展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.5
美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナーです(前回の記事)。思ったより読んでもらえてうれしいです。
全工程はこちら(↓)をご覧ください。
11. 展示レイアウトを考える
さて、出品交渉、借用依頼を経て、展示する作品がすべて決まりました。
そこで次に行うのが、展示レイアウトの立案です。
何をするかというと、展示室の図面上で作品を配置を考えます。
出品作品が固まる前にも、「このコーナーにはこの時代の作品をまとめようかな」とかざっくりとは考えます。どれぐらいの総点数が必要なのか検討をつけておかないと、出品交渉もできませんからね。
出品作品が固まった今、それをもっと具体的に、もっときっちり、やるのです。
とは言え、やり方は人(学芸員)それぞれ。
大きく分けると、アナログ派とデジタル派に分かれます。
アナログ派
アナログ派は、紙の上で展示レイアウトを考えます。
展示室の図面のコピーを持ってきて、その上に色々と書いたり貼ったりしていきます。
どこまできっちりやるか、ですが、私が新人の時は1/100スケールの図面を使って、ちゃんと定規で一個一個の作品を書き込んで考えるように指導されました。
つまり1メートル幅の作品だったら1センチです。
最初は、サイズ感覚が染みついていないので、面倒でもコリコリと書いて図面に落とし込んでいくのが大事だと言われました。これを怠ると、いつまで経ってもレイアウト能力が身につかず、実際に展示をしてみて「全然並べきれない!」とか「見た目がチグハグになってる!」とか焦ることになります。
また、作品図版をコピーして切り抜いたものを、想定する順番で並べてみて、どう見えるかというのも確認します。
実際に並べてみると、作品のサイズや画風、色合いなど色々な要素が原因でミスマッチに感じたり、作品同士がケンカしたり、そういうことが分かるので、しっくり来るまで配置を変えてみます。これを頭の中だけでやると、なかなかうまくいきません。
勿論ある程度、経験を積むと、頭の中でリアルなイメージができるようになるので、ここまで厳密にやらなくてもよくなりますが、最初からこの手間を惜しんでいると、そうした脳内レイアウト能力も身につかない気がします。
デジタル派
デジタル派は、やることはアナログ派と同じなのですが、それをパソコンの中でやります。
Adobeのイラストレーターとかそういった編集ソフトを使って、展示図面の上に縮尺サイズの作品を置いていきます。
ソフトが使いこなせるのであれば、こっちの方が便利です。
バーチャル空間を構築して、そこで作品を並べてみて、とかそんな高度なことをするわけではありません。
作品の配置だけでなく、壁(スライディングウォール)をどのように配置するか、独立型の展示ケースはどの種類をどこに置くか、など色々なパターンを試しながら考えます。
紙面で定規を使って書き込んだり、はさみで切り貼りするよりも、楽ちんなので、いまはデジタル派が主流なのかなと思います(他館の仕事をのぞいているわけではないので、推測ですが)。
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アナログでもデジタルでも、レイアウトを考える時に意識するのは、鑑賞者の導線です。
どんな順序で見るのも鑑賞者の自由ではありますが、基本の順路は当然あります。ひとつのストーリーを描くつもりで作品を置いていくのです。
そしてレイアウトを考える時は、作品の配置だけでなく、どんな解説パネルやバナーが必要かも考えなくてはいけません。
場合によっては、展示台やケース、仕切り壁などの造作を外注する必要が出てきます。その時は展示デザインを請け負っているプロにお願いすることになります。
[展示デザインの仕事についてはこちらも参照]
こうして事前にあれこれ考えても、実際に展示作業に入ると、「やっぱりこの作品はこっちにしよう」とかアドリブで変更することもたくさん出てきます。
まぁそのあたりは、また展示作業の工程でお話しましょう。
