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着ぐるみとロボット ①失恋活動 目次 全15話 連載恋愛小説 完結済み 再掲

 ひとめぼれをしたその日に、忍は失恋した。
 彼の名前は、ハッコくん。発酵学研究室の公式キャラクターで、もふもふの紫モンスターである。
 忍の所属しているロボティクス研究室とちがって、そのラボの知名度はあまり高いとは言えない。それを挽回ばんかいすべく日々奮闘している、けなげな毛むくじゃらなのだ。

 中の人が誰なのかは、比較的すぐに判明した。
 忍の友人、宮城しおりの先輩だった。忍としおりは、ともに大学院入試をパスし修士課程1年だ。半年経つと、さすがに右往左往することは減り、自分のやるべきことがみえてきた。
 学部生の頃は、講義を受けたり定められたテーマでレポートを書いたりと、受け身なことが多かった。今は興味のある研究室に入れて同じ志の諸先輩方に囲まれ、忍はやりがいしか感じていない。

「ラボの飲み会あるんだけど、来る?」
 片思いはダダ漏れなため、こうしてしおりは背中を押してくれる。
 声も大きくてやたらと滑舌がいいせいか「全然忍んでいない」とよく人に言われる。
 リケジョらしからぬいでたちだと教授につかまり、前半はほとんど彼と接触できなかった。
 クールビューティーなしおりくらいになれば、シンプルな服こそ本人を引き立てる。が、忍が着れば、ただの地味な服。テンションの上がるきれいな色の服を身にまとい、自分をゴキゲンに保つようにしている。

 宴の終盤になって、チャンスがめぐってきた。
 長屋将の隣に座っていたしおりが、電話に出るため席を立ったのだ。もちろん、彼女は忍に目配せするのを忘れなかった。
「こんばんは。長屋さん」
 どーも、と反応はしてくれたが、あきらかに部外者なため不審そうな目をされる。しおりが誘ってくれたこと、ロボ研の人間であることなど、手短に種明かしする。
 なぜ参加したのかという理由には「長屋さんとお近づきになりたくて」とストレートに伝えてみた。
「あ……そう」
 低体温男子だー、と忍はひそかに興奮する。

 長屋将が塩対応なのも、無理はない。彼の視界には、宮城しおりしか入っていない。それを承知で交流しようというのだから、忍のあきらめの悪さはピカイチだった。
 電話相手に呼び出されたらしく、しおりは宴会を中座して帰った。忍にしてみれば、願ったりかなったりの展開だった。

(つづく)
▷次回、第2話「忍、飲みに誘う」の巻

#恋愛小説が好き #小説 #賑やかし帯


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