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赤字事業を任された日、私が最初にやった「たった一つのこと」

▶ まずこの一文を読んでほしい

赤字の現場に飛び込んだ初日、
私はコストも見なかった。
問題も洗い出さなかった。
改善策も考えなかった。

それでも1年半後、3期連続赤字だった事業は最高収益を記録した。
あの初日に私がやった「たった一つのこと」が、すべての起点だった。


■ あなたは今、こんな状況にないか?

赤字事業を任された。 立て直しを命じられた。
「あとはよろしく」と渡された。

最初に何をすべきか。
コスト削減から手をつけるべきか。
問題の洗い出しか。
部下への号令か。

ほとんどの管理職が「結果」から逆算して初日を動く。
それがそもそも、間違いの始まりだ。

赤字事業に送り込まれた管理職が最初にやりがちなこと、それは

「問題を探すこと」だ。

数字を見る。原因を探る。ムダを洗い出す。問題を指摘する。

全部、正しい。 でも全部、順番が違う。

なぜ順番が違うのか。
それを説明する前に、私が飛び込んだ現場の話をさせてほしい。

■ 赤字現場が抱えていた「本当の問題」

2017年、私はタイで転職し、自動車外装部品の工場長を引き継いだ。
タイ人部下300名。通訳なし。 その現場は3期連続で赤字だった。

工場に入った瞬間、空気で分かった。

ラインは動いている。機械は回っている。
でも、人が死んでいた。

挨拶がない。
目に光がない。
会話が少ない。
上司の顔色をうかがいながら、ただこなしているだけ。

これは技術の問題でも、コストの問題でもなかった。
「誰もここに希望を持っていない」という問題だった。

赤字の根本原因は、数字の中にあるのではない。
人の中にある。
具体的には、「この現場は変われる」という空気が、
どこにも存在していなかった。

■ 初日にやった「たった一つのこと」

赴任初日、私はオフィスに入らなかった。
会議も開かなかった。
前任者への引き継ぎ資料も後回しにした。

作業服に着替えて、現場に降りた。
そしてただ、3棟ある工場をひたすら歩いた。

機械を触った。 においを嗅いだ。 音を聞いた。
そして、一人ひとりの顔を見た。

「サワディーカップ。今日からよろしく。まず教えてほしい。
ここで一番困っていることは何ですか?」

タイ語で、一人ずつ、聞いて回った。

最初は誰も答えなかった。 当然だ。
目の前の上司がどんな人間かも知らない。
信頼ゼロの相手に、本音を話す人間はいない。

それでも私は歩き続けた。 初日に話しかけた人数は、70名を超えた。

返ってきた答えは少なかった。
でも、「上司から声をかけられた」という事実は残った。

翌日、一人の若いライン作業者が私のそばに来て、申し訳なさそうに言った。

「工場長、昨日は話しかけてくれてありがとう。実は、ずっと前から言いたかったことがあって…」

そこから話が動き始めた。

■ なぜ「聞くこと」が最初でなければならないのか

管理職が赤字現場に飛び込んだとき、やりがちなことは「語ること」だ。

「これからはこうする」
「問題点はここだ」
「みんなで改善していこう」

でも現場の人間は、何十回もそれを聞かされてきた。
結局変わらなかった。
だから信じていない。

言葉を聞く前に、「この人は本当に私たちを見てくれている」
という感覚を感じてもらう事が大事なのだ。

信頼は、正しいことを言うより先に、「あなたのことを気にしている」と行動で見せることでしか積み上がらない。

特にタイは関係性の文化だ。
「人として信頼できるか」が常に先にある。
その後にはじめて、指示が届く。

これは、タイだけの話ではないはずだ。
令和世代の若手日本人部下にも、まったく同じことが起きていると感じる。
「なぜ動かないのか」を考える前に、「この人は私を見ているか」という問いに、上司が答えられているかどうかを確認してほしい。

■ 赴任初日に使える「聞く」3ステップ

難しくない。明日そのまま使える3つだけ覚えてほしい。

ステップ① まず現場に降りる

着任初日、最初の半日は現場を歩くことだ。
会議室に全員を集めてはいけない。
最初の貴重な時間を資料を読む時間に費やしてはいけない。

現場に足を運び、現場の空気を肌で感じることが最も大事だ。

「現場に来た上司」という事実だけで、最初の信頼の種が蒔かれる。

ステップ② 一人ずつ話しかける(「教えてください」の姿勢で)

集団に向かって話しても、本音は出ない。
一人ひとりのそばに立ち、小さな声で話しかける。

使える一言はこれだ。

「一番困っていることを、教えてもらえますか?」

「問題を指摘しに来た」のではなく、「聞きに来た」という姿勢が伝わるだけで、現場の温度が変わる。

ステップ③ 聞いたことをノートに書き、翌日に返す

聞いたままで終わらせてはいけない。

翌日、昨日話してくれた一人に近づいて、こう返す。

「○○さん。昨日言ってくれたこと、考えてみた。一緒に改善できると思う」

「聞かれた」から「見ていてくれた」に変わる瞬間だ。

ここで初めて、信頼の土台が一段上がる。

■ 明日からできる小さな一歩

□ 明日、朝一番に現場を30分歩く
□ 一人の部下に「一番困っていることは何か」と聞く
□ その答えをノートに書き、翌日必ず返す

まずこれだけでいい。

3つともやる必要はない。
1つやるだけで、確実にあなたの現場の空気が少し変わり始める。

■ まとめ・行動提案

赤字事業の立て直しは、数字から始まらない。 人から始まる。

そして人を動かすのは、正論でも号令でもない。
「自分のことを見てくれる人間がいる」という安心感だ。

初日にやるべきことは、ただひとつ。

現場に降りて、聞くこと。

それだけが、その後のすべての変化の土台になる。

■ 明日使える一言

「一番困っていることを、教えてもらえますか?」

この一言を、明日の現場で一人の部下に使ってみてほしい。

答えが返ってこなくても構わない。
「聞かれた」という事実が残る。 それだけで十分だ。

▶▶ 次回予告|この記事を読んだあなたへ

「聞く」ことで現場が動き始めた。
では次に、何をすべきか。

信頼の土台ができた後、多くの管理職がやってしまう「次の失敗」がある。
それは、「動き始めた現場を、正論で止めてしまうこと」だ。

部下が少し変わり始めた。報告が出始めた。改善提案が出てきた。
そのタイミングで、上司が「もっと効率よくやれ」「なぜこの程度なんだ」「数字が足りない」と正論をぶつける。

現場はまた閉じる。

では、「動き始めた現場」をどうやって加速させるのか。
信頼をどう仕組みに変えるのか。

次回は、私がタイの現場で実践した「信頼を仕組みに変える3つのルール」を、具体的なエピソードとともに書く。

「部下が動かない」から「部下が自分から動く」への転換点がそこにある。


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タイで14年、300人の部下と泥だらけになりながら
現場マネジメントを学んできたガクです。

3期連続赤字の事業を1年半でV字回復させた経験が
ありますが、最初からうまくできたわけでは
ありません。

信頼を失い、現場に背を向けられ、そこから
学び直してきた話をこのnoteに書いています。

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次回も、現場で油まみれになりながら
学んだことを、できる限り具体的に届けます。

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