何者かになりたければコミュニティを作れ
少年よ(少女よ)、大志を抱け。
と言われているのに、日本人はどうにも自らコミュニティを率いようとしない。リーダーになろうという人が少ない。
「なぜ誰もやらないのか?」
そう思う事が出来る人間であれば、他の誰の行動も待つべきではない。
自分がやれ。
◯◯になるにはどうしたら良い?コミュニティを作れ
「ゲームクリエイターになるにはどうしたらいいですか?」
「サウンドプログラマーになるにはどうしたらいいですか?」
そんな事を稀によく聞かれる。「自分で作りたいモノを作れば良いじゃん」と、今まで答えていたかもしれない。だが自分の過去を振り返って、その答えの上位互換がある事に気がついた。
コミュニティを作れ。
「ゲームを作ろう」と思って、身の回りに頼れるコミュニティが無いのであれば、ゲーム開発者コミュニティを立ち上げてしまおう。
「インタラクティブミュージックを活用したい」と思ったら、「インタラクティブミュージック研究会」を作って勉強会を開こう。
どちらも私自身が通ってきた道だ。
以下は適当に読み飛ばして次のセクションに行っても良いが、
2009年 札幌ゲーム制作者コミュニティKawaz 設立(20歳)
100人規模のメンバーを1人ずつmixiで声掛けして集め、学生や社会人を混ぜてゲーム開発プロジェクトを推進し、GlobalGameJam札幌会場を初開催し、その後の札幌のゲーム開発文化に影響を与えた。

オリキャラ(かわずたん)もKawazの友人によって描かれている。
ポータルサイトは既に存在しない。
2012年 インタラクティブミュージック研究会 設立(23歳)
当時まだ国内で知見が浅かったインタラクティブミュージックに関する勉強会を開催し、学術的な知見から、実験的な音楽アプリ、そしてゲームでの応用事例など幅広く取り扱っていた。

https://www.slideshare.net/slideshow/ss-23352503/23352503
そうした活動が注目されスクウェア・エニックスから声がかかって入社。FF15にも搭載された音楽システムを自ら開発するなど、国内のインタラクティブミュージック普及に影響を与えた。
以下、この2つを事例に話を進めるが、全然別のカテゴリについても応用可能な話なので、適宜読み替えてほしい。
こうして書いてみると、私が「何者か」に思えてくるかもしれないが(別にそんな評価はどうだっていいんだが)、そうじゃない、という事を伝えたい。2つのコミュニティを立ち上げた時点で、私は誰の目から見ても、どう贔屓目を使っても、何者でもないただの若者だった。
実力を得るより前にリーダーになれ
コミュニティを率いるのに「相応しい人間」とは誰だろうか。誰もが知る有名人で、実力が認められており、信頼が置ける人間だろうか。
何の知名度もなく、実力も不十分で、信頼とは程遠い自分には、リーダーとしてコミュニティを立ち上げるなど、不相応な事と思えるだろうか。
はっきりと言おう、断じて違う。
念のため捕捉すると、それこそ「業界の代表者を集めて政府に進言する」などが目的であれば、有名人がやるべきだろうけど、ここで話しているのは、技術情報や人的ネットワークを広げるための草の根活動の事だ。
自分が2つのコミュニティを運営してきた経験からも、また、企業が主導しようとした「開発者コミュニティ」が尽く長続きしないのを傍目で見ていた事からも、コミュニティに必要なものは、資金や知名度や実力ではない事は明らかだ。
必要なのはものは何か。それは大義だ。そして、それを最も強く抱いているのは、これから◯◯をやりたい、と熱意だけがあって実力が無い若者だ。
実力者には人を集める大義など無い
私は2つのコミュニティを運営したがどちらも既に続けていない。それは限界が来たとかではなく役目を終えたのだと自分はわかっている。
ゲーム開発者コミュニティを立ち上げた時、私には一緒にゲームを作る仲間が1人もいなかった。だから自分で立ち上げる以外に方法は無かった。
インタラクティブミュージック研究会を立ち上げた時、国内にそういった知見が集まる場所は無かった。だから自分で立ち上げるしかなかった。
