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漫画家アシスタント物語 諦めま章〈12〉 デジタル化に怯えた20年間!

 
《 写真上: 新宿西口、大学の講師会が終わって帰る時に‥‥2016年撮影 》
            < この諦めま章〈12〉は、文庫本約12ページ分 >
 
 

「諦めま章」は、独立した「章」ですので、「第9章」の続きではありません。 ほとんどは、雑多な回想ですが、一部連続していますので、やはり、「諦めま章〈1〉」からお読みになる事をお勧めいたします。
 
それから‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
 


               その22

 
   《 漫画家アシスタントが・・・女性講師に言いたかった事 》


以前、拙ブログで、大学で漫画を教えている女性講師の話を書いた事があります。

私が講師をする直前に、学校の方へ参考のために授業を見学したいと申し込んだ時に紹介された女性の先生の話です。

その先生が、漫画制作の授業で、袴姿に、模造の日本刀を持って‥‥

「 べんせい~粛々しゅくしゅくぅ~~~ 」

‥‥と、詩吟にそって剣舞を学生たちに見せた‥‥‥‥ あの先生です。

実際に私が学校へ出かけていく様になってからは、スケジュールの関係でほとんど顔を合わせる事はありませんでした。( メールで何度かやり取りはあったのですが )

ただ、髪の毛の長くてスタイルのいい人だな‥‥ 程度の印象しか残っていなかったのですが‥‥‥‥

ある日、その長い髪の毛をバッサリ切っていたのです。 かなり短いショートヘアになっているのにちょっとビックリしたのですが、意外と、若返ったような感じで‥‥‥‥

『 お‥‥ 可愛い‥‥ 』

‥‥などと思ったのです‥‥‥‥ しかし‥‥‥‥‥‥

もちろん、大学の先生や職員がいる前でそんなアホな感想を口に出来るわけありません。

しかし、ヘアスタイルを大胆に変えた女性に何も言わないのは返って失礼なのではないか‥‥‥‥ 何も言わずに挨拶だけ交わした事を、その後も気にしていたのです。

実は‥‥ 学校では、教員同士が親しく世間話をしたり授業についての会話をしているわけではなく、多くの場合、同じ教員室にいてもお互いに無言のままなのです。

本当に、「挨拶」だけしかしません‥‥‥‥。 もっとも、小学校や中学校の担任教員同士なら毎日長い時間、顔を合わせているので、会話があるのかも知れませんが‥‥‥‥ 大学講師は、週に一度かニ度顔を合わせるだけ‥‥‥‥

大学の非常勤講師同士では、担任教員や専任講師と違って、日常的な会話がまったくないのです。( 控え室ですれ違うだけ )

「 お早うございます 」

「 あ‥‥ お早うございます 」

「 ‥‥‥‥‥‥ 」

「 ‥‥‥‥‥‥ 」

‥‥‥‥‥‥だけです。

時間が来れば控え室から教室へ向かい、授業が終われば控え室へ戻って荷物をまとめてさっさと帰る。

ですから、この女性講師と3年間同じ学校で授業をしているのに、ほとんど「 会話 」らしい「 会話 」をしていませんでした。

実は、先月の講師会の時に、席が隣り合わせにでもなったら‥‥‥‥ その時には、一言‥‥‥‥

「 ショートヘアにして若返りましたね 」

‥‥‥‥ぐらいの事を言っておかなくてはエチケットに反するだろうなどと考えていたのです。

( ちなみに、彼女が髪を切ったのは1年近く前の事ですので‥‥‥‥今頃そんな事を言われたら きっと戸惑ったかと思いますが‥‥ )

新宿西口を北へ向かって10分ほど歩いた所にある沖縄料理店で講師会があったのですが‥‥‥‥

お店は開店時間前だったためか、看板のライトもなく、私は完全にそのお店を発見できずに迷ってしまい、到着した時には参加講師のほとんどの方が揃っていて、私が座る席も主任教授の正面に準備されていました‥‥‥‥

当然、あの女性講師の横を通り過ぎて‥‥‥‥ 一番端の席、主任教授の正面へ‥‥‥‥

というわけで‥‥ 私はいまだに彼女へ‥‥‥‥

「 ショートヘアにして若返りましたね 」

‥‥と、言えずじまいで、もはや、この一言を告げる事は叶わぬものと諦めているのです‥‥‥‥。( このブログを読んでいてくれると話は違うのですが )
 

さて‥‥‥‥

私が大学で漫画背景を教えているというのも、不思議な時代ですが‥‥‥‥ 漫画の授業を担当する講師が集まって、沖縄料理の「ソーキそば」なんかを食べながら講義や課題について議論する光景は‥‥‥ 時々‥‥‥‥ ふと‥‥‥‥

