届いていた|第0部 はじめに
本作は、言葉にならなかった想いを抱えた者たちが、異なる時間軸を越えて静かに交差していく、じんわりと胸に沁みるヒューマンファンタジーです。
あらすじ
妻を亡くした男が、二人でよく旅したホテルにひとりで泊まるたびに、彼女の夢を繰り返す。
父に言えなかった言葉を抱えたまま老いた男が、介護の現場で利用者を看取りながら、胸の奥の言葉に気づかされる。
死期の近づいた男が、時間を越えて過去の自分へと語りかけ続けていた。
それぞれの時間軸が静かに交差するとき、抱えていた想いは
――届いていた。
Part I: day_zero
Chapter 01 day_zero: 記憶へのチェックイン
Chapter 02 day_zero: 八月の夜間飛行
Chapter 03 day_zero: 優しい拒絶
Chapter 04 day_zero: 一日目の始まり
Chapter 05 day_zero: 凪いだ冬の海と、照らす常夜灯
Part II: もしもボックス
Chapter 06 もしもボックス: これで最後の旅
Chapter 07 もしもボックス: 乗らんと、間に合わん
Chapter 08 もしもボックス: 一度も言えなかった理由
Chapter 09 もしもボックス: 黒い財布
Chapter 10 もしもボックス: 今度こそ
Part III: どこでもドア
Chapter 11 どこでもドア: 選んだ理由
Chapter 12 どこでもドア: 気がついた時がスタートや
Chapter 13 どこでもドア: 電話ボックス
Chapter 14 どこでもドア: 父との時間
Chapter 15 どこでもドア: ドアは向こうから開いていた
Chapter 16 どこでもドア: もうひとつのドア
Part IV: 届いていた
Chapter 17 届いていた: ゼロ日目
Chapter 18 届いていた: もしもの答え
Chapter 19 届いていた: 帰る場所
Chapter 20 届いていた: 届いていた
Chapter 21 届いていた: ただいま
Part V: エピローグ
Chapter 22 day_zero: 小さな灯り
用語集
この作品には、登場人物たちが意識しないまま経験している感情の動きを命名した語が、地の文に静かに挿入されています。以下はその用語の一覧です。
ホゾン 感情や決断を、書き換えられることのない記録として刻むこと
ブンキ 「別の選択をしていたら」という、並行する可能性のルート
キリカエ 過去の時点や別のルートに、意識や感情を一時的に合わせること
ホリュウ 抱えきれない重い感情を、一時退避させること
ヒキダシ 退避させていた感情を、現在の心に引き戻すこと
カサネ 過去の感情と現在の感情を、静かに重ね合わせること
ズレ 過去と現在の感情が食い違い、折り合えない状態
トトノエ 2つの感情に、自分の力で折り合いをつけること