着ぐるみとロボット ⑤美食の宴 連載恋愛小説
今日も今日とて、爆食鑑賞会@学生食堂。
本日のメニューは、スタミナカルビ丼。惣菜の小鉢2種が選べて、お財布にやさしいワンコイン。長屋は温泉卵ときんぴらごぼうを特盛どんぶりにのせ、いきおいよくかき込む。
「スキスキいうけど、どこがいいわけ」
向かいに座り間近でガン見する忍に、長屋はひとごとのように聞く。
理系男子ゆえ、解けないナゾが気になってしかたないのだろうか。
重くならないように、なるべくポップに。忍は頭の中で計算をめぐらせた。
「ええと、アタマとカオ?」
発酵ラボは、学内随一のブラック研究室との異名がある。
実験につぐ実験で、圧倒的に激務だとのウワサだ。博士課程2年にして中心人物となっている長屋将は、来年博士号を取得したら、製薬会社かどこかの研究職に就くのだろう。
「ごはん食べてるとこ見るのも、すき」
そんなエリートでも、風変わりな生物の扱いに困り果てているようだ。
教授からのじきじきのお誘いで、忍は先月、発酵食品パーティーにお呼ばれした。月イチで催されるその会は、美食家として有名な南部教授の主催で、参加者は発酵しばりで料理を持ち寄る。
酒の肴は、ぬか漬け、生ハムにイカの塩辛。アルコールは、日本酒、ビールに赤ワイン。納豆のねばねば丼や、鶏むね肉のしっとり西京焼き、野菜たっぷり豚汁。
どれも栄養豊富で、おいしいものばかり。
忍は、とっておきの豚キムチを持っていった。
「あれで落ちないオトコはいな……あ」
手の内をさらしてしまうなど、うかつであった。
「教授落として、どーする」と長屋からは、もっともなツッコミをちょうだいした。
今月も同じ品を所望されたので、忍ははりきって大量にこしらえた。
豚バラ、とうふ、きのことネギに、中華だしとみそ、砂糖を加え、炒める。最後に投入するキムチは、どのメーカーのものでも、深みと旨味のある、なんともいえぬ味に仕上がるのだ。
キムチ&みそという、愛してやまない発酵食品同士のコラボ。教授はご満悦で、忍は株を大幅に上げたのだった。
「あの髪の毛ふわふわ豚キムチガールは?」
「河嶋忍ですか」
「あー、そうそう。忍ちゃん。ん? セクハラかな」
「名字で呼んでください」
「お? そうか、長屋くんの心中穏やかじゃないんだ。ゴメンゴメン」
教授がにやにやしながら小指を立て、長屋は能面のような表情になっていた。
その道の第一人者でありながら、超フレンドリーな南部教授。交流会が大好きで、参加者が増えに増え、収拾がつかなくなりつつある。
「なんの話ですか?」
「忍ちゃん、よくきたね。豚キムチは?」
タッパーをタワーのごとく重ねて披露すると、教授は大喜び。家に持って帰るぶんを「今のうちに」とどけておく、入れ込みよう。いそいそと、研究室の冷蔵庫にしまっている。
長屋になにか言われそうな気配がして、忍は笑ってごまかした。
「ほら、外堀を埋めろっていうし……あ」
(つづく)
▷次回、第6話「苦しい恋」の巻

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