届いていた|第3部 どこでもドア
Chapter 11 - どこでもドア: 選んだ理由
高知から帰ったのは夕方だった。
荷ほどきをして、シャワーを浴びて、ソファに腰を下ろしたとき、ふいにまたあの感覚がよみがえった。上板サービスエリアでのことだった。
行きも帰りも立ち寄った高速のサービスエリアで、行きは夕食をとるため、帰りはコーヒーを買うために立ち寄った。行きの夕食時には徳島ラーメンを2つとチャーハンを1つ頼み、チャーハンは妻と2人で分けて食べた。食べながら、タイムリープをテーマにしたアニメ映画のことを妻に話した。笑いながら言った気がする。なんとなく口をついた話題だったが、妻はへえと言って短く相槌を打った。
ふと向かいに座る妻の後方に、テーブル2つ分ほど隔てた席に座る人の姿が視界に入った。父と同じぐらいの年齢だろうか。一人でテーブルに座り、食事を食べ終え空いた食器を前に、周囲をぼんやりと眺めている。右手はテーブルの縁のあたりに置かれ、親指でゆっくり叩く癖が見える。
見知らぬ人のはずだったが、どこかで知っているような気がした。顔ではなく、たたずまい、とでも言うのか。自分の中の何かが、その人を知っていた。
ブンキは交錯していた。
夜、布団の中でまぶたを閉じると、決まって同じことを考えた。
なぜ自分はこの仕事を選んだのか。
介護の仕事をはじめて10年ほどが過ぎた。認知症を患いながら施設で生きる人たちを、社会での生きづらさを抱えた職員たちが支えるこの世界に、偶然たどり着いた。職業訓練の案内を手に取ったとき、正直な気持ちはひとつだけだった。
こんなボロボロの自分にできる仕事は、この仕事しかない。
口に出したことは一度もない。でも、その感覚は消えなかった。
あの高知への旅の途中、サービスエリアで視界に入ってからずっと記憶から離れない、父と同じぐらいの年齢のあの人のことが瞼の裏に浮かんだ。無意識に右手の親指でテーブルの縁をゆっくり叩く癖が、自分にもあった。
眠りに落ちる寸前、意識がほどけていく感覚の中で、ふいに目の前にドアが現れた。
静かにキリカエが始まっていた。
白い。背景も床も、すべてが白く曖昧な空間の中に、そのドアだけが輪郭を持って立っていた。丸い取っ手。ピンク色に塗られたドア。どこかで見たことがあるような、でも現実にはあるはずのないドア。
夢だとわかっていたが、足が勝手にドアに近づいた。念じたら開くはず、なぜかそんな気がして、取っ手に手を伸ばした。
あの頃の自分はどうだっただろう。
握った取っ手をゆっくりと回し、回らなくなったところでそっとドアを押し開けた。
Chapter 12 - どこでもドア: 気がついた時がスタートや
キリカエは終わっていた。
白い空間はかき消え、まばゆい光の中には別の景色が広がっていた。視界に違和感を感じて自分の体を確認しようとしたが、そこにあるはずのものはなかった。宙に浮いているのでも、飛んでいるのでもない。ただ、そこに「在る」だけだった。空間から見ているのだと、すぐに理解した。
そこにはかつての自分がいた。おそらく20代の頃だろう。
細い体。まだ白いものが混じっていない黒髪。あのころの自分が着ていた、くたびれた紺色のジャケット。間違いなく自分ではあったが、今ここにいる自分ではなかった。
ハンドルを握る父の横で、背筋を伸ばして緊張した面持ちで助手席に座る自分がいた。
黙って運転する父の横で、何かを言おうとして、うまく言えないでいた。
「やりたいことがあるから」と父に打ち明け、会長への話を済ませた帰り道だった。
いつも通りただ会長と話をしてきただけだという雰囲気で、ただ黙って運転していた父が、口を開いた。
「やりたいことがあるんやったら、気がついた時がスタートや」
