採用サイトがなぜ重要かを整理してみる~前編~
「採用サイトって、そこまで大幅に変える必要ありますか?」
最近、ある採用企業さまとお話ししていた際にいただいた言葉です。
正直、この言葉を聞いたときに明確に回答できない自分がいました。
その採用企業さまの採用サイトは明らかに動線もよりスムーズな動線にもできるし、情報も他社様と比較して不足していて、アップデートのポテンシャルばかりでしたが、いざ「大きな金額をかけてまで今は採用課題があるのか?」というとそうでもなく、明確な回答ができませんでした。
そのため、採用企業さまとしては「そこまで問題はない」と感じている。
ただ、個人的にはこのままではいけないのではないか、というモヤモヤにかられ、このズレってなんなんだろうと感じていました。
そこで、今回、以前公開したブログ含めて、かなりがっつりちゃんと整理してみたところ、その採用企業さまが採用サイトに対する認識と、私自身が今アップデートしている考え方そのものがズレていることが原因だと気づきました。
ここでまずお伝えしたいのは、
採用サイトは「情報を構造的にわかりやすくまとめておく場所」というのも事実そうなのですが、一番の理想の姿としては「求職者さまが不安を減らし、自分なりに納得して意思決定するための設計の基盤」のためのチャネルということです。
今回は、ポテンシャライトでこれまで言語化してきた内容と、採用サイトの設計に関する知見を掛け合わせながら、
・ そもそも採用サイトとは何なのか?
・ なぜ作り込む必要があるのか?
をポテンシャライトのこれまでの歩みや、先日参加させていただいたベイジさんのセッションを経て、本腰入れて整理してみたいと思います。
本ブログかなりボリューミーになりますので、前編後編で分けさせていただきます。
前編では採用サイトの前提部分について詳しくお話ししていきます。
後編も含めて全部で7つの構成でお話ししますが、最終的にお伝えしたいことは一つの構造でまとめられます。
採用サイトを「意思決定設計の基盤」として機能させるためには、以下の3段階の設計が必要だということです。
▼採用サイトをより極めるための構造
・段階①:「不安解消と信頼形成」を意識すること
- 求職者さまは期待ではなく不安からスタートしている。まず不安を潰し、信頼の土台を作ることが前提になる。
↓
・段階②:企業の魅力を「自分ごと化」してもらうこと意識する
- IFA × バリュープロポジションの設計によって、会社の魅力を「求職者さまにとっての意味」として届ける。
↓
・段階③:「採用広報やその他採用コンテンツとの接続」の場であること
- 採用サイトは採用チャネルの拠点場所のようなものとして、媒体・スカウト・採用広報などの実施している施策で生まれた関心を意思決定まで繋げること。
私自身、RPOを主軸に行っていたこともあり、どうしても採用サイトは段階②の「採用企業側の魅力をいかに求職者さまに伝えるか」ばかり目的として考えてしまっていました。
しかし段階①である前提部分の「不安の解消」が抜けていると、どれだけ魅力を並べても「なんとなく良さそう」とかそもそも魅力として捉えてもらえない、という事態が起こってしまいます。
また段階③である採用広報やその他採用チャネルとの接続が設計されていないと、採用サイト単体では孤立した情報置き場になってしまいます。
この3つの段階の構造を念頭に置きながら、各章を読んでいただけると、採用サイトの設計に必要な全体像がより鮮明に見えてくると思います。
1. 採用サイトは「求職者さまから判断される場所」になる
まず大前提としてお伝えしたいのが、採用サイトはただただ「情報を載せる場所」ではない、ということです。(そう認識してしまうと危険、というイメージ感です。)
そもそも採用サイトとコーポレートサイト(ホームページ)との違いとは?という質問もいただくため、この点については別の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください💁♀️
今回の視点では、採用サイト(採用ページ含め)作成の「目的」という観点でお話しします。