『 これ‥‥ 現実なのかな‥‥‥‥ 』

‥‥‥‥何かの間違いなのではないか‥‥‥‥‥‥ などと考えてしまったりするのは、私の感性が古いからなのかどうか‥‥ よく分かりませんが‥‥‥‥‥‥

私が話した「デジタル化」による漫画制作の変化について、主任教授が言った‥‥‥‥

「 ‥‥それでも‥‥‥‥ デジタル化は、進んでいくでしょう 」

という言葉は、今でも印象深く私の耳に残っています‥‥‥‥

10年前( 2000年前後 )には、漫画家志望者の増加や同人誌ブームなどで漫画道具の通販や販売店が賑わっていたのに‥‥‥‥

今では、それらの販売店がどんどん閉店し、さらにはスクリーントーンをはじめとした漫画制作の道具類を製造している会社さえ危なくなる時代‥‥‥‥( 多くのスクリーントーンが廃版になっている )

道具がなくなるとしたら、秋山プロのような完全な手作業( アナログ )な制作者はどうなるのやら‥‥‥‥ 先が思いやられます。

去年あたりからは、私も必然的にこの「 デジタル化 」を意識せざる得なくなり‥‥‥‥ ペン先で漫画を描かなくなるかもしれない学生たちを意識して、スクリーントーンの処理や、単純な背景効果( ベタや斜線による効果 )を学生に教える時‥‥‥‥

「 パソコンでも、出来るのですが‥‥‥‥ 実際に自分の腕で描く事を修練すると、パソコンによる作画効果をより向上させます‥‥‥‥ 」( たぶんね )

‥‥‥‥などと苦しい弁明じみた言葉を付け加えなくてはならなくなっています。
 
 
結論として‥‥‥‥

私は、作画( つけペンやスクリーントーンの使用 )を修練した後に、パソコンを使用して「おっ、パソコンなら簡単に出来るじゃんか!」と、デジタル作画を楽しんでもらえればと思っています‥‥‥‥

将来、ワンクリックで漫画が描けるようにでもなったら‥‥‥‥‥‥ ひょっとして‥‥‥‥‥‥ それはそれで‥‥‥‥‥‥ 楽しい事かも知れない‥‥‥‥‥‥

『 ワンクリックで漫画背景完成! 』
 
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一億、総漫画家アシスタント!
 
 
 

 


漫画制作のためのスクリーントーンとそのサンプルパンフレットです。使用法は、シールになっている各種の柄を、漫画原稿の背景にペタペタと切り貼りして使用します。ものすごい数の種類がありましたが‥‥‥‥最近は、徐々に売れない種類から廃版になっています‥‥‥‥2013年3月

 
               その24

《 漫画家アシスタントが・・・デジタル化に対応できるのか? 》
 

漫画を読んでいる人にとっては、それがデジタルで描かれているのかアナログで描かれているのかは、ど~でもよい事なんだと思います。

また、その違いも分かりにくいかと思います。 

10年、20年、漫画に関わった仕事をしている人でも印刷された漫画からその違いを判断するのは困難です。

一見、なにも変わらない漫画雑誌や漫画同人誌ですが‥‥‥‥ その裏側、つまり漫画制作の現場では‥‥‥‥ デジタル化によって、大変な変化が起きています。

まず、デジタル化によって、デスク上にある制作用具がすっかり変わってしまった事。

それによって、多くの漫画制作用具を販売していた画材店やメーカーが影響を受けている事。( 一部には廃業や商品の撤退が見られる )

アナログで仕事をしたくても、道具自体が無くなってしまってはど~にもなりません。( あるいは入手困難 )

そのため、私が勤める秋山プロ( ※参照 )では、以下のような会話がアシスタント同士( お互いに今年で58歳 )で交わされます‥‥‥‥

私は仕事場のスクリーントーンの在庫を確認しながら、向かい側に座る先輩アシスタント( 私より1年先輩 )に‥‥

「 トーンが廃版になるだけじゃなくて、画材店まで潰れてますぜ‥‥! 」

「 えっ? ‥‥‥‥トーンは大丈夫けぇ? 」

「 今、すぐ無くなるわけじゃないので‥‥ 2,3年は大丈夫だと思いますが‥‥ 」

「 トーンや漫画道具が買えなくなったら‥‥ ワシらど~したらエ~んじゃ? 」

「 PC導入するしかないんじゃないですか? 」

「 ワシ‥‥ 出来んぞ‥‥ パソコンなんて‥‥! 」

「 少し‥‥ 慣れれば‥‥ きっと出来るよ~になりますよ 」

「 大丈夫かのぉ‥‥? 」

「 大丈夫ですよ‥‥ 」( ホントは、大丈夫じゃないと思う )

