浮世散歩 (神保町、駿河台、小川町)
元から東京に行くことは決まっていたのだが、ある方のnote記事を見て、時間を調整して神田古本まつりに足を運ぶことにした。
まつりは過去に何度か行ったことはあった。まつりがやっていなくても、いまだに神田、御茶ノ水界隈は年に一度くらいは足を運んでいる。
その記事の写真には僕が探している本が写り込んでいた。それが決め手だった。
ネット普及以前は、自分で足を使うか、仲間から情報をもらう。それが僕らの情報収集とブツの入手方法だった。
「お前アレ探してなかったっけ?神保町の店にあったぞ」
その記事からは、そんな風に情報を投げてもらったような気がした。
時は令和。ネット上の情報なのだが、1990年代的な趣を感じたのだった。
都営地下鉄の神保町駅で降りて、古本まつりを物色。目的のものは無事に手に入れることができた。(入手したものに関しては、「過日の釣果①、②、③」に書いてあるので割愛)
合間には過去に行ったことのある。「さぼうる」に足を運んだが、その日は残念ながら休業だった。

ここには何かエピソードがあったような気がしていたので、訪れれば何か思い出すと期待したが、店の前ではまったく何も浮かばなかった。
昼食はこの界隈でカレーと思っていたが、有名店はどこも混んでいた。そこで駿河台方面に移動して「カロリー」に行こうと思い。移動した。しかし、「カロリー」も老舗、並んでいるのを見て断念。(浮世之介は並ぶのが嫌い)
そのまま御茶ノ水駅方面まで歩いていった。街の雰囲気はあまり変わっていないような気がしたが、半端に小綺麗さを感じるのは、明大、日大の校舎がどれも新しくなっていたからだろう。
ただ表通りに面しているのに、全く佇まいの変わらない店があった。

ここは僕が高校生の頃からたぶん変わっていない。他の老舗楽器店も残ってはいるが、改装したり、御茶ノ水内で移転したりしている。構が全く変わっていないのはここだけの気がする。
ちなみに高校生の時に、人生で2本目のエレキギターを買ったのはここだった。そのストラトキャスターはまだ普通に使っている。
流石に早い時間から歩き回ったので、何か食べようと思った。そこで目に入ったのは下倉楽器のすぐそばの「富士そば」だった。

特に若い頃は、服だ、単車だ、本だ、レコードだ、楽器だと金をかけていて、そちらに必死で食べるものにはあまり拘らなかった。「富士そば」で食べるのは贅沢な方だったかもしれない。恋人と一緒じゃなければ食べないことも平気だった。

コロッケ蕎麦なんて、なんて贅沢なんだろう。昔より高くなった気もするが、並ばなくて良いし、すぐ出てくるし、安いし、相変わらず最高である。
御茶ノ水駅も綺麗になっていた。新御茶ノ水駅方面に歩いて行くと、見慣れた看板に出くわした。

止せば良いのに、まあ見るだけと足を踏み入れたが最後、5枚ほどのレゲエの7インチ盤を「抜いて」帰ってきた。
僕らは、本でもレコードでも「抜く」という言い方をする。まあ棚から抜くという意味だが、わざとこの卑猥な言い方をする。
「ちょっと寄って、抜いてく?」
僕らの隠語だ。この日は「抜きすぎ」だろう。
そこから小川町方面に坂を下っていった。この辺は昔から静かなイメージだ。人がいなくて歩きやすい。
靖国通りに出ると、再び、古書まつり横目に見ながら神保町駅の方へ向かった。
この時も「ポルの王子さま」の前は通ったが、手に取ることなく通り過ぎた。
そして僕は神保町をあとにした。
僕はたまに陥ってしまう感覚がある。
ミレニアムより以前で時間が止まったままのように感じるのだ。
1990年代に10代、20代を過ごした方にはわかるのではないだろうか?
この日はその感覚が常についてまわっていた。
