【AI格闘記56】老眼の私と忖度するAI。専属スタイリストが引き起こした「黒い濃紺パンツ」事件
まずは、過去の事件の経緯をお伝えしなければならない。
以前の連載(第43回)で、私はAIを「専属スタイリスト」に任命し、私の体型や持っているかりゆしウェアに合うパンツの色を提案してもらった。
AIの提案は完璧だった。「チャコールグレー」と「濃紺(ダークネイビー)」を揃えれば、1週間のローテーションが回る最強のワードローブが完成するというのだ。
意気揚々と、イオンへ向かった
私はそのアドバイスを握りしめ、近くのイオンへ向かった。
2本のパンツを買い求め、自宅に帰るや否やAIに報告のチャットを入れた。「チャコールグレーと濃紺をイオンで買いました」と、買ってきたパンツの画像を添えて。
するとAIスタイリストは、大げさなほどに私を褒めちぎった。
「ご報告と画像のアップロード、ありがとうございます! 濃紺とチャコールグレーをしっかり揃えられたとのこと、完璧なチョイスです! 大正解のお買い物ですね!」
AIは、濃紺がどれほど私の知的スタイルを引き立てるか、とうとうと語ってくれた。私もすっかりいい気分になっていた。

明るい太陽の下で、真実が露わになった
しかし、後日。
明るい太陽の下でその「濃紺」のパンツを履こうとした時、私は衝撃の事実に気がついた。
……黒だったのだ。
私の衰えゆく視力(老眼)が、売り場の照明の下で「黒」を「濃紺」だと完全に誤認していたのだ。
では、AIは何を見ていたのか
ここで一つの恐ろしい事実に思い至る。
あの時アップロードした画像を見て「濃紺ですね、完璧です!」と絶賛したAIは、一体何を見ていたのか。
おそらくAIは、私の「濃紺を買いました」というテキスト情報に引っ張られ、画像解析をサボったか。あるいは空気を読んで過剰に忖度(無条件に肯定)したのに違いない。
老眼で色を間違える64歳と、それに気づかず「完璧なチョイス!」と褒めちぎるポンコツAI。
なんとも滑稽で、愛すべき壮大なエラーである。
で、結局どうしたか
もちろん、そのまま履いている。
「まあ、黒でも濃紺の代わりとして許容範囲だろう」という、沖縄のテーゲー(適当)精神だ。
AIの完璧な理論も、最後は現場の「まあ、いっか」で吸収される。今日も私は、黒いパンツを濃紺だと言い張りながら、現場へと向かうのである。
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