今、同じ事をする理由が私にあるか?残念ながらもう無い。それは私がコミュニティを率いる力を失ったという意味ではなく、私には最早、大義が無い。今はもう、ゲームを作る仲間がたくさん出来た。インタラクティブミュージックの専門家と名乗れるようになった。だが、素人だった時の私は違った。実力が無い代わりに、知識や人脈への飽くなき欲求があった。大義があった。
何より大事な事として、そうした会を運営し、人を集め、イベントを計画し、ルールを定め、司会進行をしたり他人同士を紹介したりトラブルを解決したり、ありとあらゆる事を引き受けるだけの時間があった。
人を集めるには時間とエネルギーが必要
大人になったら、「集まろう」なんて声をかけてくれる友達は限られてくる。皆が内心「自分から誘うのは面倒だが、誘われたら遊びたい」くらいに思っていても、なかなか重い腰を上げない。なぜか。責任を取りたくないからだ。
人を集めるのであれば、相手のことを考えなければならない。場所も時間も都合も合わせ、どんな話題であれば退屈しないか想像を巡らせ、最悪そこで孤立する人がいたら自分から声をかけてフォローする気概くらいはあった方が良い。
「ただ声をかけただけ」と思われるかもしれないが、実際には無限に気を遣う場面が出てくる。だからこそ、その気苦労を知る人からは感謝される。
誰もやりたがらないのを逆手にとって、上記のような責任を何ら引き受けない陽キャがただ人を集めるだけ集めて自分だけ好き勝手に喋ったり飲み食いする、という場合もあるが、その集まりを大切だと思えるかどうかは……人によるところだろう。自分は御免被る。
集めただけで人が交流すると思うな
コミュニティを作る経験なんてほとんどの人間が持ち合わせていないため、新しいコミュニティを作る時に「ただ人を集める」だけで上手くいくと思っているフシがある。そして、参加者から不満が出たり徐々に参加者が減っていくのを見て「誰もコミュニティを必要としていなかった」と諦めていく。
「自然な交流を促す」という美辞麗句に釣られて作られた開放的な社内カフェ。「活発な相互作用を生み出す」と意気揚々と立ち上げられたポータルサイト。それらは運営者の努力なくしては一瞬たりとも活気が持続せず、即座に意義を失っていく。
人が交流し、情報を交換し、ネットワークが生み出される条件とは何か。
決して「人を集める」だけではない。人間は集めたら勝手に化学反応する物質ではない(稀にそういう人間もいるが、たいてい危険人物だ)。人間が反応するには「触媒」が必要だ。具体的には
「テーマ」「目的」が必要だ
何でも好きにして良い、と言われたら普通の人間は(本当に◯◯をして良いのか?)と不安になるだけで、危険な奴だけが「じゃあxxしても良いんですね?」と場を荒らす。
目的をある程度制限する、例えば「Unityでゲームを作る」「最近面白かったゲームを紹介する」「ゲームサウンドの◯◯について話す」「ADX2を使った演出について共有する」などとすることで、自分の持っている情報や疑問が「この場に適切だ」と判断できる。具体的な需要を提示して初めて供給が生まれる。
相手の情報が必要だ
どんな人間が集まっているのか、相手がわからないとこれまた不安で人は何も言わなくなる。単なるリクルーターや出会い厨かもしれない、自分が考えた事をバカにしてくる新参お断りの人かもしれない、そもそも相手が何を求めているのかわからない……だから、相手がどんな人間で、何を求めているか、何に詳しいのか、情報はあればあるほど良い。
ただし、インターネットで個人情報を勝手にバラ撒くわけにはいかないので、クローズドで安心できる場所を提供し、距離感を確かめつつ適切に情報を媒介するのには、ある程度の気遣いが必要だ。そのためにはまずコミュニティリーダー自身が、メンバーのそれぞれに興味・関心を持っている必要がある。
自分の場合、ゲーム開発者コミュニティで人を集めたときはまず自分から「他己紹介」として全メンバーの紹介をやったりしていた。自分が集めたメンバーだからこそ、全員の名前とやりたい事を自分が一番把握していた。

何のためにこんな大変なエネルギーを使うのか?