そもそも、採用において企業と求職者さまの接点には以下のフェーズがあり、それぞれのフェーズごと、いろんなフェーズがあると考えています。

上記の内容は、元々弊社で定義していた「採用活動のフロー」です。

図②は、この採用活動のフローをさらに分解し、
「求職者さまがどのように意思決定しているか」
「その意思決定の前後で、企業としてどのように興味を持ってもらうか」
を整理したものになります。
ここで新たに加えたのが、「求職者さまの意思決定タイミング」という軸です。
この軸で整理すると、図①のフローは大きく、
意思決定「前」
意思決定「形成」
意思決定「確定」
の3つに分類できると考えています。そして、まず、採用求職者さまの行動をシンプルに分解すると、
1. 企業を知る(きっかけとしてはSNS・媒体・スカウトなど)
2. その企業の行っていることを理解・検討する
3. 興味を持つ(求人票や採用サイト、採用広報などの記事を見る)
4. 話を聞いてみる
5. 応募する
6. 選考を受けながら見極めをする
7. 内定後、入社を検討する
8. 入社する
という流れになります。
この流れで言うと、採用サイトは、
1. その企業の行っていることを理解・検討する
2. 興味を持つ(求人票や採用サイト、採用広報などの記事を見る)
と
6. 選考を受けながら見極めをする
7. 内定後、入社を検討する
と言う応募前と応募後に閲覧されるものになります。
つまり表で言うと、「なんとなく気になる」と言う意思決定「前」から選考中の意思決定「確定」に変わる全てのポイントに存在しています。
採用サイトまで見に来られている求職者さまはすでに一歩踏み込んでいるということと、応募後もより理解したいと言う理由で採用サイトは閲覧されるわけです。
採用サイトを見に来てくれている方は、たまたま流れてきた媒体での求人を流し見している状態とも、スカウトをなんとなく開いた状態とも違う。「この会社ちょっといいかも」と思って、自分の意思で見に来ている状態です。
だからこそここで起きることは非常にシンプルで、「よくわからない」と感じれば離脱し、「他社と同じに見える」と比較で負け、「判断材料が足りない」と保留になります。
つまり採用サイトが弱いと、それまでにかけてきた媒体費やスカウトの工数、採用広報の努力がすべて「判断されないまま終わる」という状態が起きてしまうのです。
採用サイトとは、求職者さまがこの会社に進むかどうかを決めるための場所であり、この場所を軽視している状態が「採用サイトはそこまで重要ではない」という認識をしてしまっている理由の正体です。
今回のお話のポイントとしては、採用サイトは「単なる情報置き場」ではなく、求職者さまから“この会社に進むかどうか”を具体的に判断されている、もっともシビアな接点だということです。
2. 求職者さまは「期待」ではなく「不安」から意思決定を始めている
前回のベイジさんの採用サイトセッションに伺って、自分自身アップデートされたのが、採用サイトを設計する上で一番見落とされがちなのが「求職者さまは期待ではなく不安から意思決定を始めている」という前提です。
企業さま側の目線で立ってしまうと、「自社の魅力をどう伝えるか」にフォーカスしやすくなってしまいますが、実際の求職者さまの頭の中はもっとシンプルで、「この会社大丈夫か?」「入って後悔しないか?」という疑念からスタートしています。
その不安が解消された後に、自分自身の希望をどれだけ叶えられる環境か、を確認しに行きます。
例えば、年収を理由に転職活動をしている方がいたとして、どれだけ働き方や事業内容が自分にとって魅力的でも、年収記載が自分の理想からかなり低い場合にはその先興味を持つ可能性は少ないでしょうし、
人間関係に悩んで転職をした方にとって、人間関係がイメージできるような写真やインタビュー記事がない場合には不安に感じるでしょうし、
このそれぞれが持つ不安の状態の求職者さまに対して、いきなり魅力を訴求しても、正直ほとんど刺さりません。(もちろん、その魅力が不安を解消できる場合もあります)
ここで重要になるのが、TIMと求職者さま体験(CX)の考え方です。
2-1. TIMの話:ターゲットの「インサイト」に刺さるメッセージにする
