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漫画家アシスタント物語  第9章 〈10〉 これで、「第9章」は終わり!

 
《 写真上: 前回紹介した東京某所の飲食街。中央のお店が、私のよく行ったラーメン店。ここの餃子が大変美味しいのでいつも二皿注文していました。現在タイへ移住して8年、また食べに行きたいと夢見て‥‥ 》
      < この9章〈10〉は、ちょっと長めで、文庫本約14ページ分 >
 
 

「第9章」は、独立した「章」ですので、「第8章」の続きではありません。ほとんど短いショートストーリーですので、「第9章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!

ただし‥‥ この「第9章」は、それぞれの話が少しだけ連続していますので‥‥ 「第9章〈1〉」よりお読みいただくのがよろしいかと思います!

 
さて‥‥ 本文の前に‥‥ ここで‥‥‥‥
 

「漫画家アシスタント物語」のマガジンを、複数購読してくれた方を紹介させてください。 vasenoir 村田旭先生 ‥‥‥ ありがとうございました!
村田先生の素敵な創作風景を動画で見る事ができます!



               その19  
  
 
    《 漫画家アシスタントが・・・空虚感を爽快に!? 》
 
 
授業( ※参照 )が始まってから30分‥‥

教壇に立ち尽くして‥‥ 私は考える‥‥

『 何をすれば良いのだろうか‥‥? 』

この日のために作った課題( ※参照 )も講義ノート( ※参照 )も意味をなさない‥‥‥‥ 本来必要だった「 授業内容 」( ※参照 )は手元にない‥‥‥‥

実は、この講義の前日‥‥

『 もし時間に余裕があれば‥‥ 』

‥‥そう思って作っておいた「 イラストアンケート 」があったのです。

それは、学生自身が自分に向かって語る言葉‥‥

『 自分が作ったキャラクターが今の自分に向かって語りかけるとしたら、どんな事を語りかけるだろうか‥‥ 』

‥‥というテーマの一コマ漫画を描いてもらうというものでした。( あくまでおまけのつもりで作っておいたものです )

残りの授業時間‥‥ 60分‥‥ このイラストアンケートに当てよう‥‥ もはや、それしか打開策はない‥‥‥‥と。

予備に作っておいた一枚の「 アンケート 」がこんな形で役に立つとは思いもしませんでした。 これを学生たちに描いてもらっている間に「講義内容」をコピーして配布できる!