このように、人に集まってもらって満足させるには相応の準備が要る。つまり、時間とエネルギーが要る。そんな事は時間とエネルギーが有り余っている若者の得意とするところだ。実力者にそんな時間の使い方をさせるのは勿体ないと言っても良い。
では、そんなコストを投じてコミュニティのリーダーが得られる利益とは何か?
リーダーたるものそんなコスパがどうという感覚でやって欲しくない……かもしれないが、既に述べたように「具体的なテーマを決める」のも「メンバーに関心を持つ」のも、深い興味・関心がなければ成し得るものではない。コスパが良いからいっちょコミュニティ立ち上げようぜ、など誰も出来ないし、やらない。
その上であえて言うが、コミュニティのリーダーになる事は圧倒的に人生に対するコスパが良い。
人を集めるのは大変だ。しかし、集めた人からはものすごく感謝される。そこで友達ができた、仲間ができた、発表する事で自信が持てた、果ては恋人が出来たとか結婚したとか娘が生まれたとか(なぜかリーダーの自分自身はそういう事が一切無かったんだが??)、それも一時的な感謝ではなく、あの時あなたが繋げてくれたから今がある、という形で半永久的に感謝されたりする。
もちろん、自分自身も相手に感謝している。元はといえば、自分が情報や交流が欲しくてやっており、自分がその人達を呼んできた。お互いに大切な縁が出来た。そうして続いている関係が今でも沢山ある。
それだけではない。
就職活動にしろ、奨学金への応募にしろ、「コミュニティを運営していた」という事は有利に働く。ただこれはあくまで背景情報の1つでしかない。
ヘッダ画像にしている写真はそれで参加したGDC Scholarshipでの1枚で、真ん中に約15年前の私が写っている。GDCそのものの経験も、日本の学生を代表してGDCに参加したという自負からも、私のその後のゲーム開発人生に大きな影響を与えた。
最も強いのは、コミュニティが生み出す圧力だ。人を集めて何かするとなった時に、リーダー自身が何も出せないのはいかがなものか。自分こそ、その場に相応しい何かを生み出す存在であるべきだ。そうすると、非常な短期間で「何かを生み出そう」という圧力が生まれ、革命的な何かが生まれる。
私の人生を決定づけた作品はいずれもそのようにして生まれている。数々の賞を受賞した「音楽マインスイーパ」はゲーム制作者コミュニティで最初にゲームの発表会をやるとなった際に、それまで何年もかけて作ってきた処女作品(たいていエターナる)を脇において2日で作った作品だったし、
「マインスイーパーを一晩で神ゲーにしてやった」というバカ丸出しなタイトルの動画を投稿して炎上し、翌日に大学の友人から「ニコ動デイリー1位おめでとうw」と言われた記憶がある。音楽マインスイーパー。処女作。
— じーくどらむす/岩本翔 (@geekdrums) March 2, 2019
>>Music Mine Sweeper by geekdrums https://t.co/OeXk7Z9EY5 pic.twitter.com/WWoHLJthyi
このnoteを始めるきっかけとなり、人生最大にバズったゼルダBotWの記事も、インタラクティブミュージック発表会に間に合わせるように何かネタを用意しようとして、ギリギリで書き上げられたものだった。
その証拠として、「こちらのnoteは、インタラクティブミュージック研究会のイベントに合わせて作成されました。」との記述が残っている。
このようにコミュニティの圧力が作品としてアウトプットされる事で、名実ともに「◯◯の人」としてコミュニティの外からも認知されるようになる。
結果として、私は人生で一度も就職活動に困ったことがない。仕事が無いかと聞けばすぐに誰かから連絡が来るし、今も忙しいのに(ありがたい事に)手伝ってくれないかと問い合わせが来る。ただ、自分ばかりがこの機会を得ていても体と頭が1つしか無いからどうしようもない。だからこの記事を書いて、少しでも熱意のある人の活動を後押しできないかと考えている。
自分の作品を作ったり、勉強会に参加するのも良いが、自分のための場所が足りないと思うなら、自分で作ってみたらどうだろうか?