皆さんは、漫画家の仕事場風景を想像する時に、デスクの上の原稿や、ペン立てにどっさりと入れられたペン軸、筆、鉛筆‥‥‥‥ そして、消しゴムやホワイト、墨汁や定規‥‥‥‥ などを想像されるかと思います。( 現代では、もうそんな想像をされる方はいないかも )

しかし、最近( 2013年頃 )の仕事場風景は‥‥‥‥

パソコンと大きなモニター( 中には一人で二つ使う人もいる )、タブレット、スキャナー、コピー機、トレース台‥‥
 
漫画原稿もインクも筆も、何処か隅の方へ押しやられて‥‥‥‥
 
もっとも、まだ、秋山プロの様に、アナログな仕事場も沢山あるかとは思いますが‥‥‥‥( しつこいですが、2013年頃の話 )

この5年ほどで、周りの仕事場環境がすっかり変わってしまいました‥‥‥‥

それから、道具も随分と変わりました‥‥‥‥

2年ほど前だったか‥‥

大学( ※参照 )で「 ベタフラッシュ 」( ※参照 )などの指導でベタ筆について実習している時でした。1年生( 18歳 )の一人が‥‥‥‥

「 先生、筆を使わなくてもイイですかぁ? 」

「 え? サインペンとか‥‥ 筆ペン使うってこと? 」

「 いえ‥‥ コピックとか‥‥ 」

「 こ、こぴ‥‥? 」

コピックというのはカラーの筆ペンみたいなもので、キャラクターをカラーで仕上げる時に使うと便利なものです。( 最近知りました、高価です )

筆でベタを塗る時代が終わってしまったようです‥‥‥‥( 今、ふと思ったんですが‥‥ペン先、ペン軸、筆職人はどうなるんでしょう? )

それにしても、時代の変化が早い‥‥ 早過ぎる‥‥ そんな風に思ってしまう私が古いのか‥‥‥‥
 
それとも、若い人の中にも「 早過ぎる 」と感じている人がいるのか‥‥ よくわかりませんが‥‥‥‥。
 
 
最近、よく使用されている漫画制作ソフトで「 コミックスタジオ 」( ※参照 )というものがあります。

私も持っている( 使用しないで持っているだけ )のですが‥‥‥‥ 多くの漫画制作者が使用しているようです。

私のものは「 コミックスタジオ・EX4.0 」これ以外にも「 Pro 」とか「 Debut 」とかあるのですが‥‥‥‥ 私は、この「 4.0 」というのがどうも気になるのです( 不愉快なのです )‥‥‥‥

これは、つまり、「 1.0 」とか「 2.0 」とかがあったわけで‥‥‥‥ 1年もするとバージョンアップで使い方が変わってしまうという事なのか‥‥‥‥

「 1.0 」を覚えた人は、「 4.0 」を使用している現場では、さぞかし戸惑う事になるのではないか‥‥‥‥ という問題です。

「 4.0 」で学習した人は、「 5.0 」に対応出来るのだろうか‥‥‥‥

「 最新版 」である事や「 より便利 」である事は、いずれ近いうちに「 古く 」なり「 より不便 」になるという事ではないのか‥‥‥‥
 
 
次回は、大学で授業をする前に、不便じゃなくて‥‥‥‥小便(!)ダダ洩れでピンチに至る‥‥‥‥ というお話をしたいと思います。
 
まさか‥‥‥‥ 

大学の学生で‥‥‥‥ このブログを読んでる学生はいないと思うので‥‥‥‥ でも、いたらちょっとヤバイかも‥‥‥‥‥‥(汗)

 

 

 
      「 漫画家アシスタント物語 諦めま章〈13〉」へつづく・・・・

                  「諦めま章〈11〉」へもどる‥‥

                        「もくじ」 へ‥‥

 

 

 

~~~ 参照 ・ 諦めま章〈12〉 ~~~( 読んでも、読まなくても!)

 【その24】
・秋山プロ : 漫画家J先生の仕事場。東京目白にあり、スタッフは現在2人。連載は1誌。ちょっと淋しい今日この頃です。(バブル期には連載6誌、スタッフ6人)
・学校 : 東京某所、繁華街にある美術系の大学。2009年から私が3年生に非常勤講師として漫画背景を教えています。2011年からは、1年生にも「漫画背景美術基礎」を教える様になりました。2016年まで勤務。
・ベタフラッシュ : 背景がベタになっていて、衝撃感を表現するために、白い光が破裂する様に描かれている漫画の背景効果。
・コミックスタジオ : パソコンとタブレットを使用して漫画を描く事が出来るソフト。一般に背景処理や仕上げなどで活用する。かなり修練が必要になる点がやっかいだが、使える様になると手放せないほど便利な代物

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