキシコシティ等)に舞台を移し、6月13日のモンテレイ公演まで続く大規模なものです  。サンフランシスコのマソニック公会堂やロサンゼルスのハリウッド・パラディアム、ニューヨークのブルックリン・パラマウント劇場といった名だたる会場が軒並みソールドアウトとなり、最終地メキシコ・モンテレイのアリーナ公演まで成功裏に終わりました 。このツアーはデビューアルバム『TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA』のリリースを引っ提げたもので、無事完遂したことで彼らのライブバンドとしての実力と人気を証明しています。
ツアー終了後も勢いは止まりません。夏以降には世界的な大型音楽フェスへの出演が控えており、2025年8月の米シカゴ開催Lollapalooza(ロラパルーザ)や、同年10月のAustin City Limits Music Festival(オースティン・シティ・リミッツ)への出演が正式にアナウンスされています 。これらの舞台でも、LATIN MAFIAは既成概念に囚われないラテン音楽の新境地を世界に示すパフォーマンスを披露してくれることでしょう 。
実際、2024年11月に米ロサンゼルスで開催されたCamp Flog Gnaw Carnival(キャンプ・フロッグ・ノウ、Tyler, the Creator主催の音楽フェス)でも圧巻のステージを見せたと報じられており 、フェス観客や業界関係者からの評価も上々です。
肝心の新作リリースについては、現時点で公式な発表はありませんが、メンバーはインタビューで「今までにない音楽を作っている」「100%心血を注いだ作品になる」と語っており  、次なるプロジェクトへの意欲を示しています。Wonderlandの取材に対しては「ツアーをさらに延長して世界中の新しい場所を訪れたい」とも語っており 、アジアやヨーロッパへの進出も視野に入っているようです。実際、彼らのSNSには各国のファンから招聘を望む声が届いており、こうしたグローバルな視野を持つ彼らだけに、今後は新曲の発表だけでなく、世界各地のフェスやイベントへの出演、さらには第二弾アルバム制作やさらなる著名アーティストとのコラボレーションなど、活躍の場を一層広げていくことが期待されます。LATIN MAFIAの“これから”から目が離せません。