情報発信する人の元には、情報が集まってくる
視点を個人から組織に移そう。
コミュニティの運営、情報の発信、いずれも大変にコストがかかる。学生やフリーランスが勝手にやる分には良いけれど、企業に務めるサラリーマンがそんな事を推奨されるのだろうか……?
これについて、立場によって色んなご意見がある事は承知している。ゲーム会社では厳しい守秘義務の問題がある。下記ツイートへの反応がそれをよく表している。
ゲーム開発者のコミュニティについて雑に考えてる
— じーくどらむす/岩本翔 (@geekdrums) July 31, 2026
どうして日本人ってこう……オープンに考えを喋らないんだろう。また疑問や要望を表に出さないんだろう。それを「現実的に」改善するにはどうしたらいいんだろう。
以下すべて、なんの統計的根拠もない主語デカ印象論だが、…
それでも、(これは私のポジショントークになるかもしれないが)情報発信は良いことだ、と主張しておきたい。
なぜなら、情報は発信する人の元に勝手に集まってくるからだ。
実際に情報発信をした事がなければ、なかなか実感が沸かない事だろう。「勝手に集まる」とは一体どういう事か?ここでそれを詳細に分解したい。
「勝手に情報が集まる」パターンにはいくつかある。
1,◯◯も知らないのか、という指摘
私がインタラクティブミュージックについて例を出すと、それに対して
「それはもう◯◯でN年前にやってたじゃん」
とか
「その話をするなら時のオカリナ出さないとダメだろ」
とか
いろんなツッコミが寄せられる。それはもう、勝手に集まってくる。
あのな……その話するやつが「時のオカリナ」の音楽演出を知らないとでも思ってんのか!!!……と心の中でツッコんだ回数は数え切れない。
ただ、そんな指摘の中にも、たまによく「これは知らなかった!」という知識も紛れていたりする。そして時にすごい大御所・専門家から「その認識は弱い」と直接ご指導くださる場合もある。
インタラクティブミュージックの議論が盛んになるのは大変喜ばしいことだと思うのだけど、その歴史面、特に2000年代以前の具体例にスポットが当たることはあまり多くない。ゲーム音楽ではその起源を1978年にまで遡ることができるし、1980年代にはすでにいくつか(原始的だが)無視できない成果がある。
— hally (VORC) (@hallyvorc) March 26, 2018
MidwayのCheckmateというゲームです。そしてごめんなさい、正確には1978年ではなく1977年でした。Writing Interactive~もご多分に漏れず歴史認識は弱いです。
— hally (VORC) (@hallyvorc) March 26, 2018
この時得られた情報は本当にありがたく、以降、いろんな講演などでCheckmateというゲームを超初期のインタラクティブミュージック事例として頻繁に使わせて頂いている。hallyさんとも、ありがたい事に、その後長らく交流が続いている。
このように、自分が詳しいと自信が持てなくても、あるいは自信が無いからこそ、「こういうやり方があるよね!」という情報を広める事が出来れば、あちこちから「コレも!」「アレも!」と情報が集まってきて、遂には本当の専門家から指摘が入ることもある。
それ(指摘)を狙ってバズらせるのは邪道ではあるが……最低限、勝手な言い切りをしない(これが世界初だとか適当な事言わない)のであれば、補足情報が集まるだけで迷惑にはならないはずだ。
2,◯◯が好きそうだと思って、という紹介
日頃から◯◯について(自分の場合はインタラクティブミュージックについて)発信していると、そうした要素を多く含む作品を見つけた友人が、プレイ中に「これ、あいつが喜びそうだな」という感想を抱く。結果として、自分のアンテナが広くなくても、勝手に「これお前が好きそうだよ」という形で情報が届く。
最新のAIでも(奴らはまだゲームをプレイしてくれたりしないので)そんな事まではやってくれない。実際の人間に「あいつは〇〇について興味がある」と思われている事に価値がある。
