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【地方創生 第7弾】完璧な議事録が隠していた「本音」。さんしん班ができる実務家の鎧を脱いだ日


◆ 読者への挑戦状:「この報告書の死角を見抜けますか?」

あなたの部下が、ある現場の視察を終えて、以下のような報告書(議事録)を提出してきたとします。

【視察先】読谷山花織事業協同組合

  • 歴史的背景:約600年の歴史を持ち、琉球王朝時代の王族の着物にも使用。戦後、有志により技法が復活。

  • 独自技法と特徴:横浮花織、手花織、グーなどを用いた3つの基本模様。全工程(デザインから織りまで)を分業せず1人の職人が担当し、証紙には個人名が入る。

  • 現状の課題:技術習得に時間がかかり経済的自立が難しいため、後継者が不足。現在組合員約104名中、実稼働は約70名。

  • 流通・今後の展望:着物は問屋へ100%卸し。温暖化で着物需要が減る中、制服のエンブレムや靴メーカーとのコラボ、星のや沖縄での体験事業など他業種連携を模索中。

さて、いかがでしょうか。 現状分析、課題の抽出、今後のポテンシャル。すべてが理路整然と整理された、非の打ち所のない「完璧な議事録」です。

それもそのはず。このチーム(第37期かりゆし塾・さんしん班)のメンバーは、政府系金融機関の主任アナリスト、大手旅行会社のMICE運営マネージャー、通信やインフラ企業の管理職、さらには地元・役場の係長までを擁する、実務能力に長けた「デキる大人たち」の精鋭集団なのです。

しかし、40年間現場に立ち続けてきた私には、この美しくフォーマットされたPDFの中に、ある決定的な「死角」が見えました。

皆さんは、何だか分かりますか?


◆ 指導者が放った、一本の矢

私の答えはこうです。 「これでは、現場の『体温』が感じられない」

私はすぐさま、彼らに一通のフィードバック(問い)を放ちました。

「現状の課題に、後継者不足や経済的自立の厳しさが綺麗にまとまっています。しかし、よそ者の理屈で課題を分析することが、私たちの目的ではありません」

「皆さんは現場で、職人さんに『採算が合わなくても続けてきた原動力』や、『10年後の子どもたちに残したい風景』を熱意を持って問いかけ、相手の情熱に惚れ込むことができたでしょうか?」

これまでもお伝えして来た通り、優秀なビジネスパーソンほど、現場に入ると「お利口なコンサルタント」の顔になり、「何か困っていることはありますか」と課題を探しに行ってしまいます。

しかしそれでは、魂のこもった地域活性化プランなど絶対に生まれません。

私はあえて厳しい矢を放ち、彼らの反応を待ちました。もし本当に「課題の整理」だけで終わっていたのだとしたら、やり直させるつもりでした。


◆ 溢れ出した、生身の人間ドラマ

翌日。彼らから返ってきたメールを読んで、私は思わず笑顔になってしまいました。 そこには、あの冷徹なPDF議事録には一行も書かれていなかった、「血の通った真実」が溢れ出していたのです。

▶「維持するのが難しいという現実がある一方で、『なぜ大変なのにやっているのか』という問いに対し、職人さんは『みんな楽しいから、この織りが好きだから』と笑って語ってくれました」

▶「ある職人の方は、『子どもが家に帰ってきた時に、母親が笑顔で迎えてくれる理想』を実現するため、自宅でできるこの仕事に魅力を感じ、20年間コツコツと続けてきたと、個人的な背景を明かしてくれました」

▶「最初は戸惑っていた職人さんも、身振り手振りで私たちとの交流を楽しんでくれ、現場は笑いありのとても和やかな雰囲気に包まれていました」

さんしん班返信メールより

90歳近くになっても、一つの模様のために途方もない手間暇をかけて機を織り続ける職人さんの笑顔。

その気の遠くなるような手仕事に対する、見学者としての深い感嘆。 彼らは現場で、失敗などしていませんでした。職人さんの人生に深く触れ、しっかりと想いを受け取っていたのです。

ではなぜ、最初の議事録はあんなにも無機質だったのか。

それは「個人の感情や現場の熱量なんて、報告書に書く必要がない。ファクトが重要」と、無意識にブレーキをかけ、「感情」を削ぎ落としていたからかもしれません。

私のたった一つの問いかけが、その重たい鎧を打ち砕きました。

「好きだから織り続ける」「子どもの帰りを家で笑顔で待ちたいから」。ビジネスのフレームワークには収まりきらない、その生身の人生と感情こそが、人を巻き込み、地域を動かす最強の原動力になるのです。


◆一月遅れのチーム名と、答えなき舞台へ

「あなたの職場でも、同じことが起きていませんか?」

優秀な部下が作ってくる、完璧でロジカルな企画書。もしそれに「何か物足りない」と感じたら、一度こう問いかけてみてください。

「君は現場で、誰の、どんな情熱に触れてきたんだ?」と。

その鎧の下には、熱い心を持った大人が隠れています。

自らのチーム名を、楽しさや親愛を意味する「Peace」と名付けたさんしん班は、感情を解放し、ついに血の通った「当事者」へと覚醒しました。

圧倒的なスピードで動くてぃーだ班、うみんちゅ班、理屈をすっ飛ばして野生の勘で壁をこじ開けるシーサー班、そして情熱を解放したさんしん班。

8月12日、地域資源を一つに決定するという「答えなき舞台」へ向け、彼らがどんなワクワクする決断を下すのか。本当の勝負は、ここから始まります。


まだ何も、決まっていません。

読谷山花織の70代の職人さんの笑顔も、20年間家族のために織り続けた母の想いも、彼らはまだ、一つの形にできていません。

優秀な実務家の鎧を脱いだ大人たちが、次に向き合うのは、答えなき舞台です。

Peaceという名前に、彼らがどんな覚悟を込めていくのか。

その続きを、私はまだ知りません。

最後までお読み頂きありがとうございました。
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✳️予告
さんしん班の物語の翌日、今度は別の班の視点から同じ嵐を見つめます。地方創生番外編②、明日公開します。


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