ポテンシャライトでは、TIMと言う職種に特化した魅力設計支援を行なっています。
TIMについて詳しく記載している記事がありますのでこちらをご覧ください。
ここでお伝えしたいのは、ただ職種の魅力を採用サイトに盛り込みましょう!ではなく、
企業が採用したいターゲット像を設定して、そのターゲットが現職で抱えているであろうインサイト(転職活動のもやもや)を想像し、そのインサイトに響くようなメッセージを訴求すること。
ここが重要なのです。
インサイトとは何か、をもう少し丁寧に説明します。
転職動機には、大きく3つの層があります。

採用サイトのメッセージ設計において、注意しなければいけない点は「顕在動機」に向けた訴求をしてしまっていないか?という点です。「成長できます」「裁量があります」「事業フェーズが良いです」という言葉がその典型です。
しかし、これらは求職者さまがすでにイメージできている言葉です。
だからこそ、読んでも「他の会社も同じことを言っている」という印象に終わってしまう。
インサイトを突くとはどういうことか、具体例で見てみましょう。
例えば、SaaS系企業のビジネス職採用を例にとると、同じ「営業経験者」というターゲットでも、
・大手SaaS出身の方
- 「役割が細分化されすぎていて、自分の仕事が事業全体にどう貢献しているかわからない」という閉塞感を持っている
・大企業・SI出身の方
- 「ソリューション提案はできているが、自分がプロダクトを育てている感覚がない」という物足りなさを抱えている
・20代個人営業出身の方
- 「数字は作れているが、力技の営業から脱却したい」という焦りがある
という形で、それぞれ異なるインサイトを持っています。
同じ「営業職募集」という文脈でも、誰のインサイトに向けて語るかによって、まったく異なるメッセージになるわけです。このインサイトを起点にメッセージを設計することが、今回お話ししている「不安を解消する」というポイントと直結します。
不安とは言い換えると「自分のもやもやが解消される環境かどうかわからない」という状態です。インサイトに向けたメッセージは、そのもやもや自体を言語化して「あなたのその感覚、わかります。だからこそうちはこうなんです」と伝えるアプローチです。
また、インサイトは細かく分類すればするほど奥が深く、年齢・業界・職種・レイヤーによってもまったく異なります。
だからこそ、自社が求めているターゲットをある程度先に設計しておくことで、そのターゲットに沿ったインサイトを絞り込むことができ、より鋭利に魅力を伝えられるようになります。
このインサイトを考えると言うのが今回お話ししている「不安を解消する」と言うポイントです。
とはいえ、インサイトは細かく分類すればするほど果てしないものです。
年齢別でも抱えるインサイトは変わってくるでしょうし、業界や職種、男女、レイヤーでも変わってきます。
だからこそ、自社が求めているターゲットをある程度設計しておくと、そのターゲットに沿ったインサイトを設計することができ、より鋭利に魅力を伝えられます。
補足⚠️
採用サイトにおいてはターゲットを絞りすぎることは推奨していません。なぜならターゲットを絞りすぎるとその分N数が少なくなるからです。
だからと言って、万人受けを狙うことが正しいとも限りません。
これはその企業さまのこれまでの採用活動における課題感によってどれくらいターゲットを絞った方がいいのかは変わってくるかと思いますので、それはぜひヒアリングを通じて一緒に設計できたらと思っています。
2-2. 求職者さま体験(CX/OX):不安を一つずつ潰していく設計そのもの
ここでは別角度での不安を解消する、というお話をします。
そもそもCXとは、求職者さま体験のことを指します。
「認知」するタッチポイントから「内定受諾」するまでのタッチポイントは100を超えると言われており、過去ポテンシャライトが調査した際は、認知からカジュアル面談が実施するまでの間だけでもタッチポイント数は最大で70を超えました。
以下の図は一部のみですが、以下のフローで関わる全てがCXと思っていただけたらと思います。

その中で、