3,◯◯は実はこうやっていて、という伝授
開発者が出せる情報には、3段階ある。
講演スライドに表立って載せて良い情報
講演で質問が来たら答えても良い情報
講演後に個人的に聞かれたらこっそり教えてくれる情報
CEDECにすら興味がないほとんどの人間は1すら知らない。なので、1を知っているだけで「情報収集している」と思い込んでいる人も多いが、その時点ではまだ浅瀬の情報しか引き出せていない。
本当にディープな情報が欲しければ、質問をしなければならない。発表をした事があればわかるはずだ。スライドに詰め込める情報なんぞ、自分がやった仕事量が100あったら、1にも満たない。だから99の情報を省略し、あとは考えてくれ、あるいは聞いてくれ、と思って詰め込んだ結果が1時間の講演だ。だから実は、聞いてみるだけで99の情報がどんどん出てくる。しかし、残念ながら質疑応答の時間は10分もあれば良い方だ。お硬い企業は質疑応答無しなんて素っ気ない態度を取る。これだから京都の大企業は
そこでどうするか。講演後、あるいは懇親会などで、直接その開発者を捕まえる。「先ほどは◯◯のご講演ありがとうございました。ところで、実際◯◯ってどうやって実現しているんですか?」するとどうだろう、場合によっては30分くらいかけてたっぷりと、現場でどんな苦労があったか、どういった経緯でその実装になったのか、実は言ってないデメリットがあるとか、そういう話が直接聞ける。実は本人も話したくて仕方がなかったりする。しかし、時間の都合もあるし、何よりも、「そんな細かいところまで知りたいと思ってくれる人間がいる」事がまず滅多になく、だからこそ「知りたい人には聞いて欲しい」とばかりに口を開くのだ。
以下のように歴戦のゲームクリエイターも「(聞かれたら答えるのに)聞かれないから」大事な情報を外に出していないという。逆に言えば、興味を持って聞けば、答えてくれる可能性はある。そうした時に、それに関わる活動をしていると認知されていたら、話がスムーズに進む。
自分の場合
— ⛩🧙♂️ゲーム仙人かいぽん⚔️ぱぱら快刀🌻💙 (@kenji_kaido) August 1, 2026
・聞かれんから
・言うても反応薄い。言語化はできてるはずやけど
・分かってる人にしか意味通じなくて、そんで分かってる人なら必要ない
かな
言う側の問題なくて、聞く側の問題ちゃうかと思う! https://t.co/3cqQYk7Pu0
自分に至っては、もはや講演者に聞き寄るまでもなく、なんか懇親会場にいたら「◯◯さんですよね、あの記事読みました!実は自分もxxというタイトルで……」のように、「絶対にこの人はこの情報を喜んでくれるだろう」という信頼の元で会話が発生したりする。これが「情報が勝手に集まる」の真実だ。コミュニティ活動や情報発信をしていなければ、決してこの信頼は生まれない。
当然ながら、それを表で吹聴したり勝手に記事にしたりしてはいけない。いわゆるオフレコである。しかし、それを自分の開発に活かす事に関しては、誰も止められない。会社に所属していれば、開発方針の論拠として「実はこういう情報を入手しました」と内々に共有することもある。そうした情報は決して表に出ないので、明確な差となって現れる。
だからこそ、情報発信は自分にとって、そして自社にとって重要なのだ。
この「情報発信は、個人にとっても、会社にとっても良いことだ」というWeb業界だとわりと通じる信念を、ゲーム業界が持つようになるにはどうしたらいいんだろう。
— じーくどらむす/岩本翔 (@geekdrums) August 4, 2026
近年は人材が混ざってきているから、KLabさんのように話が通じる所も増えてきてると思うけれども。 pic.twitter.com/4U7fLB1ZeG
本当にコミュニティを立ち上げようと思ったら何をするべきか
ここまで言えば、やる気のある人は、あとはやるだけだ。
もちろん、コミュニティを立ち上げるなんて、誰にでも出来る事ではない。100人に1人でも届けば良いと思っている。そうではない人は「コミュニティ運営って、大変だけどメリットもあるんだなぁ」くらいで受け取ってもらえたら良い。