授業は、最後までそのアンケート制作とそれに対して各学生との面談という形で進行し、かろうじて終了のチャイムに救われたわけです。

この時の私の頭は、完全に空白( オーバーヒートで発煙中 )で‥‥‥‥ これほどの疲労感をかつて経験した事がありませんでした。

肉体的な疲れではなく、純粋に脳ミソだけの極度な疲労状態‥‥‥‥

まさに、頭が真っ白‥‥ 思考能力ゼロの抜け殻‥‥‥‥ そんな感じでした。

生まれて初めての講義を終えて教室から出てエレベーターで教務課へ戻る時には‥‥‥‥ 足を一歩踏み出すのがまるで鎖につながれた囚人の様な‥‥

‥‥ズル‥‥ズル‥‥

『 疲れた‥‥ 心底、疲れた‥‥ 』

‥‥ズル‥‥ズル‥‥

『 もはや何も無い‥‥ 今の俺には何も無い‥‥ 空っぽだ‥‥! 』

たいして重くもないカバンがやたらと重い‥‥ 肩にかかるショルダーベルトがやけに痛む‥‥‥‥

運動したわけでもないのに、息を荒げながら教務課へ入ると‥‥

開いたドアの正面には教務課の最高責任者である理事長(?)だか誰だか‥‥ 実は、いまだによく分からないのですが‥‥ とにかく偉い人が‥‥

私をニコニコと笑顔で迎えてくれるのです‥‥

初めての授業がどうだったのかと、気にしておられたのか‥‥ どうなのか‥‥ やけに嬉しそうに‥‥

「 どうでしたぁ? 」

この人物は、私よりも何歳か年上と思われる穏やかな方で‥‥ 映画の脇役でよく見かけるタイプ‥‥ 大きな会社の中間管理職なんかがピッタリの人物。

私は、あまりの疲労感で返事も出来ない‥‥ 正直言って、声出す元気も残っていない‥‥ ガックリした様子で察して欲しかったのですが‥‥‥‥

「 若い学生たちからパワーを貰ったんじゃないですかぁ~? 」

私は、頭の芯から白旗が上がっている‥‥ 心の中で‥‥‥‥

『 パワーを貰うどころか、パワーを出し尽くして死にそうですよ! 』

‥‥全てを出し切ってしまって、もう何もしぼり出せない状態‥‥

そんな私には、苦笑いするしかなく‥‥‥‥

ただ‥‥

今から考えると‥‥ 不思議な事なのですが‥‥‥‥

あれほど苦しい授業に、心底疲れ果てたにもかかわらず‥‥ 不快感がまるでなかったのです。

疲労感が心地よく‥‥ 何も無くなってしまたった空虚感が爽快ですらあったのです。

講師控え室で一人になった時に、自然と笑顔になる‥‥‥‥ グッタリと倒れ込みたい‥‥‥‥ 肩で大きく息をしている‥‥‥‥ それなのに笑顔になっている‥‥‥‥

授業に失敗した自分への笑いなのか‥‥ 緊張から解き放たれた解放感なのか‥‥

今になって考えれば‥‥‥‥

初めての授業に成功したとは言えないまでも、全精力を傾けた授業に‥‥ 何とも表現の仕様のない充実感を感じていたのだと思います‥‥‥‥

これは‥‥‥‥ 3~4ヶ月かけて漫画を一本完成させた‥‥ 27年前に体験したあの気分と、とてもよく似ている‥‥‥‥!

‥‥‥‥と‥‥ これは、あくまで後になって考えた事ですが、実際、この時には‥‥‥‥

ただ、授業が中途半端に終わってしまった事への罪悪感と敗北感でいっぱいでした‥‥‥‥‥‥

数日間、この敗北感で落ち込んでいました‥‥‥‥

私は、以前講師依頼の件で相談した事のある八王子の大学のT先生( ※参照 )を訪ねました‥‥

その時に、この日の事を話したのです‥‥‥‥

落ち込む私に向かって、T先生は‥‥‥‥

 
 
 
 


私が講師として通った大学近くのコンビニ。毎朝、ここでおむすびを一つ買って行きます。何も食べずに講義をすると、途中でお腹がゴロゴロと鳴りだしてしまうので、必ず買って行きます。


               その20  
 
  
   《 漫画家アシスタントが・・・印税を吸い取られる!? 》
 
 
「 良かったねぇ~~っ! 」

T先生は、初めての講義に失敗して落ち込む私に笑顔でキッパリと言ったのです。

私は一瞬、絶句するのですが‥‥ T先生は気にする風もなく‥‥‥‥

「 それは、良い経験をしたよっ! 」

何かとても美味しいものでも食べた時みたいに‥‥‥‥ じっくりと味わうようにそう言ったのでした。

「 先生、ここんとこ、ずっと‥‥落ち込んでましたよぉ~ 」
私は、グッタリと疲れたようにT先生に愚痴をこぼします。 するとT先生は微笑みながら‥‥

「 いや、いい経験したんだよ!」
「 えええええええ~~っ 」
「 お前は、最初っから、ツイてる( ラッキーだ )よなぁ~!」

T先生は今年で大学を定年退職( 名誉教授に )し、私は今年で57歳( 2012年 )になるのですが‥‥‥‥

T先生と会って話している間に、いつの間にか25歳( 立教大学院生 )の高校の国語講師と16歳の高校生( 1971年当時 )に戻ってしまっているのが不思議です。

漫画原稿が没になった後で、どうすれば良いのか分からなくなる‥‥‥‥ そんな経験をした時には、迷路にでも入り込んだような‥‥‥‥ そんな暗中模索が当たり前だったのですが‥‥‥‥

今回の事は、失敗というものが改めて貴重なものなのだと知らされました‥‥‥‥ それは、授業への心構えがすっかり変わったからです。

その後、しっかりと教材を揃え、資料の準備や確認に時間を割き、講義ノートの整理や調整を授業の直前まで行なう様になりました‥‥‥‥( 授業開始の1時間前には登校 )

