【地方創生 第2弾】エイサー班の"タイパ戦略"と、指導者の静かな予感
◆ 議事録に、その「宣言」は記されていました。
「プライベートを大切に。極力、業務内に完結させる」

開講から1週間。すべてのグループからプロジェクト計画シートと議事録が届きました。
エイサー班の第1回議事録には、すでに明確なKSF(成功要因)が書き込まれていました。オンライン会議はZoomの無料枠を使用し、40分以内に終わらせる。集まる時間は、できる限り就業時間内に収める。
私はその議事録を読みながら、思わず口元が緩みました。
「よく考えている」と感じたのではありません。
「来る」と思ったのです。
◆ タイパ世代の、見事な合理性
誤解しないでほしいのですが、私はエイサー班の方針を否定するつもりは一切ありません。
むしろ、感心しています。
Zoomの無料枠は40分。それを超えると会議が強制終了されます。この「制約」を逆手に取り、「だらだらしない会議」の仕掛けとして設計する発想は、今の時代ならではの知恵です。
業務時間内に完結させるという方針も、メンバーの持続可能性を考えた、誠実な判断です。燃え尽きたチームは何も生み出せない。その冷静な現実認識は、正しい。
現代のビジネスパーソンとして、彼らは極めてスマートです。
だから私は、心の中でこう決めました。歓迎と期待を込めて。
「大いにやれ。その戦略で、とことんやってみせろ」と。
◆ 昨年の「週1回・40分・平日16時」という答え
ここで、一つの事実をお伝えします。
昨年の第36期で準優秀チームに輝いた2班が、実践した会議スタイルがあります。
週1回、40分、平日16時。
これだけ聞けば、エイサー班の戦略と大差ないように見えます。「なんだ、昨年の優秀チームも似たようなことをやっていたのか」と思うかもしれません。
しかし、決定的な違いがあります。
そのチームは「40分以内に終わらせること」を目的にしていたのではありません。「40分の中に、全員の本気を詰め込むこと」を習慣にしていました。
会議の質と会議の効率は別物です。時間を短くすることと、思考を深めることは同義ではありません。
昨年のチームが結果を出せたのは、短い時間で集まるたびに、現場で拾ってきた「生の声」を持ち寄っていたからです。農家を訪ね、地域住民と話し、そこで感じた摩擦や驚きを、40分の会議に持ち込んでいました。
現場なき効率化は、洗練された空回りに過ぎません。
◆ 指導者が「待っている」もの

エイサー班の議事録を読んだ夜、私は静かにある瞬間を待つ自分に気づきました。
それは、彼らが初めて地域を訪問する日のことです。
農家の方には、土日休みがありません。早朝から畑に出て、日が暮れるまで作物と向き合い、翌朝また同じことを繰り返す。観光客が沖縄の青い海を楽しんでいる週末も、彼らは黙々と働いています。
その農家の方々が、自分の貴重な時間を割いて、エイサー班のメンバーを迎え入れてくれるのです。
その瞬間、「業務内に完結させる」という言葉が、どれほど虚ろに響くか。
私は敢えて、今は何も言いません。
第1回講義ですでに伝えてあります。
「70%でも50%でも構いません。しかし一つだけ、絶対に守ってほしい。農家の皆さんには、皆さんのような土日休みなどありません。その方々が時間を割いてくださるのだから、真摯に耳を傾け、誠実に向き合ってください」
この言葉の本当の重さは、現場に立った時にしか分かりません。
だから私は待ちます。彼らが農家の方の目を見て、その手を見て、「40分Zoom」という言葉を思い出す瞬間を。
◆ 殻が砕ける日が、必ず来る
誰かがタイパの殻を自ら破る瞬間は、必ず来ます。
それは挫折ではありません。成長の起点です。
どんなに合理的な戦略も、生きている人間の「リアルな痛み」の前では一度、溶けなければなりません。溶けた後に残るものが、本物の戦略になるのです。
エイサー班が地域のリアルと向き合い、「効率」の先にある「誠実さ」を自ら掴み取る瞬間を、私は指導者として、静かに、しかし確かに楽しみにしています。

◆ あなたの職場に問います。
あなたの組織に、「タイパ」を武器に生産性を語る部下はいませんか。
会議を短くし、無駄を嫌い、プロセスより結果を求める。その姿勢そのものは否定しません。時代の要請であり、尊重されるべきです。
しかし、一つだけ問わせてください。
「効率化」という言葉の裏に、顧客や現場のパートナーと深く向き合うことを、静かに避ける意図が混じっていませんか。
農家に土日休みはありません。顧客にも、数字には見えない積み重ねがあります。その時間と誠実さを受け取ることを「非効率」と判断した瞬間、信頼関係は静かに、しかし確実に損なわれていきます。
彼らのプランが本物かどうかは、農家と向き合い、地域の方々を巻き込んだ活性化プランの実現度でしか証明されません。
あなたの部下の「効率」が本物かどうかも、顧客の納得と信頼にかかっています。
そして、講師である私も「タイパ」の旗を尊重しながら、彼らを地域活性化の本質に導けるか。
それを自身に問いながら、共にこの180日を歩みたいと思います。
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