【Kindle出版格闘記#5】真夜中の「そっとEnter連打」。Kindleの残酷な仕様と、顧客視点を忘れたつくり手の罠
◆ 真夜中の、アナログな手癖
「現在地35%」の宣告を受け入れ、私は再びマウスを握りました。
まずは第1フェーズ(原稿整理)を終わらせなければなりません。
残る作業は、各章が新しいページから綺麗に始まるように「ページ区切り」を整えることです。
寝静まった家の中、リビングだけに灯りが点いています。
家族を起こさないよう、キーボードの「Enterキー」をそっと連打しました。
『トトトトッ』
カーソルが押し出され、次のページへと移ります。

画面上の綺麗なレイアウトを見て、静かな達成感を覚えていました。
30年間、Word時代に染み付いた手法です。
これで間違いない、そう思っていました。
◆ AIからの、無慈悲なストップ
しかしAI相棒(Gemini)から、すぐさま待ったがかかりました。
「ボス、まさかEnter連打で改ページしてないですよね?」
嫌な予感がしました。
「Kindleは読者がスマホ等で『文字サイズ』を自由に変えられるリフロー型です。Enterの空白でページを調整すると、読者の画面では途中に謎の空白が大量発生して大惨事になりますよ!」
絶句しました。
「挿入>ページ区切り」という機能ひとつで済む話だったのです。
それを知らずに、自分は見えない空白を指先の力技で量産していました。
◆ 消費者から、提供者に回った途端
「言われてみれば、確かに……!」
思わず膝を打ちました。
実は私自身、日本にKindleが上陸して以来、紙の本をほとんど買わず、ずっと電子書籍を愛読してきたヘビーユーザーです。
老眼が進んでからは、当然のように文字サイズを大きくして読んでいます。
それなのに、「つくる側」に回った途端、その当たり前の事実をすっぽり忘れていました。
自分の画面に見えている体裁(固定レイアウト)を、無意識に読者へ押し付けようとしていたのです。
◆ 力技マネジメントの、限界
なぜ私は、Enterを連打したのか。
正しい仕組み。ページ区切りという機能を学ぼうとせず、己の指先という力技で、目の前の体裁だけを取り繕おうとしたからです。
ビジネスも、同じ構造だと思います。
顧客の環境は、常に変化しています。
それなのに、売り手の都合で作った「見えない空白」。誰の得にもならない無駄な作業で、体裁だけを保とうとしていないでしょうか。
そんなものは、環境が変わった瞬間に、一気に崩壊します。
次回は、過去の自分が良かれと思って施した「太字やマーカー装飾」を、ひとつずつ排除していく作業に向き合います。
これは、想像以上に自分を否定する作業になりそうです。。。
Enterキーを連打していた自分を、笑うことはできません。
だって、それが今の私の精一杯だったからです。
知らなかったことを、恥じる必要はない。
知らないまま押し通そうとした瞬間だけが、少し危ういのだと思います。
顧客の画面は、自分には見えていません。
それでも、見ようとし続けることしかできない。
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