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“Hello”から始まった恋—スポーツクラブで出会った彼が、止まっていた時間を動かしたー第2章

※この物語はフィクションです。
登場人物・団体等は実在のものとは関係ありません。

あらすじ
夫と別居中の40歳の香織は、スポーツクラブで働きながら毎日を淡々と過ごしていた。そんなある日、カナダ人のジョンと出会う。彼の明るい笑顔に惹かれ、そして香織は英語を学び始める。

言葉や文化の違いに戸惑いながらも、少しずつ距離を縮めていく二人。ジョンのまっすぐな優しさは、自信を失っていた香織の心を少しずつ癒やし、止まっていた時間を動かしていく。

しかし、大人だからこその現実や、それぞれが抱える事情は、二人の恋を思いがけない方向へ導いていく――。

恋を通して「自分らしく生きること」の意味を見つけていく、一人の女性の再生を描いた、大人の恋愛小説。

第2章 あなたをもっと知りたい


あの日、英会話教室で偶然会ったジョンは、目を丸くしていた。

「Hi ! Kaori~ What a surprise!」

「Hello~ John.」

私もびっくりだった。

――これから、講師と生徒として会えるんだ。

お互いに微笑み合いながら、握手をした。

大きい手だった。

いつもジョンは、スポーツクラブでランニングしたり、バーベルを持ち上げたりしている。

鍛え上げられた腕や肩を見るたびに、そのたくましさにドキッとしていた。

「How are you doing?」

「I’m excellent !」

少し前まで緊張していた英語の挨拶も、だんだん自然に言えるようになってきた。

英会話教室でのジョンはとても輝いていた。

いつもはトレーニングウェアでリラックスしている姿を見ているが、

講師としてまじめな表情で指導していると、

横顔が凛々しい。

――そんなことばかり考える不謹慎な私。
ちゃんと勉強しないと、40歳にもなって恥ずかしい。

グループレッスンは他の生徒さんとも楽しく会話できて楽しい。

でも予習してきたはずなのに、わからない単語があってスラスラと話せない。

そんな時でもジョンは優しい。

「Kaori, Take your time.」

ゆっくりでいいよなんて、優しいね。

しどろもどろになりながら、なんとか自分の番をこなした。

額に汗をにじませながらも楽しいひとときを過ごせた。

ありがとう。ジョン先生。

人生の楽しみとはこういうことなのかな・・なんて。
ひとりでぶつぶつ独り言をいいながら、今日も教室を後にした。

ーー数週間後、スポーツクラブの受付で一緒に働いている若い女の子から声をかけられた。

「香織さん、今度レオとジョンと4人でランチ行きませんか?」

「え?」

話を聞くと、彼女はジョンの友人のレオが気になっているらしい。

二人きりでは緊張するから、一緒に来てほしいと言われた。

――つまり、ダブルデートみたいなもの?

そんな言葉が頭をよぎり、少しだけ胸がざわついた。

同僚といっても彼女は20代。私は40歳。

しかも夫と子持ち。

いいのかな。でも友人たちとのランチだし、そんなに深く考えなくてもいいのかも。

当日、待ち合わせ場所にいたジョンは、私を見ると嬉しそうに手を振った。

「Kaori ~」

その笑顔をみただけで、私も自然と微笑んでしまう。

レストランに入る時にはドアを開けて、さりげなく背中を押された。
ーーやはりエスコートが上手なんだ。

席に着くと、レオと女の子が真向いに座った。

自然と私はジョンの前に座った。

ランチメニューを選ぶのさえも楽しいひとときだ。

英語の得意な同僚がレオとジョンに話しかける。

聞き取れないフレーズに戸惑っているとジョンは優しく、

「ダイ・・ジョウブ」

片言の日本語で微笑んだ。

料理が運ばれてくる間も、ジョンは私にいろいろ質問してきた。

好きな食べ物。

休日の過ごし方。

昔やっていたスポーツ。

たどたどしい英語でも、ちゃんと聞こうとしてくれる。

それが嬉しかった。

「You are kind.」

たったそれだけの言葉なのに、胸の奥が熱くなる。

もう何年も、こんなふうに女性として見られることなんてなかった。

いつの間にかこんな気持ち、
ーー自分には遠いものになっていた。

仕事をして、食事を作って、一日が終わる。

そんな毎日だった。

―なのに今、目の前の男性の笑顔一つで、こんなに心が揺れる。

自分でも戸惑っていた。

ランチの帰り際、ジョンが言った。

「I had a great time.」

「Me too.」

するとジョンは少し照れたように笑って、

「May I have your line ID?」

と聞いてきた。

私は一瞬だけ迷ったあと、小さくうなずいた。

その夜、ジョンからLineが届いた。

「Did you get home safely?」

ただ、それだけ。

なのに私は、何度も画面を見返してしまった。

それから少しずつ、やり取りが増えていった。

「Good morning.」

「How was your day?」

短い英語ばかりだったけど、うれしかった。

返信する時には、私の脳みそをフル回転させた。

文章を打っては消し、また打ち直す。

たった一言送るだけなのに、学生みたいに緊張している自分が可笑しかった。

そんなやり取りが日常となったある日、
ジョンからこんなLineが届いた。

「I love talking to you.」

胸がドキッとした。

けれど、“love”という言葉に過剰反応してはいけない気もした。

海外の人は、日本人より気軽に言うって聞いたことがある。

――きっと深い意味じゃない。

そう自分に言い聞かせた。

でも、その数日後。

今度は、

「I love being with you.」

そして翌日、

「I love thinking about you.」

スマホを持つ手が止まった。

鼓動が速い。

画面を閉じても、また開いてしまう。

――どういう意味?

ただの好意?

外国人特有の表現?

それとも……。

考えれば考えるほどわからなくなる。

嬉しいはずなのに、怖かった。

四十歳にもなって、こんな言葉に心を乱されている自分が信じられなかった。

若い頃みたいに、素直に飛び込めない。

年齢。

立場。

文化の違い。

いろんな現実が頭をよぎる。

それでも。

ジョンからのLineを読み返すたびに、止まっていた時間が、少しずつ動き始めている気がした。

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▶【第3章 いつも守ってくれる存在】はこちら





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げんちゃん|元美容部員×現役エステティシャン×コスメコンシェルジュ 応援して頂ければ幸いです。これからの励みになりますので、よろしくお願いします。