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結婚指輪をはめた瞬間、左手に未来がそっと止まった。


オーダーしていた
結婚指輪を受け取りに、
「なつ」と南へ車を走らせた。

この日を、ふたりで楽しみにしていた。

早速、店で指輪を受け取る。
「なつ」は左手の薬指にはめると、
目を丸くして言った。

「している感じがしないくらい、ぴったり!」

その笑顔を見て、僕も自分の指輪をはめる。

その瞬間だった。

胸の奥に、静かな
高揚感が広がった。

派手な感動ではない。

少年の頃、捕虫網で初めて
蝶を捕まえた、あのときの
ような感覚だった。

胸が少しだけ高鳴り、
しばらく見つめていたくなる。
あの頃の気持ちが、不思議とよみがえった。

店を出ると、
「なつ」は何度も何度も、
ふたりの左手を並べて写真を撮った。

「ほら、見て。」
そう言って、自分の薬指を僕に見せる。

少し時間が経つと、また、
「ほら、見て。」

そのたびに、僕も自分の左手を差し出す。
「ほら、見て。」とやり返してみる。

いい歳をしたふたりが、
まるで子どもみたいに笑っていた。

夜は、やきとり屋で
ささやかな祝杯をあげた。

僕たちは出かけるとき、
ほとんどいつもペアルックだ。

今回は、どこかだけ
合わせた"なんちゃってペアルック"。

帰りには、お揃いではないけれど、
それぞれ気に入った服を一着ずつ買った。

同じものを選ぶ日もある。

違うものを選ぶ日もある。

それでも、一緒に歩くことは変わらない。

左手の小さな輪は、ただの指輪ではなかった。

今日から先の時間を、
ふたりで歩いていくという約束が、
静かに形になったものだった。

少年の日、
胸を躍らせながら見つめた一羽の蝶。

あの蝶に
名前をつけるなら、「未来」。

そして今日、
その未来は
僕の左手に止まった。


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澪(みお)│人生探究家│📖note実験室|フォロバ100% この記事が、あなたの心にちょっとでも寄り添えたなら、サポートしていただけると、とても励みになります。 いただいたチップは、これからの執筆活動と、同じように悩む誰かへの物語づくりに大切に使わせていただきます。