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着ぐるみとロボット ⑬敗北宣言 連載恋愛小説 

874字

 いつ店を出たのか、なにがどうなってここにいるのか。忍は長屋の部屋のソファで目を覚ました。
「え。まさか、いやがる女子を無理やり……」
「一緒に帰るって聞かなかったの、だれ」
 あまりに眠いと、自制心が働かなくなるのだ。
 コーヒーカップを手渡しながら、徹夜の限界値を探るのはやめてほしいと、彼は言う。
「うん、わかった。なんで?」
「ほかの男に河嶋拾わせたくない」
 寝起きアタマでは理解が追いつかず、リピートをお願いする。
「河嶋をだれにもとられたくない。好きだつってんの」
 省略もなく、すてきな言い換えと豪華なおまけつき。

 長屋の顔をぺたぺたさわってみた。
「夢じゃない。つか、アルコールいらずかよ……」
「とるとかとらないとか、モノじゃないよ?」
「すみません、失言でした。忍さん本人を尊重するよう、努めます」
 アカデミックの世界はグローバルゆえ、ジェンダー意識に敏感である必要がある。今後も活躍してもらうためには、そこんとこを教育すべきかもしれない。

 長屋の指先に自分の髪がくるんと絡まり、はずれない。それを見ただけで、なぜか忍の顔が赤くなった。
 きっちり同意をとられたあと、キス&その先へ、スムーズに移行する。
「フラれたから、やけになったわけじゃなくて?」
「そっちこそ、ハッコくんマジック消えたけど、いいの?」
 見くびってもらっては、困る。こちとら、中の人の中身に惚れたのだから。
「今度は、三枝攻める?」
 三枝とは、忍がまちがえて抱きついた新ハッコくんだ。
「そんなことしないし。……え? 私、攻めてた?」
「こっちは、防戦一方ですよ」

 ただの「スキ」ではなくて、ヤバめの重い「好き」だということ。
 ほんとうに大丈夫なのか、後悔しないのか。しつこく確認していたら、唇で黙らされた。
 それにしても、キスって、こんなに気持ちよかったっけ。夢中で息を交わしながら、忍は不思議な思いにとらわれる。相手も求めていないと、こうはならない。
 いつ気持ちが傾いたのか、聞いてみた。
「浸食されてた、いつのまにか」
「カビ扱いやめて」
 ふっと笑いあい、ふたりは集中しなおした。

(つづく)
▷次回、第14話「忍、杏仁豆腐をねだる」の巻

#恋愛小説が好き #小説 #賑やかし帯

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