怒っているのでも、諭しているのでもなかった。ただそう言った。薄っぺらい嘘で塗り固めた息子の背中を、それでも父は精一杯押してくれた。
その温度ごと、ホゾンされた。
呼びかけたかった。でも、声は出なかった。ここは見るだけの場所だと、体が知っていた。
助手席に座る自分は、小さく「うん」とだけ言っていた。
やがて景色が遠くなった。霧がかかるように、ドアの向こうの世界が薄れていく。
扉を閉めるとき、父のあの顔が残っていた。怒りでも悲しみでもない、何かを待っているような顔。
気がついた時が、スタートや。
当時はその言葉の意味を十分に理解しているとは言えなかった。あのとき流してしまったように、今もまだ、どこかすり抜けていく感じがした。
Chapter 13 - どこでもドア: 電話ボックス
母が逝ったのは去年の秋だった。
それからの父を見るのはつらかった。
仕事一筋で、家のことはほぼ全て母に頼っていた父が、急に一人になった。自分で料理ができない。掃除の仕方も知らない。でも人を頼ることが得意でなく、ただ部屋の中で小さくなっていった。
先日顔を見に行ったとき、何かがいつもと違った。言葉の返しがどこか遅く、こちらの話を受け取るまでに、わずかに間があった。父は笑っていたが、その笑顔の奥で、時間の歯車が少しずつ噛み合わなくなっていくのがわかった。
眠れないまま布団の中で横になっていると、意識がゆっくりとほどけていった。
重さを持って眠りに落ちるとき、ホリュウされていた感情へのヒキダシが始まった。
白い空間の中にそのドアは立っていた。いつもと同じピンク色のドアだが、——取っ手に手が届く前から、何かが違う感じがした。ひんやりとした重さが、扉の向こうから漏れてくるようだった。
何かを念じる間もなく、ドアはゆっくりと開いた。
キリカエは完了していた。気がつくと畳の上に座っていた。体が重く、どこか芯から疲れ切っていた。ふと手に目をやると、見知ったはずの手に深い皺が刻まれていた。
線香の匂いがした。顔を上げると、その先には白木の棺があった。棺の中に父がいるのだと、わかっていた。
膝の上で握りしめていた自分の手を動かそうとすると、動いた。
通夜が終わり外へ出ると、あたりはすっかり暗くなり、空気も冷え込んできていた。歩道に沿って街灯が続いている。気がついたらどこかへ向かって歩いていた。歩くのを止めることはできなかった。
いくつかの街灯を越えた先に電話ボックスが見えた。
囲う透明なパネルが少しくすんだ、古い電話ボックスだった。しばらく見つめたあと、ゆっくりとドアを開けて中に入り、受話器を手に取った。
受話器を耳にあてたがどこにも繋がっていなかった。当たり前だった。
それでも受話器を握ったまま口を動かしたが、声は出なかった。
もう一度、唾を飲み込んでから、喉の奥から声を捻り出そうとしてみた。
「父さん……ごめん。ありがとう。父さん、ありがとう」
声が続いた。止まらなかった。もしも、もしも父さんに声を届けることができるなら……叶うはずのない願いを、しかし願いながら、父に言えなかった言葉を繰り返し吐き出し続けた。その言葉は、年月の重みをまとって電話ボックスの壁に染み込んでいった。
気がついた時が、スタートや。
やがて景色が薄れ始めた。受話器の感触が遠くなった。電話ボックスの明かりが滲んで、消えた。
* * *
目が覚めた。
天井が白かった。朝の光が薄く差し込んでいた。
枕元のスマートフォンを手に取り、父の連絡先を開いた。
あれは夢だった。父はまだいる。
まだ、ホゾンされていない。
親指で発信ボタンを押した。
呼び出し音が一回、二回、三回と鳴る。胸の奥で、何かが急かすように脈を打っていた。
Chapter 14 - どこでもドア: 父との時間