その中でもし、これが自分のやるべきことだと天啓を受けた人、やってみようと思っていた気持ちが後押しされた人、または、既に自分でコミュニティをやっているが上手くいかないといった人に、ウザい先輩からの助言と思って聞いて欲しい事がある(つまり、自分で上手く出来るなら無視して構わない)。
メンバー集めは自分から直接声をかけろ
SNSで適当に告知して「興味がある人来てください」では人が集まらない。周囲にも賑わいが伝わっている段階なら自然と集まるようにもなるが、最初はとにかく自分の足で集める。「あなたに来て欲しい」と声をかける。迷惑かもしれない?と思える人間なら、相手の事がちゃんと考えられている証拠だ。その慎重さで人を選べば問題ない。
定期的にあつまれ
断言するが、定期的な会が定まっていないコミュニティは早晩無くなる。逆に、年に1回でも「◯月にこれをやる」と決まっている限り、その準備だけでとりあえず続いてくれたりする。
もちろん、長く続くことだけが価値ではないので好きにしたら良いが、毎年1月にGlobalJameJamを開催する文化が生まれた札幌のコミュニティは結果的に私が居なくなった後も長く続いたし、毎月集まりがあるTokyo Indiesや、定期的にゲームジャムを開催しているUnity1weekも長続きしている。
一方で私が思いついた時に勢いで集めていたインタラクティブミュージック勉強会はもうやってない。そういうもん。
目的を限定しろ
コミュニティにテーマが必要、という話にも通じるが、それも出来る限り具体的に絞り込む。あるいは、明文化はしなくとも、主催者やメンバーの集め方でなんとなく傾向が見えるようにする。
何の限定もなく「ゲーム開発者あつまれー」でなんとかなるのは札幌のような田舎だけごく一部の例外を除けば滅多にない。限定条件はなんでも良い。広くゆるくした方が人が集まる、と思っていたら大間違い。とにかく「ここは自分の居場所だ」と思える事が大事。言ってしまえば商業ゲームとインディーゲームと同人ゲームとフリーゲームとそれぞれ文化は違うし、文化が違う人と安心して交流できると思える人は少ない。限定条件はツールでも良い。UnityなのかUEなのかWwiseなのかADXなのか音楽なのか効果音なのか、もっと細かくしても良いし、掛け合わせても良いが、とにかく具体的な限定がある方がコミュニティは活発になりやすく長続きしやすい。
会場探しについて
コミュニティ運営には主催者の熱意と努力が必要だが、それと同時に、集まる際の場所を貸してくれる所にも強く依存している。
インタラクティブミュージック研究会は、ADXを提供しているCRI・ミドルウェア様に幾度となく渋谷のオフィスを貸していただいていた。最近お手伝いしているSIG-AUDIOの活動も実はCRI・ミドルウェア様に会場提供を頂いて配信が出来ている。
えぇっ!?ゲームサウンドに従事していて、IGDA Japan SIG-AUDIOを知らない!?それは勿体ない、最近も年4回くらい勉強会などを開いて活動しているので、是非以下noteをフォローしてチェックしてほしい。
学生であれば、大学の教室を借りたりすることも出来るかもしれない。札幌のゲーム制作者コミュニティでは、出身である北海道大学の教室を借りてミーティングやゲームジャムなどを開催していた。
他にも、CEDECで発表があったように、DNAさんやKLabさんなど、社外の勉強会に会場を貸してくださる会社さんもあるようだ。
企業としても、従業員が参加しやすかったり、勉強会の参加者にポジティブな印象を与えることが出来たりで、空いている会議室などを貸す分には、メリットが大きい活動なのではないだろうか。
自分はこんだけコミュニティ活動を推していながら飲み会が苦手で、単に酒が飲めないから酒(≒飲み放題)にお金を消費するのが嫌なだけなんだが、企業の会議室だったり、あるいはカフェだったり、もっと気軽に集まれる場所自体が増えてくれないかなーと思ったりする。このあたり、産官学が連携して場所や機会が作りやすくなると嬉しい。
謝辞+宣伝