そのCXは大きく「採用企業さまが求職者さまに働きかける接点=受動型」と「求職者さまが自ら企業側の情報を取りに来る=能動型」に分かれます。
スカウトや求人票のように採用企業さま側から接触するものは受動型で、求職者さまはあくまで“受け取る側”です。
一方で採用サイトは、求職者さまが「知りたい」と思って自らアクセスする能動型のタッチポイントに該当します。
この違いがとても重要で、能動型のタッチポイントでは、求職者さまの期待値が上がった状態で接触が発生します。
「自分から調べに行ったのだから、何かしら得られるはず」という前提で見に来ている。
そのため、ここでの体験が悪いと心理的なダメージが大きくなります。
「たまたま見かけた広告が微妙だった」という体験よりも、「わざわざ調べたのに何もわからなかった」という体験の方が、はるかにネガティブな印象として残ります。
このときに起きていることを分解すると、まさに“不安に感じていたことが解消されなかった”という体験です。
つまりCXが悪いという状態は、そのまま「不安が増幅された状態」と言い換えることができます。
ここで最初の話に戻ると、CXはあくまで手段であり、最終的にやりたいことは不安を減らすことです。
だからこそ、CXを改善するということは、「求職者さまが抱える不安を一つずつ潰していく設計」と同義になります。
さらに踏み込むと、採用サイトはCXの中でもOX(オペレーション体験)の一部として機能しています。
OXとは、日程調整のスムーズさや連絡の丁寧さのような“採用企業さまの対応品質”を指しますが、採用サイトも完全に同じ文脈にあります。
例えば、
情報が整理されていて見やすいか
欲しい情報に迷わず辿り着けるか
応募までのフローがスムーズか
といった要素はすべて「この会社は求職者さまをどう扱っているか」という意味合いにもなります。
求職者さまはまだ応募していない段階であっても、「この会社はちゃんとしているのか」「求職者さまを大切にしてくれそうか」を無意識に評価しています。つまり採用サイトの体験は、単なる情報接触ではなく、「この会社に対して信頼していいか」を判断する材料そのものです。
ここまでを整理すると、採用サイトにおけるCXとは、「気持ちよく見れるかどうか」ではなく、「不安が減ったかどうか」で評価されるべきものです。そしてOXも同様に、「丁寧かどうか」ではなく、「信頼できると感じたかどうか」が本質になります。
だからこそ採用サイトの役割は、魅力をただ並べることだけではなくて、「求職者さまが抱える不安を解消し、信頼を形成すること」にあります。
この前提を外してしまうと、どれだけコンテンツを充実させても意思決定にはつながらず、「なんとなく良さそう」で終わってしまうサイトになってしまいます。
この章のポイントは、求職者さまはまず「不安」からスタートしており、TIMで設計した魅力やCX/OXの設計は、採用サイトにおいて、求職者さまの不安を一つずつ減らしていくために有効な手段という話ということです。
前編では、採用サイトが「求職者さまから判断される場所」であること、そして求職者さまは期待ではなく不安から意思決定を始めるという大前提をお伝えしました。その上で、TIMによってターゲットのインサイトに刺さるメッセージを設計すること、CX/OXの視点で不安を一つずつ潰していく設計の重要性についてご紹介しました。
後編では、採用サイトをさらに深く機能させるための設計思想として、
・求職者さまが「自分の軸で理解を深める場所」として機能させるための考え方
・ポテンシャライトが重要視する採用ブランディングの役割
・採用サイトが意思決定プロセスの「中心」として存在し続ける理由
・長期的な「資産」として機能させるための視点
について解説しますので、ぜひお楽しみに🌟
※当社の採用 / 人事組織系支援にご興味がある方は、ぜひお気軽にお声掛けください📣
著者:
HRパートナー ミネナホ
2022年12月より株式会社ポテンシャライトでHRパートナーとして採用戦略〜オペレーション業務など、幅広く採用支援を経験。
2026年1月より採用マーケティングサービス企画として、採用ブランディングならびに採用ブランディングの活用事例を推進中。