「父さん、次の夜勤明けの日に帰るよ」
呼び出し音の向こうで、父は少し間を置いてから「夜勤のあとで大丈夫か。そうか、それなら寿司でも食べに行くか」と言った。息子の体調を気にする声音に、どこか弾みが混ざっていた。
当日、駅で合流すると、父は高架下の寿司屋へ案内した。
「ときどき母さんと来たんや。そこまで高くないけど、うまい」
歩きながら見た父の背中は、半歩先で、昔と同じように道を選んでいた。けれど肩の線は以前より細く、少し小さく見えた。
店に着くと父はビールを頼み、メニューを開いたまま、ネタをいくつか2人前ずつ注文した。運ばれてきた寿司をつまみながら、旅行のこと、仕事のこと、最近のことを話した。父は相づちを打ち、空いたグラスに黙ってビールを注いでくれた。
「日本酒、飲むか」
冷やを1合ずつ頼み、父はおちょこを口元に運んだ。
「母さん、ここのところずっと具合よくなかったやろ。いつもの病院行ったら、大学病院紹介されてな」
術後の経過は長く安定していたのに、検査で全身への転移がわかってからは早かった。父はそこで言葉を切り、空になった徳利を見て、もう1合頼んだ。「前に母さんと来たとき、これがうまかった」と言って、銘柄を指定した。
店を出て、駅までの細い路地を並んで歩いた。
「あれから仕事は楽しくやれてるか」
「なんとか」
短く返すと、言葉が続かなかった。向かいから来る人をよけながら、しばらく無言で歩いたあと、思い出したように口を開いた。
「昔、会社に遅れそうになった時さ。通勤ラッシュで改札のところ人がすごく多くて、こじ開けてくれたね」
「そんなこともあったな」
「あの時は、ありがとう」
父は返事をせず、小さく息を吐いた。表情は見えなかったが、足取りは少し軽くなったように見えた。駅に着くと、父は西行き、自分は東行きの改札へ向かった。
あの言葉はホゾンされた。
それから数か月後、父が倒れたと、通い始めたデイサービスから連絡が入った。脳の細い血管が少しずつ詰まっていくことで、記憶が少しずつ削られていくのだと医師は言った。
父はまだ70代だった。けれど母が逝ってからの1年で、老いの速度は目に見えて上がっていた。父の母である祖母がアルツハイマー型認知症だったことを思い出した。嫌な予感は、外れなかった。
介護度が「要支援」から「要介護」に上がり、サービスの内容が変わった。施設への入所を勧めると、父は断った。この家で暮らし続けたいと、珍しく強い口調で言った。その言葉に逆らえず、訪問介護の頻度を上げることで折り合いをつけた。それが正しい判断だったのか、今もわからなかった。
再び父の家を訪ねると、父は居間でテレビを見ていた。画面を追っているようで、追えていなかった。
「父さん」
父は顔を上げてこちらを見ながら笑顔を見せてくれたが、すぐに不安そうな表情に変わった。
「母さんが買い物から帰ってこんのや」
そう言いながら、床に敷いた絨毯の上を膝をついて這うようにソファの方へ移動した。ソファに手をついて立ちあがろうとしながら、虚空を見つめて「ちょっと見てくるわ」と言った。しかし立ち上がることはできず、わずかな動きで息が上がっているのが分かった。
僕の言葉はもう父には届かなくなっていた。
玄関を出る前に、ケアマネジャーに電話した。今日の様子を伝え、サービスの見直しを急いでほしいと頼んだ。
車に戻ったが、すぐには動けなかった。エンジンをかけずにフロントガラス越しに道路をただ眺めるだけの時間が続いた。ありがとうはあの日伝えられたが、まだ全てを伝えきれていない。間に合わなかった。
気がついた時が、スタートや。
社会の流れにうまくのれず、流れの弱い掃き溜めに漂い続けていた我が子を父はいつでも信じていた。「ワシの息子ができんわけがない」「同い年の他の奴らより一回り遅れたけど、お前のペースで頑張ればええだけや」そして、「気がついた時が、スタートや」と、父はよく前を向かせてくれた。
