【長編小説】獣戦記(アポカリプス)第十一話 勝者の重み
銀牙の間にミラの泣き声が響く
——コンッコンッ……
「勝者、ミラ・グレイ」
その言葉は、 まるで刃のようにミラの胸を貫いた。
ミラはゲイルを睨みつける。
「こんなの……勝利じゃない…… こんなの!」
ゲイルは淡々と続けた。
「ルガ・ハウルは倒れた。そして、トルン・ファングも……自ら命を絶った」
「彼は、ルガの意志を継ぎ、 お前に未来を託した。その覚悟は、狼族の誇りに値する……」
「うるさい!トルン、お願い目を開けて……」
だが、トルンはもう動かなかった。
その拳は胸に突き刺さり、血が流れ、その顔には、静かな笑みが浮かんでいた。
ガゴォン…ギギギギ…
現れたのは、狼族の現族長、ヴォルグ。
白銀の毛並み、 鋼のような瞳、 威厳と静寂を纏った男。
ミラは息を呑んだ。
「ヴォルグ族長……」
ゲイルは一歩下がり、ヴォルグに道を譲った。
ヴォルグはゆっくりと歩み寄り、ミラの前に立った。
「ミラ・グレイ。お前は、選ばれた。」
ミラは震えながら頷いた。
「違う……私は選ばれたんじゃない!ただ譲ってもらっただけよ……」
ヴォルグはルガとトルンの亡骸に視線を落とした。
「2人は……お前にすべてを託した。その意味を……お前は理解しているか?」
ヴォルグは目を細めた。
「お前は、彼らの死を背負い、我らの代表として一月後に行われる戦いに挑む。ここで積み重ねた、痛みを、悲しみを誇りとして抱けるか?」
「覚悟を決めろ!ミラ!亡き者の意思を継ぐ、それこそ狼族の誇り!お前の兄、ルガ、トルンの意思を命を繋ぐんだ!」
ミラは拳を握りしめ、決意を固めた表情で答える。
「……はい。私は、ルガの優しさも、トルンの覚悟も、すべてを胸に刻みます……」
ヴォルグは静かに頷いた。
「よし、ならば、これを……」
彼は腰の剣を抜いた。
その刃は、銀牙の間に伝わる“継承の剣”。
「この剣を受けよ。それは、血と誓いの象徴。お前が狼族の未来を担う者である証」
ミラは剣を両手で受け取った。
その瞬間―、銀牙の間に、蒼銀の光が満ちた。
ミラは剣を胸に当て、 静かに誓った。
「私は、ミラ・グレイ!狼族の代表として命を、絆を、誇りを懸けてこの戦いに勝利することを誓う!」
「うむ、その誓い、確かに聞いた。お前は、狼族の魂を継ぐ者だ」
ゲイルも頷いた。
「ミラ・グレイ。お前を、正式に代表として認める」
銀牙の間に、 静かに光が差し込んだ。
天井の裂け目から、 月の光がミラを照らす。
その姿は、まるで2人の魂が見守っているかのようだった。
ミラはルガとトルンの亡骸に跪き、 そっと手を合わせた。
「ルガ、トルン……ありがとう」
涙はもう流れていなかった。
その瞳には、確かな決意が宿っていた。
(私は、あなたたちの想いを背負って生きる……必ず勝つから……見てて)
ミラはゆっくりと立ち上がり、 双剣を腰に収めた。
一つは亡き兄の形見の剣、もう一つはルガ、トルン、一族すべての想いが託された“継承の剣”。
銀牙の間の扉が、 静かに開いた。
ヴォルグが一言だけ告げた。
「行け、ミラ。代表として、必ず生き残れ。」
「……」
2人の想いを背負って。
1か月後、決戦の日。
天を裂くような轟音とともに、獣王神アル=ラグナが告げる。
「50人の戦士たち。よくぞ集まった。たった今からこの世界の新たな支配者、十二支を決める戦い——“アポカリプス”の開戦を宣言する。」
「戦いの舞台は、我が創り出した異界、神獣界(しんじゅうかい)。ここは火山、氷原、深森、天空島、大海など、あらゆる環境が混在する。」
「ルールはただ一つ。“生き残れ”」
「最後まで生き残った十二人の種族にこの世界を導く力を与える。」
ミラは深く息を吸い、胸の奥に宿る恐れと決意をひとつにまとめた。
(行くよ、ルガ、トルン。狼族の誇り、私が証明してみせるから……)
その瞬間、彼女の足元に蒼白い光が広がり、召喚陣が起動した。
50人の代表が、戦いの舞台、神獣界の中心へと集結する。
50人の獣による激しい戦いが今始まる……。
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