Tokyo Indiesのアルヴィンが言ってくれた事が、この記事を書く後押しになった。彼はまさに「私も主催者として最適だとは思っていません」と謙遜しているが、即座に「残念ですけど、このことを理解している優秀な人材は開発に忙しすぎてコミュニティのことを気にかける余裕がない」という真実を指摘してくれた。この事に大いに同意するし、そのアイデアを拡大して本稿を書き上げた。ありがとうアルヴィン。
このためにむかしにTokyoIndies作った、この話の言うこと全てに同意します。残念ながら、私も主催者として最適だとは思っていません。残念ですけど、このことを理解している優秀な人材は開発に忙しすぎてコミュニティのことを気にかける余裕がない。https://t.co/MsBhzBQkn7
— アルヴィン@ゲーム開発者が如く (@datponpon) July 31, 2026
Tokyo Indiesの次回開催は8/19で、私も久々に行く予定だ。
今月末、ゲームメーカーズが主催する大規模なイベント「ゲームメーカーズスクランブル」も開催される。
ゲーム制作系イベント「ゲームメーカーズ スクランブル2026」、
— 神山 大輝 | D.Kamiyama (@gula_sound) August 5, 2026
全18講演とタイムテーブル&ハンズオン情報を公開しました!!!
『Shadowverse: Worlds Beyond』や『プラグマタ』開発事例をはじめ、ゲームデザインやAI活用、インディーゲーム事例など、幅広い講演ラインナップになりました。… https://t.co/L4mlcxSCQF
実は、ゲームメーカーズ編集長の神山くんはインタラクティブミュージック研究会を一緒に立ち上げて、二人三脚で運営してきた仲間である。もはや本業がサウンドなんだかライターなんだか編集長なんだかわからないが、とにかく頑張っているので、是非こちらも多くの人に参加して欲しい。
サウンド関連では、あの「つよみー」さんが登壇されるぞ。
傑作ゲーム『Öoo』『ElecHead』のサウンドを支えたつよみーさんのゲーム音楽論が聞けるぞ!サウンドセッションがなくて申し込み迷ってたけど、これを見て参加を決めました。 https://t.co/N8ik6HlJdX
— じーくどらむす/岩本翔 (@geekdrums) August 5, 2026
そして私自身は……今とくにコミュニティを主催していない!
だが、この記事をまとめた事で、「なぜ自分がもうコミュニティをやる理由が無いか」を明確に理解できた。わずかなボランティア精神で「人を集めたら喜ばれるかな」と思ったりもするわけだが、どうにも最優先でそれをやろうと思えない……のはなぜか。自分が、大義を失ったからだ。自分にはもう皆を積極的に集めてまで◯◯について知りたい!と言い寄る立場ではなくなってしまった。
だけど、応援はしたい。最近の若者は(老害発言)、コロナ禍のせいもあって、「集まる」という事からさらに縁遠くなっている気がしている。それは単に自分が若者の集まりに呼ばれていないから、かもしれないが……とにかく!講演して欲しいとか宣伝して欲しいとか人を紹介して欲しいとか、自分に出来る手伝いなら出来る範囲でやりたいと思っている。
個人的な興味の範囲で、気になる人をカフェに誘ってみる活動はしている。もちろん、誘ってくれたら嬉しいよ!でも、なかなかそういう人は居ないから、自分から誘っている。もし、コミュニティの事だったり、ゲーム音楽の事でも、何でも話してみたい人がいたら、是非お声がけください。
最近は「会ってみたかった人を誘ってカフェに行く」活動を始めており、ずっとネット上で見てた人とリアルで会ってみないと聞けない話が色々できて楽しい。カフェは2軒回って4時間くらい話し込んでも飲み会ほどお金かからなくて嬉しい。 pic.twitter.com/lEPXhtrYSc
— じーくどらむす/岩本翔 (@geekdrums) February 21, 2026
日本の若者に幸あれ。少年よ(少女よ)、大志を抱け。
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