介護の仕事をはじめてそれなりの歳月が経過した。何のためにこの仕事を選んだのか、ずっと答えられなかったが、ただ1つの答えに決めたくなかっただけなのかもしれない。
その夜、しばらく現れなかったあのドアが現れ、そして開いた。
キリカエが、行われた。
* * *
廊下に朝の光が差し込んでいた。普段自分が働く施設に似た空間だが、どこか違う。消毒液と、どこかに漂う朝食の香り。
廊下の奥から誰か歩いてくる。
細身だが、背筋が伸びていた。白髪を短く整え、紺色のジャケットを着ていた。
「理事長、今日は春祭りの打ち合わせが——」
職員に呼び止められ、スタッフルーム前のカウンターに手をつきながら軽くやり取りをする。話しながら、右手の親指がテーブルの縁を軽く叩くクセが見えた。やり取りが終わると、再び歩き始めた。
理事長。
その言葉を胸の中で繰り返した。この初老の人物は施設を経営していた。
ホールを通り過ぎ、廊下沿いのある部屋の前で足を止めた。ドアをノックし、静かに入っていく。
窓のそばに置かれたベッドに車椅子がつけられている。そのベッドには男性の利用者が横になっていた。痩せて細く小さくなってはいたが、少し父に似ていた。
車椅子を部屋の隅に移動させ、代わりに置いた丸椅子にすわり横たわる男性を見つめた。会話はなかったが、二人は朝の光の中に佇んでいた。窓から見える桜並木に風が通り抜け、柔らかな日差しの中、花びらが舞っていた。
Chapter 15 - どこでもドア: ドアは向こうから開いていた
部屋は暗くなっていた。カーテンが引かれ、窓の外は見えない。加湿器の音だけが聞こえる。呼吸が、しづらい。
これまで、いくつかのドアを開けてきた。40代の頃よく見たあの夢は、今の自分が内側から開けたものだった。どうしても父に伝えたかった想いを、達成できるのは自分自身だけだと分かっていたから。
1つ目は20代の頃、社会に出てまもない頃の自分だった。吐き出した薄っぺらい言葉を父はそっと引き受けて「気がついた時が、スタートや」と言っていた。あの言葉を、40代の頃の自分にもう一度ちゃんと届けたかった。
2つ目は父の通夜の日だった。棺の前に座っていた老いた自分の体。こうなってからではもう遅い、その後悔を、外からではなく内側から感じてほしかった。電話ボックスで叫ぶのを聞いた。届いていた。
3つ目は仕事のステージが変わった頃だった。窓際のベッドで横たわっている自分を、自分が見守っていた。桜が舞っていた。そこには後悔がなかった。あそこへ向かうことができると示したかった。
ブンキは、ここから始まっていた。
ベッドが動き出し、車輪が廊下を擦る音が聞こえる。胸を大きく動かすが、思った以上に呼吸ができていない。息が、苦しい。
暗いぼんやりとした視界の中に、ドアが浮かび上がっているのが見えた。手元に目を落とすと、自分の周囲がわずかに光り、その光がドアへと続いていることが分かった。
自然と溢れる「父さん」という言葉と共に手を伸ばし、取っ手を掴もうとするが届かない。何度目かで届いたが、取っ手はガタついていて、回すとガチャガチャと空回りするだけだった。壊れていた。
ズレは、解消されていない。
自分の周囲の光が徐々に弱くなることを感じながら、取っ手を強く握りしめて念じた。
まだ間に合うかもしれない。
まだ——。
ドアがギイッと音を立てて開いた。
向こうから、開いていた。
ヒキダシは、父の側から行われていた。
Chapter 16 - どこでもドア: もうひとつのドア
アスファルトの上に、靴の音があった。夕暮れの、細い路地だった。