失敗経験が人を創るとは、よく言ったものです‥‥‥‥ その後、数年間、未熟ながらも私が講師を続けていられるのは、この時の経験があったからかも知れません。
 

ちなみに‥‥

私は‥‥‥‥ 今でも、授業の前はビクビクとトイレに入り、授業の後はガックリと疲労感に包まれる‥‥‥‥ というのは今でも同じです‥‥‥‥

20歳前後の学生たちからすれば、50過ぎのオヤジなんぞ偉そ~ぶって、暑苦しいだけの存在かも知れませんが‥‥‥‥

その実態は、内心オドオド、緊張でビクビク‥‥‥‥ 迷子の、迷子の子泣きジジイ‥‥ といったところなのです。( 結果として、この切迫した態度が、授業好感度を上げる事になります )

下の写真は、大学の発行するニュース紙に掲載された私の記事の切り抜きです。 怖かった講師1年目、緊張の2年目、そして‥‥少し慣れた3年目。 もう、おびえた表情がなくなった2012年の前期です。

上の画像は、大学の許可をもらってないので‥‥ いつ注意を受けて削除する事になるかわかりません。( どうか、ご容赦ください )

 
 

さて、話はここで急に変わるのですが‥‥‥‥ 実際、学校の話は書きにくいので、話題を変えたいと思います。

こうして、大学講師の仕事がスタートした頃‥‥‥‥ 一つのオファーがありました。

それは、私が以前描いた「 覇王の船 」( ※参照 )という小林多喜二の「 蟹工船 」を原作にした漫画作品を携帯用漫画として公開したいというものでした。( 会社の名前は忘れてしまいました )

ネットを通じてデジタル書籍を販売したりする事がトレンドになり始めた頃の事です‥‥‥‥

私の「 覇王の船 」‥‥‥‥ 何ンだか、地味な作品が選ばれて‥‥‥‥ 申し訳ない様な気もするのですが‥‥‥‥

ありがたい事に本気で「 携帯漫画 」として編集、公開してくれると言うので、喜んで承諾しました。

印税(?)としては、最初に2万円いただくだけなのですが‥‥( 公開後に販売の定量を超えると追加金がもらえますが、そんなに売れない )

‥‥それでも、私の作品を選んでくれた事がホントに嬉しかったのです。

携帯漫画は、一コマ、一コマ、編集されているので小さな携帯画面でも意外と楽しく見やすいものになっています。

私は、「 覇王の船 」が公開された時にすぐダウンロードしました。( 自分の作品をダウンロードするのは恥ずかしいのですが )

料金は100円ほどでした‥‥‥‥

『 110ページの漫画が100円か‥‥ まあまあの値段かな‥‥‥』

‥‥と、そんな事を思いながら、慣れぬダウンロードを2、3回繰り返したわけです。

ところが、その後送られて来たソフトバンクからの料金明細を見て愕然‥‥!

なんといつもより2万円も料金が多いのです!

そこで、早速ソフトバンクへ問い合わせると‥‥‥‥

「 パケット通信は料金が高めですので‥‥‥‥ 」
「 ‥‥はあ? パ‥‥ パケットつ~し~ん? 」

漫画のダウンロード料金100円とは別に通信費がかかるなどとはまったく知らなかった!( 説明されていたのかも知れないが )‥‥‥‥とは、うかつでした。

パケット通信は普通セット価格で定額を支払えば無料で使いたい放題なのですが、私はセット契約していないので、最高額を支払うハメになったわけです。

こうして、「 覇王の船 」の印税2万円は、あっという間に‥‥‥‥ 一瞬で‥‥‥‥ ホントに、一瞬で‥‥‥‥ ソフトバンクに吸い取られてしまいました。( く、悔しい! )

今でも、ソフトバンクやAUなどの携帯電話会社のコマーシャルを目にすると、ムカムカと腹の虫が鳴き出すのを抑え切れないのです‥‥‥‥。


では、この辺りで‥‥

この「 第9章 」も、締めくくりたいと‥‥‥‥

 
 
 
 


久しぶりに目白の秋山プロ前から撮影した夕日です。椎名町方向の写真です。2012年3月、撮影 

 
               その21  
  

  《 漫画家アシスタントが・・・ブログを止めるのか・・・!? 》
 

もう書く事がありません‥‥‥‥‥‥‥‥。

‥‥‥‥‥‥そろそろ、ここら辺でブログを終わらせるのもどうだろう‥‥‥‥ などと考えたりもして‥‥‥‥

実は、書きたい事はあっても、それを継続的に書き続けるほどのネタが無いのです。

拙ブログで書きたかった「 漫画家への夢 」をはじめ、仲間だったアシスタントたちの話、さらに、漫画制作とは直接関係ない話まで‥‥‥‥ もう、十分に書いてしまったわけです。