見覚えがある。よく父が歩きに行っていた近所の散歩コースだ。街灯がひとつ、またひとつと灯りはじめていた。道を歩く男性の背中があった。スーツの肩が、いつもより少し落ちていた。慣れた足取りだったが、一歩一歩が重そうだった。その背中を知っていた。父だった。
* * *
「鳶は鷹を産まん、ということや」
あの一言が、まだ耳の奥に残っていた。長い付き合いだった。仕事の話、家族の話、幾度となく飯を食い、酒を飲んだ。その男がそう言った。声に含まれた温度が、何十年かの関係の終わりを告げていた。
一瞬だけ、言葉に詰まった。でも口は動いた。
「ワシの子供が出来んわけがない。息子なりに何か大事にしたい考えがあったんとちゃいますか」
そう言い切ったときの自分の声が、やけにはっきりしていたのを覚えている。
それから会長は何も言わなかった。父も言わなかった。そうして長い付き合いは、静かに終わった。路地の角で、足が止まった。
ワシは本当に、あいつを信じてやれていたんか。
声に出したわけではない。ただ急に足が重くなって、止まらずにいられなかった。
会長に言い返した。でもそれは息子への信頼から来た言葉だったのか、それとも自分のプライドだったのか。どちらだったのかが、わからなかった。うまく前を向かせようとして余計なことばかり言ってきたのかもしれない。「早よせんか」と急かすばかりで、ただそこにいてやることができなかったのかもしれない。
答えは出なかった。街灯の光の下でしばらく立っていたが、あたりがすっかり暗くなってきたこともあり、足は自然と家の方へ向かっていた。
数年が経ったある春の朝、学生時代からの付き合いの友人と、ゴルフ場の芝の上に立っていた。
打ち終わったボールを目で追いながら、何気なく息子の話をした。介護の仕事をしていること。よくわからないが、続いているらしいこと。
「介護か」と友人は言った。「どこの施設や」
施設の名前も、所在地も、父はよく知らなかった。地名を言うと、友人が少し考える顔をした。
「ひょっとして、うちのグループと関係あるんとちゃうか」
全国にいくつもの介護施設を傘下に持つグループの創業者だというのは、長い付き合いの中で聞いていた。それが息子の職場につながるとは思っていなかった。
確認しなかった。友人も、それ以上は言わなかった。
ただ翌月、またラウンドを一緒に回った帰り道、友人がこんなことを言った。
「うちのグループに、利用者想いのええ職員がおると聞いたで。しっかり面倒見といたるから心配せんときや」
それだけだった。父は「そうか」と言った。それだけ言って、あとは黙って車の窓の外を見ていた。目が、少し熱くなった。
それから時々、友人と回るたびに聞こえてくる話の断片の中に、息子の姿を探した。直接確かめたことは一度もない。息子に話したこともない。ただ、介護の仕事に精を出す息子の姿を自分なりに想像して、ひとりで何度か泣いた。
またいらんことしてもてごめん。
けど、お前が自分で切り拓いた道やで。ありがとう。
声には、出さなかった。
トトノエが、行われた。
* * *
光が、薄くなっていった。
父の背中が、靄の中に溶けるように遠ざかった。あの路地の角で足を止めた背中。プライドではなく信頼だったと思いたかった背中。どちらだったかは、もうわからなかった。でも最後にひとりで泣いていたことは、確かに見た。
いよいよ胸を動かすのもしんどくなってきた。息を吸っても肺に空気が取り込めていない感じがした。
頬に、何かが伝った。
届いていた。いつから届いていたのかは、わからない。どうやって届いたのかも、わからない。でも届いていた。それだけでよかった。
カサネが、ようやく届いた。
ドアは、もう開かない気がした。でも、それでよかった。
胸を動かすのをやめた。