でも‥‥‥‥‥‥

ここでブログを止めてしまうのもどうなのか‥‥‥‥

継続的( 長編として )に書けるものではなくても、小さな出来事を毎回「 徒然なるままに‥‥ 」紹介する程度の事は出来るかも知れず‥‥‥‥

そこで‥‥‥‥

今回の「 その21 」をこの章の最後にして、次章からは‥‥

「 漫画家アシスタント 諦めま章 」という新章でスタートし、内容は、その日その時の気持ちや、古い思い出話など‥‥ 成り行きで少しづつ書いていこうと‥‥‥‥( 本来の意味でブログらしい )

話題は、過去の話と現在の話がゴチャ混ぜになったものになるかと思いますが‥‥‥‥

まあ‥‥ ど~にでもなれ‥‥ と‥‥‥‥ 口止めされたり、「 書くんじゃね~ぞ! 」と脅されたりした事でも書いてやれ‥‥ と‥‥‥‥!

実は、このブログを読んでおられる皆様のほとんどは、私が調子良く秋山プロで仕事をしながらブログを書き、その事を師匠であるジョージ先生も認めてくれている‥‥ と、そう思われているかと思います。

しかし、実際には、まったくそうではありません。

ジョージ先生がこのブログへ向ける視線は、そりゃ冷たいものです!

「 まだブログなんかやってるのか! 」

「 おめぃ~の本( 拙ブログ本 ※参照 )なんか途中で読むのを止めたよ! 」

などと言われる位に嫌われているのです。

最初にこのブログが本になった当時、私と師匠の関係は良かったのですが‥‥‥‥ 今ではすっかり冷え切っております。

新章を始めるにあたって原点に戻る意味でも、嫌われた話、書くなと言われた話を書いてやろうと‥‥‥‥ そんな風にも思っているわけです‥‥‥‥。

そこで、早速‥‥‥‥

次章「 漫画家アシスタント 諦めま章 」の「 その1 」では、ある先輩アシスタントの死( 遺族から「 ブログに書くな 」と言われた )と、その死に私が冷淡な理由(わけ)などを書いてみたいと思います。

もっとも、漫画家アシスタントも最近は高齢化し、日本全国いたるところでボケたり死んだりしているかと思いますが‥‥‥‥

漫画家の死ならニュースになるが、アシスタントの死では話題にもならない‥‥‥‥ そんな話を書いてみたいと思っているのです‥‥‥‥

3年間、書かずに我慢してきた話です‥‥‥‥
 

では‥‥‥‥

新章で‥‥ また、お会いしたいと思います‥‥‥‥‥‥

 

         《 第9章、2012年3月~'12年6月:gooブログにて公開 》

 
 
       「 漫画家アシスタント物語 諦めま章 」へつづく・・・・

                   「第9章〈9〉」へもどる‥‥

                   「もくじ」 へ‥‥
 
 

 
 
 
 ~~~ 参照 ・第9章(後) ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)

 【その19】
・授業 : 東京の繁華街にある美術系大学での最初の授業。私が「背景美術」の講義を担当。水曜日の朝1時限。(後に、水曜日と金曜日、各1時限)
・課題 : 学生にその日、描いてもらう練習用の背景画。
・講義ノート : 授業内容をまとめたもの。あいさつから課題配布や講義内容など、箇条書きにしたもの。これを確認しながら授業をすすめる。
・授業内容 : その学期の授業全体をまとめた資料。各回の授業がどのようなもので、どのような道具を必要とするか、また主要なテーマや簡単な講義内容なども記されている。
・T先生 : 私の高校時代の恩師。現、八王子T大学日本文学名誉教授。
 【その20】
・「覇王の船」 : 91年、ヤングジャンプの別冊に掲載。小林多喜二「蟹工船」を原作にした100ページの文芸漫画作品。08年には「蟹工船ブーム」にのって単行化(10ページ追加して110ページになる)される。
 【その21】
・拙ブログ本 : ブログ「漫画家アシスタント物語」。2008年4月にマガジン・マガジン社より出版される。

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